バジル

 電車が駅に着いた。降りようと立ち上がると、ピーっという電子音が聞こえた。心当たりがない音だったからそのまま行こうとすると、腕を叩かれた。

「ピザ、焼けましたよ」

 隣に座っていた男性が下を指差す。座席の足元が温かかったのはそういうわけだ。

「マルゲリータですね」

 男性はにっこりと笑う。いい香りが車両の中に広がっていた。



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2011年2月 発行「東京グルタミン」

テーマ「香り」

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