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 ……すべてが、終わる。小唄はその言葉を頭の中で繰り返した。

「死とは影のようなものなのです。つねに私たちの後ろにべったりと張り付いて離れないものなんです。でも、それは死に悪意があるわけではありません。死とは命にとって、もっとも信頼出来る友人とも呼べるような存在なのです。それは信用に足る確固とした形を持っている概念なのです」

「それは神様のようなものですか?」と小唄は言った。

「神様と死は別のものです。でも、私たちは神様を見ることも、感じることも、考えることもできませんが、死はきちんとその存在を認識することができます。『死は神様よりも少しだけ私たちの近いところにいる』、と定義できる存在ですね」と睡蓮さんは言った。

 がたんごとん、という列車の走る音がした。そして直後、かちかち、と天井の明かりが点滅した。

「他人のことが気になりますか?」と睡蓮さんは言った。

「他人の目が気になりますか?」と睡蓮さんは言った。

 小唄は黙っていた。小唄は黙って、ただ睡蓮さんのとくん、とくん、という優しい鼓動の音にだけ、その耳を傾けていた。

 がたんごとん、と、また列車の走る音が聞こえた。

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