41

 それは地面に落ちると弾けて消えた。弾けるときに涙は、とても鮮明な音を出して弾けた。小唄は涙が弾けた音で、初めて自分が泣いていることに気がついた。……心臓が、すごくどきどきしていた。

 小唄は涙を手のひらでぐいっと拭った。それから頭を振って、気持ちを強く持って、あまり言うことを聞かない足を無理やりにでも前に動かして、……再び孤独な旅を続けた。……小唄は、星を探そうと思った。

 小唄はそれだけを思い、冷たい冬の風にちらつく白い桜の花びらのような雪の中で、『天上に輝いているはずの、一つの星の光』だけを探し求めた。……とにかく限界まで歩こう。最後まであきらめずに歩こう。それでもし、力尽きて敗れることがあったとしても、それでもきっと胸を張って古代魚に会いに行けるくらいには、睡蓮さんにきちんと自分を誇れるくらいには、それくらいは、しっかりと歩こう。……凍てつく寒さと極度の疲労の中で、小唄はそう決意した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る