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 びゅー、という音がした。

 それは冷たい冬の風の音だった。それと同時に、空からなにか、……白いものが世界の中に落ち始めた。……それは冷たい、空から大地の上に降り積もる、(小唄の前からいなくなってしまった、睡蓮さんによく似ている)本物の冬の雪だった。小唄はその場で一度、真っ暗な空を見上げた。そのまま小唄は雪の降る真っ暗闇の空の中で、ぐるりと視界を動かしてみた。

 ……だけど、そこに輝く星はなかった。

 小唄は自分の両手で自分の体を抱きしめるようにして、雪の降る暗い夜の中を、一人歩き始めた。

 それは『孤独な旅』だった。

 それは行く宛てのない旅だった。


 小唄は降り出した雪の冷たさに耐えながら、体を縮こませるようにして、暗闇の中を歩き続けた。世界は無音で、びゅーっという時折吹く風の音だけが、遠いところから聞こえてくる異国の音楽のように聞こえた。それはまるで小唄になにかを語りかけてきているような音だった。

 その音も、やがてまったく聞こえなくなった。

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