第4話 神殿騎士と言う名の葬儀屋

 「マガイダーファイヤー!」

 マガイダーが口から火炎放射を出して死体を焼く、焼いた死体は灰になり

 死者の魂が天へと昇って行くのが見える。

 「ありがたや、ありがたや」

 信者達が故人の魂が昇天して行く様子を見てありがたがる。

 「天へと昇って行った魂に安息を」

 と締めくくる。

 神殿騎士の仕事は、葬式の執り行いが殆どだった。

 アックス神に認められたマガイダーの技で火葬されると、死者の魂は確実に天へと昇って行く。

 弔いをしないと、アンデッドとなって甦り生者を襲うとか厄介な世界だと思いながら福太郎はマガイダーとして火葬係兼埋葬係兼墓守をしていた。


 神殿騎士になって良かったことは、マガイダーの姿になっても人々から恐れられたりせず普通に受け入れられている事だった。

 「アックス神の加護って奴かね? まあ、街で活動できるのは助かる」

 神殿騎士となってから、一気にルミナースの世界に順応した気がする。

 儀式が済んだら穴を掘って灰を埋めて穴を閉じる、もはや土と灰が混ざって地質が変わってんじゃねえかと言う気がするがこの世界の住民は気にしていなかった。

 「お疲れ様です、福太郎さん♪」

 仕事を終えるとラヴィニア女史がやって来て声をかけた。

 「ああ、昼間の仕事はこれでひと段落だな」

 葬儀を終えて参列者達が帰れば、こちらも休みの時間だ。

 神殿の居住区画ではなく、新たな我が住処となった墓守小屋で二人で

昼食を取る。

 「しかし、冒険者たちが襲って来たりというのはないな?」

 敵対勢力がいるなら襲撃があってもおかしくはない。

 「ええ、あちらはあちらの教義で葬儀を行うようですし正直本山のボイコット宣言は意味がある行いとは言えません」

 ラヴィニア女史の言うように、冒険者ギルドもバックに宗教組織が付いているならそちらで冠婚葬祭は行われるだろう。

 「相変わらず、冒険者ギルドとは仲が悪いままなのが厄介だがな」

 福太郎がため息を吐く。

 「住民の皆様も、私達と冒険者の争いに巻き込まれないか不安がってますし」

 ラヴィニアもため息を吐く、悪くはないが良くもならないという膠着状態だった。

 

 ラヴィニア女史に因縁をふっかけてきた冒険者達を、叩きのめしてから冒険者ギルドに罪状を書きつらねて冒険者ギルドに放り込む。

 その後因縁をふっかけて来たギルド長とその取り巻きとやらを叩きのめして橋の下へ吊るしてからは大人しくなったが。

 「冒険者と言う職業の奴らが悪の怪人と変わらんのが気が楽だった、あれなら遠慮せず叩きのめせる」

 俺の中で、冒険者ギルドイコール悪の組織となっていた。

 「あれは例外ですし、あの時の様にやり過ぎないで下さいね!」

 ラヴィニア女史が俺を諌める。

 「次からは考慮するよ、だが俺にはあなたの方が大事だ」

 あなたに害を及ぼす輩には容赦しないのは譲れないとも言っておく。

 「私以外にも優しさを与えて下さいませ!」

 ラヴィニア女史が赤面して叫ぶ、何というか俺は女心は苦手だ。

 ゴロツキの類には徹底的に恐怖を刻み込まねばならん。

 アメリカのとあるヒーローではないが、俺が恐怖のシンボル的に振る舞う事も

必要だ。

 「まあ、一休みしたら一緒に街を回りましょう武装は忘れずに」

 ラヴィニア女史にパトロールの提案をする。

 「あまり目立つ真似は苦手なのですが、福太郎さんのやり過ぎを止める為にご一緒致します」

 渋々ラヴィニア女史は同意した。

 

 フル武装のラヴィニアとマガイダーが出かけようとした所に、来客があった。

 「ラヴィニア様、マガイダー卿! ……お、助け下さい!」

 膝を突いて命乞いをする来客は、この街の領主と言う中年男性だった。

 二人がフル武装でラヴィニアが戦斧を抜き身で持っていたので、自分が殺されると誤解した領主が震えていた。

 「助けよう、そして如何な用件かな領主殿?」

 マガイダーが領主に尋ねる、領主は怯えきっていた。

 「ひ、ひい! 私めは経験アックス教徒ですから殺さないで下さい」

 まだ誤解している領主。

 「領主様、私達はあなたに危害を加える事はございませんわ」

 ラヴィニアが穏和に語りかけるが武装しているので効果が内容で

 仕方なく彼女が鎮静化の魔法で領主を落ち着かせる。

 「取り乱して申し訳ない、お二人に是非お力をお借りしたい件があって参上したしだいだ」

 マガイダー達の態度に文句を言わないのは、この世界は宗教勢力の方が王侯貴族より上でラヴィニアのような街の小さい神殿の司祭職はその街の領主と同等に扱われるのとマガイダーの武力が圧倒的で領主の軍勢を壊滅させられたから逆らえないという二つの事情からだ。

 

 「まあ、一体どのような事件なのでしょう?」

 ラヴィニアが領主に尋ねる。

 「南の山の宝石巨人退治をお願いしたい、倒した敵の遺体はこの無限の袋なら量も重さも関係なく入れられる。それなりに寄進もするし宝石巨人一体で五年無税にしてもやって行けるのだ、街の為にどうかお願いする」

 領主が頭を下げて頼む。

 「わかりました、お引き受けいたします」

 引き受けるラヴィニア。

 「我々を裏切るなよ、きちんと民に還元し数年無税にすると神の前で宣誓し我々の監視下で書類を書いていただいてから取りかからせていただく」

 その手の約束事には地球時代からうるさいマガイダーにより、血判付きで一筆書かされた領主。


 かくして、マガイダーとラヴィニアの二人はモンスター退治のクエストに向かう事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

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