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 ご愛読ありがとうございました。

 次回の冒険者にご期待ください!









 んなわけねーよ!?



 びっくりだよ俺が! なんだいまの!?

「俺たちの戦いはこれからだ!」からの爆死エンドとか完全に連載打ち切りコースだじゃないか! 恥ずかしい、いろんな意味で恥ずかしい!! 打ち切り、ダメ、ぜったい!


 はあはあっ、……すまない、つい熱くなった。


 驚かせて悪かったな。

 ちょうどいい機会だから、あいさつさせてくれ。


 俺はウィルだ。ホクトコ諸島、ユーテル村出身。グウィンのギルド所属のシーフだ――――といっても、これはこっちの世界に来てからのプロフィール。


 俺の本当の名前は、名古谷なごや

 

 ウィルはハンドルネーム。名古屋つながりで、あだ名が〝ういろう〟だったからで……って、どうでもいいな。大事なのは俺がふつうの高校に通う、ふつうの高校生だったってこと。

 そうだ。俺は君と同じ、そっちの世界出身だ。


 一年くらい前、学校の帰りに川で溺れてる子どもを見つけたんだ。すぐに助けに飛び込んだ! てカッコいいこと言いたいところだけど、足を滑らせて川に落ちまして。

 ヤケクソで子どもを助けて川岸に押し上げて、そこで体力の限界。ああ、死んだな――と思ったら「世界を救ってください」て声がして。


 目を開けたら女神がいた。

 川に飛びこむ前にゲームしてたんだけど、女神はそれを媒介に顕現したっていうんだよ。


 つまりだな、〈常識摧破ファンタジー〉は無意識に培われた観念や限界に亀裂を生じさせ、元来人間が持ちえる不得要領の練度を高めることにより世界の意思と同期、座標を創出し空中楼閣の出現と所属領域無効化を実現するんだ。

 大丈夫、俺もなにいってるかわからない。


 平たくいうと、人間を異世界に召喚するには緩衝材というか、異世界へのワンクッションが必要で、ゲームとか小説とかがバイパスに最適って話らしい。


 それから女神は俺のピンチにつけこんで、勇者になってくれとお願いした。

 断った瞬間に溺死決定だからね?


 容赦ない不自由な二者択一だけど、まあ、文句はないよ。最初は腹が立ったけど、いまはチャンスをもらったと思ってる。


 こうして俺は勇者になった。


 こっちの世界に来てからのことは前にざっくり話したとおり。

 で、さっき俺は死んだ。


 死人が甦ることはない。その理はこの世界でも変わらないけど、勇者は少し特殊だ。

 もちろん生き返るのはむりだ。死んだらそれきり、先に進むことはできない。



 



 君もよく知ってるだろ、セーブ機能。

 死亡、全滅、バグったり、充電が切れたりネットが落ちたり、どんなときもセーブしておけば安心安全。最後にセーブした時間と場所に戻ることができる。


 これは特殊スキル〈女神の福音〉。勇者のみに発現する特別な能力だ。


 ゲームを媒介に異世界へ引っぱりこまれた影響で、システムの一部が俺の遺伝子に組みこまれたらしい。これまでの勇者も似たような能力を持ってたそうだ。


 俺の場合、データを何回やり直せるかわからないし、リセットのペナルティでダメージ食らうわで、いいことばかりじゃないけどな。


 この世界の誰にも証明できない、女神に選ばれし勇者のあかし。

 時間を遡るなんて、俺以外の誰にも知覚できないもんな。


 さて、種明かしもすんだし、ここからは安心して読み進めてくれ。

 最後にセーブしたのは小さな村の教会だ。


 見ててくれ、これから巻き返す。

 ダンジョンに閉じこめられる前。強制転移魔法を食らう前。

 誰もが出逢うその前に、この試験のカラクリを解いてやるぜ!



 さあ、リスタートだ!

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