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 ……しかし、自然は甘くはないようだ。落ち着いていた雪の勢いが増してきた。冷たい冬の風も強さを取り戻した。無音の世界にびゅー、という風の音が戻ってきた。それはまるで『やれるものならやってみろ!』と誰かに言われているような気さえした。

 小唄は『よし! いいよ、やってあげるよ!』という気持ちで歩き続けた。ずっとずっと歩き続けた。

 それが『必ず自分が敗れる勝負』だとわかっていても、そうしようと小唄は思った。そうするんだと『自分で決めた』。……でも、そんな小唄の主観的な気持ちとは裏腹に、そして小唄の客観的な予想の通りに、『そのとき』は、やってきた。小唄の旅はとても短い時間にも、とても長い時間にも、その両方のように感じられた。もちろん正確な時間はわからない。だけど小唄は何度目かの抵抗ののちに、「あっ!」という声とともに、足を滑らせて雪の中に転倒した。地面に転がった小唄はそのとき初めて、世界に雪が積もり始めていることに気がついた。世界に雪が積もり始めていることに気がつかないくらい、小唄は集中し、また、疲労していた。そして小唄は、雪が積もっている、ということを頭の中で一度言葉にしたのちに、……ついに、その場から一歩たりとも動くことができなくなった。……小唄は最後の力を振り絞ってごろりと倒れている体の向きをうつ伏せから仰向けの状態に変えた。そして、そこから雪の降る空を見上げた。それは諦めずに『最後の最後まで星を探すため』の行為だった。

 ……そうか。ここが僕のたどり着いた場所。僕はこの場所で、長い眠りの中に落ちていくんだ。……空に降る雪をみながら小唄はそう思った。

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