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 小唄の意識はだんだんと闇の中で拡散して、混ざり合い、次第に小唄ではないものに変化しようとしていた。……ああ、そうか。眠るってこういうことだったのか、と小唄は思った。意識が消えるのではなく『一個の個体から溶け出して、周囲の液体と混ざり合う』。そうやって、ゆっくりと『個性を消失』していく。自分という自我が消えていく。失われていく。『自分とはつまり濃度のことなのだ』。……そうか、そうか。……なるほどな。まったく心ってやつはよくできてるじゃないか、と小唄は心と呼ばれるものの仕組みについて感心して、また感動した。

 ……さすがは神様だ。人間ではきっとこうはできない。いや、こう作れたとしても、こんな風には作ったりしないだろう。もっと自分たちに都合がいいように、たとえばどこか鋼鉄製の心臓の中にでも心を封じ込めてしまうはずだ。それが神様と人間の違いだろう。うんうん。そうか、そうか……。そうなんだ。

 ……『人は、こうやって死んでいくのか』……。

 ……なるほどな。

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