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 こんなときでもこんなことを考えてしまうのは、いつもの小唄の悪い癖だった。でもそれは、とても自分らしい行為だとも思えた。

 ……眠ったら、もう一度、古代魚に会えるのかな? 

 ……約束を果たせなかったけど、睡蓮さんは怒ったりしないかな?

 ……僕がいなくなったら、……お父さんや、お母さんはどう思うかな?

 小唄の思考は飛んでいた。

 死んだら人は『無』になるのだ。そんなことは知っている。小唄の読んだ本にそう書いてあったからだ。……無、無か。無っていったいなんだろう? なんにもないってことは、つまりどういうことなんだろう? 

 小唄の考えている問いに答えはない。だけどそれを考えること自体に意味があるのだというそんな言葉を小唄は思い出した。確かなにかの本の中にそう書いてあったはずだ。小唄はその言葉を屁理屈だと思っていた。でも実際に自分がこういう場面に直面すると、『そうなのかもしれないな』、と思えるのだから不思議だった。人間は自分勝手に世界を改変し解釈する。ふふ。命はなんて、実はとてもいい加減なものなのだろう、と小唄は思った。だから小唄は雪の降る真っ暗な空に向かってくすっと笑ってやった。

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