第2話(閑話)その後あったこと

 ※この話は人様が読まれても気分が良いとはいえない内容だと思うので、最後まで迷いましたが、事実だけをできる限り簡潔を心がけて書くということでお許しいただきたいと思います。



 夫が亡くなってお葬式が終わった数日後、姑が家にやってきました。

 用件は「お金を貸してほしい」

 金額は百万。夫の遺してくれたお金を当てにしてのこと。

 借金申し込みの訳は「義弟が使い込みをして、ヤクザからお金を借りていたのだが、それを早急に返さないと大変なことになるから」でした。


 わたしは断りました。

 もしもこれが、嘘でも病気の為とかなら違っていたかもしれません。

 いやそれでも断っていたかもしれませんけれど。


 言いたいことは山のようにありました。

 でも とにかく無事に四十九日を終えるまでは。

 その一心で わたしは「すみません、お金は貸せません」と繰り返しました。


 姑は食い下がっていましたが、わたしの意志が変わらないと知ると、罵るだけ罵った後、玄関ドアを叩きつけるように閉めて帰っていきました。




 そして、四十九日の法要。


 その日、姑はわたしの挨拶にも無視したままでいましたが、法要が無事に終わり、皆が立ち上がった時、つかつかとわたしのところにやってきて、借金を断った件を蒸し返して逆切れしてきたのです。


 勿論、姑には孫にあたる子供たちもその場にいます。

 周りもざわざわとして、気配を感じたのか子供たちは泣きだしました。


 姑も行き場のないものが溜まっていたのかもしれません。

 長男(夫)は既にこの世になく、残された生きている次男(義弟)を何とかしてやりたかったのでしょう。


 それでも、よりによって何故この四十九日の席で子供たちの前で?

 どうして?


 人に越えてはならない一線があるとしたら、姑はわたしのその線を越えました。


 見かねた実家の父が間に入って姑を止めました。


 わたしは歯を食いしばって言いました。

「至らぬ嫁で申し訳ありませんでした。短い間ですがお世話になりました。もう二度とお会いすることもないと思います」


 ぼんやりと姑の暴言を聞いていた舅が慌てていましたが、もうそれ以上、その場にいることに耐えられず三人の子供たちを連れて、わたしはお寺の外へと出ました。


 こらえていた涙があとからあとから流れ落ちました。

 子供たちを抱きしめながら、わたしは声を殺して泣きました。



 その日から今まで夫の実家とは絶縁したままです。

 こちらからは勿論ですが、あちらからの連絡も一切ありません。



 情がこわい人間だと思われるかもしれませんが、わたしにとってはどうしても許すことのできない出来事でした。

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