第12話 元引きこもりは仲間を作る
私、
あの階層を急いで駆け抜けた私は、また大きな広場に出ていた。
「もう……いや」
何回目だろうか。私はため息をつく。
突然、私の前を人影が通り過ぎる。
「モント……?」
人影が戻ってきた。モントではない。
私は警戒する。
突然、人影が揺れたかと思うと、次の瞬間、人影の手がこちらに伸びてきて私をつかもうとする。
あまりにも人影の動きが早すぎて避けられずに、腕を掴まれた。
「うっ……っ!」
痛い。力が強すぎる。私が何をしたっていうんだ。いきなりはひどいや。
私は魔人から奪い取った固有スキル『豪腕』で腕を引き剥がさせ、指をへし折った。
なってはいけない音が聞こえた。
バチバチ! という音とともに。
「不気味……」
なに今の……ヒューズが飛ぶときに鳴る音だった。
とりあえず腕を引きちぎってみた。
やはり人間とは思えない音が鳴る。
「……」
相手は一言も喋らない。
これ以上よくわからない相手と戦うのは危険だ。
私はそう考え、【魔力操作】で魔力を集めておく。
また腕が伸びてくる。今度は三本。
私は集めた魔力を伸びてくる腕に少しづつ飛ばしていく。
伸びてきた腕が私の飛ばした魔力に当たる。そして爆発する。
それと同時に私は【炎熱操作】で火力を底上げする。
迷宮に轟音が響く。
「……ふぅ」
よし、終わ――れない!?
なんと私が爆発させたはずの人影はまだある。
警戒したまましばらく待ってみる。
しかし、人影は動くことはなかった。
次は近づいてみる。
やはり動かない。不思議だ。今までの魔人は爆発に耐えきれず、灰となっていっていたのに……。
「私が弱くなった……?」
可能性はある。ただそうだと決まったわけではない。
私は足を止めた。
あの人影は……
ゴーレムと呼ぶには少々細すぎる胴体。いや、華奢というのかな?
「私が弱いんじゃなくてゴーレムが強かった……? 違う……私が弱いんだ」
私は【略奪者】でゴーレムから奪った固有スキルを確認する。
【自己再生】と言う固有スキルを奪っていたようだ。
これは文字通りのスキルだった。
どんなときにも少しずつ体力や魔力が回復するというもの。
このスキルのすごいところは、怪我や損傷などのダメージも回復できるということ。いや、回復というよりは再生という言葉のほうが正しいかもしれない。
倒したゴーレムは何日か経てば元通りになるって大図書館で読んだ気がする。
“コア”と取り除くと、動かなくなるらしい、
取り除いたコアを核に、人形を作れば、立派な機械人形になるかもしれない。
そう考えた私はゴーレムのコアを探す。やがてそれらしきものを見つけた。
ビー玉のように小さく丸い。しかし淡い光が発せられている。
「綺麗……」
思わず声に出てしまうくらいにコアは綺麗だった。
ゴーレムの肌は人の肌のようにモチモチしていて、ずっと触っていられそうだった。そんな時間はないんだけどね。
私はゴーレムからコアを取り出した。途端にゴーレムの肌が石のように硬くなる。
10分ほどするとゴーレムの体は地面の砂と同化してしまった。
しばらくこの階層を歩き回ったが、特に何も事件は無かった。
強いて上げるならば、ゴーレムが集団で襲ってきたことくらいだ。
もちろん全員倒したんだけどね。何体かコアの取得に失敗したけれど、それでもコアは7つある。
更に【
これは
やがて私は次の階への道を見つけた。
進むかモントを待つか迷ったが、すでにたくさん動き回っってしまったので進んでしまうことに決めた。
次の階層は絶対零度ってここのことを言うんじゃないかってくらいに寒い、冷たい場所だった。6連続でくしゃみが出てしまった。
私は慌てて炎熱操作を使用して、自分の周囲の空気だけを暖める。
急ぐ理由も特に無いし、モントは一人でもやられないだろうしちょっと休憩しようかな。
ということで私は先程のゴーレムから奪い取ったコアを使って、機械人形を作ろうと思う。
ベースは土。これは機械人形づくりの基本。
【
男の人は正直言って嫌いだから……ずっと一緒に居ることを前提に女の子にした。うん、可愛い……。機械人形だとは思えない。
出来上がった機械人形にコアを埋め込む。コアを埋め込むと、機械人形に色が灯る。
そして【中級精霊召喚術】で中級精霊を召喚。
召喚した中級精霊を契約せずにコアへと誘導し、憑依させる。
ゴーレム自体が持ち主に逆らわないため、中に居る中級精霊も同じように逆らえない。
これで自我をもつ機械人形の出来上がり。
ちなみに服も作ってある。土でだけど……。
まぁゴーレムが着ていれば本物の布のようになるし大して変わんないでしょ。
ということで着物を着せといた。
命名してあげなきゃね。
名前……名前……うーん……。
日本人みたいな名前がいいよねぇ……。
なんでモントのときはすぐに決まったんだっけ……?
あぁそうだイメージだ。第一印象っていうのかな。
それと、少し会話して、「あぁ、この精霊さんは月や……」って思ったんだった。
そう考えてみるとこの機械人形は『雪』ってイメージが湧いてくる。髪は
決めた。この子の名前は
「よろしくね、雪姫。私は
声をかけると雪姫が輝く。完全に馴染めたようだ。
本当に私が作ったんだろうか、と疑ってしまうくらいに可愛い。
「よろしく、茉莉!」
あぁ可愛い……尊いってこのためにある言葉だったのかなって気がするよ……。
機械人形とは思えない――って自我があるんだから当然か。
雪姫の固有スキルは3つあった。
1つめは【魔力結界】。これは多分モントが使ってたやつと同じヤツだと思う。
2つめは【自己再生】。これはゴーレムの固有スキル。
3つめが【
そして私は、雪姫だけじゃ寂しいと思い、二号機(言い方)を作るべく、もう一つのコアを使い、二人目の機械人形を作った。この子にも着物を着せておく。
先ほどと同じように【中級精霊召喚術】でコアに中級精霊を憑依させる。
中級精霊が憑依するとともに二号機に色が灯っていく。
この子の名前はすぐに思いついた。
『
「胡桃ちゃん、よろしくね。私は茉莉。隣りに座ってるのは雪姫。あなたの姉妹よ」
「よろしくね、胡桃!」
「……よろしく」
雪姫は明るい子だけど胡桃はいつかの私みたいに無口なんだね。
ん? 昔の私……? やめて思い出したくない。
引きこもっていたときの記憶、いじめられていたときの記憶がフラッシュバックする。
私は首を振り、思考を強制的に中断させ、過去から逃げる。
それにしても……二人とも可愛いなぁ……。
妹ができたみたい。私が作ったんだけど。
胡桃の固有スキルも雪姫と同じで3つだった。
精霊の固有スキル【魔力結界】
ゴーレムの固有スキル【自己再生】
そして3つめが【
隠密は、文字通りのスキルで、使用者とその他指定した者の姿を消してくれるという素晴らしいスキル。
「休憩はそろそろ終わりかな……」
そのときだった。
いきなり地面が割れた。地割れっていうのかな?
そしてその割れた地面から、巨大な熊のような魔物が這い上がってきた。
雪姫と胡桃ちゃんが驚いている。
熊のような魔物は私の姿を大きな眼で確認すると、私めがけて突進してきた。
「……んっ」
私は難なく回避する。
そして先程まで自分のいた場所を見て驚く。
熊の魔物が突進した地面が大きく凹んでいたのだ。
「おっそろしーい!」
雪姫がはしゃぐように言う。
「危ないよ、雪姫」
雪姫の姿を胡桃ちゃんが隠密を使って隠す。
なるほど。
二人は攻撃手段がないのだ。
まぁそうだよね、中級精霊って防御専門だもんね。
ゴーレムにも攻撃手段はあるにはあるんだけど……可愛くないから付けなかった。
つまりここは私だけでなんとかしなきゃいけない。
氷<炎
よし。
私は魔力操作で魔力を集中させる。
この間私は無防備だ。
それを雪姫と胡桃ちゃんが魔力結界で守ってくれている。
意外と怖い……安全ってわかってるんだけどなぁ……。
サメのたくさん居る海に折の中に入れられて放り投げられたときの気分。いやそんなこと体験したことは無いんだけどね。
やがて魔力を集め終えた私は、熊の魔物から距離を取る。
魔力の塊を少しづつ崩し、勢いを付けて飛ばす。
だいたい三回に一回、【
声を上げさせる暇など、助けを呼ぶ暇など与えない。
雪姫と胡桃ちゃんがドン引きしてる……。誤解されないようにあとで説明しておこう――いや誤解も何もない、今この状態がノンフィクションだし……。
5分ほど続けた頃、熊の魔物の動きが止まった。
その体は穴だらけだった。
雪姫がトドメだと言わんばかりに強く一つの雪玉を投げつけた。すると、熊の魔物の死体は音を立てて崩れ去った。
この戦闘で私は、【突進】と言う固有スキルを手に入れた。
使ってみたが文字通りの突進だった。炎を纏って使ったら結構強そう……多分使わないけど。
――私は二人を連れてこの寒いだけの階層を抜け、次の階層へと進んだ。
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ユニークスキル:【
ノーマルスキル:【
モント
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