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「久しぶりに、すごく眠いんです。どこかゆっくりとできる場所さえあれば、僕はすぐにでも眠れると思います。眠るのは本当に久しぶりのことなんです。だからそれが、今からとても楽しみなんです」と小唄は言った。小唄の言葉を聞いて睡蓮さんはようやく少し笑ってくれた。

 小唄と睡蓮さんの手が、ゆっくりと離れていった。それは小唄から睡蓮さんの手を離したのか、睡蓮さんから小唄の手を離したのか、そのどちらかわからないくらい、とても自然な手の離れかただった。

 ぶおーー!! と獣の咆哮のような音がした。機関車の煙突から大量の煙が吐き出された。列車が出発しようとしているのだ。小唄は自分の立っている場所から二、三歩後ろに移動した。

「『さそりの星』って知ってる?」と睡蓮さんが言った。

「……さそりの星?」小唄はその言葉を知らなかった。だけど、なぜかその言葉は自分でもびっくりするくらいに、小唄の心の奥深くに突き刺さった。それはとても不思議な感覚だった。まるでずっと昔に忘れてしまった夢の記憶を、なにかのきっかけで思い出そうとしているかのような感覚だった。

「さそりの星を探しなさい。この暗闇の中には、どこかにその光る星があるはずです。それを探すのです」と睡蓮さんは言った。

 ……星を、探す? 小唄には睡蓮さんの言っていることが、なにを意味しているのか、よくわからなかった。

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