▲▲つ55っ! いろんなおはなしだね!わっかんないや!
「……俺は、大和ですから、それは、変わらない。アビーが慕う、皆が慕う、大和だから……。」
続けて、アビーも見て。
画面のその人は、顔を伏せた。
泣き顔、見せたくないのだろう。
やがて、顔を上げて、同じようにそっと笑みを浮かべる。
《そうだな。これで、いいんだな。……なら、もうこれについて言うことはないな。さ、他に聞きたいこと、あるかい?折角だ、知りたいこと、私が記憶している範囲で、話すよ。》
「!」
もう、『大空 大和』について、言うこともない、そう終わらせて。
また、他にも聞きたいことあるだろう、見抜かれて問われ。
俺は、いい機会と思い、聞きたいことを逡巡していて。
「!」
ピンとくるものは、この体だ。
「ええと、じゃあ、俺の今の体、これは一体何だ?」
聞いてみる。
どう見ても、この体、普通に産まれてきたものじゃないだろう。
ここにきて、ふと思う。
《それは、生物兵器用だね。帝国は、君たちがモンスターと呼んでいる生物兵器の研究をやめていないみたいでね。計画として、ビストと同じ姿をした肉体を作り、無理矢理スフィアを埋め込んで、ビストが暮らす、共和連邦圏に潜入させ内部から破壊していく、というものがあったんだ。君は、そのクローン体の一体だが、……不思議なことに君には、〝魂〟というものが入ってしまったみたいでね……。》
「!!じゃ、じゃあ俺は、モンスター、というわけ、か?」
聞くに、モンスターと似たような存在だということに。
遮る形で俺は、聞いてしまう。
《……厳密に言うと、違う。君は、今のままではただのビストだ。この後、改造手術を受けて、初めてそうなる……。けれど、その計画も、頓挫したみたいでね。どうも、大規模な戦闘行為があって、その研究所が破壊されてしまって。これ以上の研究ができないみたいだ。それも……。》
「?」
「うにゃ?」
厳密なことを説明し始める、画面の中の人、途中区切ってはアビーを見て。
不思議なことに、俺とアビーは首を傾げて。
《その、赤茶色の女の子と仲間たちが、そうだね、スフィア狩りを行った際、研究所の存在がバレてね。軍と一緒に攻撃されて、破壊された。……思えば君は運命的に、その女の子と一緒になるみたいだったようだね。もし、計画が進んでいたら、きっと君たちは敵同士で、……幸せじゃなかったのかもしれないね。》
続け、一区切りと溜息が漏れる。
「……。」
「……。」
俺とアビーは、言われて二人して向き合って。
俺が思うに、もしその計画通りだったら、アビーと……。
戦ってしまって、あるいは、アビーを俺が、……殺めてしまったかも……。
そう思考すると、嫌になり。
同時に、アビーと戦わずに、アビーに拾われ。
一緒に暮らせたこの状況に、感謝したくなった。
「……どうしたの?大和ちゃん?」
「……いや、何でもないよ。ただ、……ありがとう。」
「?」
向き合ったその時に、アビーはどうしたのと首を傾げてきて。
だが、俺は何もないというものの、静かに感謝を述べ、微笑んだ。
なぜお礼を言ったか、それはアビーには伝わっていないのかも。
現に、余計に首を傾げている。
《ええと、他には何かあるかい?二人とも、仲睦まじい所悪いけれど?急かしているわけじゃないが、折角の機会だ、他にも何か聞いておくれ。折角、こうして話ができるんだ。》
「!す、すみません!つい……。」
放置されたかと、画面の中の人は、小さく咳き込んで。
この機会に、他に何かないかと、言ってきた。
まだ、話し中で、失礼だと感じた俺は、向き直り、謝罪一つ、述べた。
述べた上で、次に何を聞こうかと思って。
巡ること少し、見つけたのは例の盾のことだった。
俺の盾といい、そこにある盾といい。一体何なのだろう。
「ええとじゃあ、この盾と、そこにある盾について……。」
それを問うた。
《君のしている盾といい、私を投影している盾だね?……これは難しいな。》
耳にしたその人は、難しい顔をしていて。
思考を巡らせるために、目を瞑り、見つけたか、口を開く。
《正直言うと、私でも分からない、特に君のしている盾については。私は、便宜上〝アイギス〟と呼んでいてね、文字通り盾だ。その盾の能力があり、自律思考できることから、マキナの類だとはできるものの、それ以上のことは、何も分からないんんだ。オリジナルが、どのようにして製作されたのか、がね。レプリカを作ることはできたのだけれども。そう、君がしているその盾こそ、オリジナルの盾なんだよ。》
「……はぁ。」
《……まあ、防御用兵装、それも携行できる物として、特に君の盾は随分と研究されていたみたいだよ。何せ、オリジナルの盾は、都市をも防御できる性能を有していたからね。けれど、そこまで複製することもできないし、さらには、その盾には、至る所ブラックボックスだらけでね、紛失するその時まで、解明することは叶わなかったんだ。……すまないな、これについては、質問に上手く答えられないや。》
「……いいえ、いいですよ。」
説明に、相槌打ちつつも。
最終的には、この盾について詳しくは分からず終いであり。
そうであっても、俺は満足で。
謎のままで構わない、この盾は、大切な物だと認識していることもあって。
盾を優しく撫でながら、優しく笑んだ。
《……さてさて、折角の機会だ、まだまだ質問に答えてあげるよ。ははは、私は寂しくてね、こうやって、話ができて嬉しいんだ。》
「……は、はぁ……。」
その人は、話すのをやめないみたいで。何だか、ここにきて、嬉しそうでもある。
この状況でといい、この人、言っている通り、今まで話せずに。
寂しい思いをしていたのかもしれない。
だから、よく話すのか、少し間を開けて、思考して感じる。
……なら、付き合ってあげるのも、いいか、そう結論したが。
《シールドバッシュ、エネルギー充填率80%。残り10分で完了します。コマンド実行がない場合、自動的に起動します。》
「?!」
響く無機質な音声が、和やかに話しそうな雰囲気さえ破壊してしまう。
いや、そもそも、そういう場合じゃないんだった。
その音声に、俺とアビー現実に戻されて。
その人も、現実を認識して、悲しそうな顔をして。
《……そうか。残念だが、時間はあまりないみたいだね。……君たち、もしかしてこれを止めに来たんだね?》
「!あ、はい。」
「!!う、うん。そうだよ。皆、上で戦っててね、ウィザードに続けって、皆頑張ってて……。それでここに来たの。」
本来の任務を、思い出すように聞いてきたなら。
俺は頷き、アビーは、たどたどしくも、経緯を言ってくれて。
残念そうな顔をしても、その人は、仕方なしと溜息一つ。
変わらず、悲しそうにしては、口を動かして。
《なら、ここのスフィアごと、オーバーロードさせるよ。そうすれば、逆流して、この施設、あるいはリンクしている、コンデンサーや、他の地点も破壊できる。……その役目、私にやらせてくれないか?》
「?!」
提案をしてきた。なんと、自ら破壊を申し出てきたのだ。
言われ、俺は、驚き戸惑う。
《君たちじゃ、おそらく莫大なエネルギーをまともに受けてしまって、下手をすれば、命を落としかねない。だが、今の私は、私が今いる場所は、そこで私を映す盾だ、私なら、何とかできる。やらせておくれ。》
「……。」
続くことに、俺たちじゃ、エネルギーに耐えられないとのことで。
だが、俺は提案に素直に頷けない。
それは、その人が無事であると、言い切れないから。
「ええと……その……。」
戸惑いに上手く言葉を紡げないが、何とか紡いでみようと動かして。
「それって、あなたは無事であるという保証は?」
《ない。私がどうなるか、正直分からない。だがね、私は罪深いよ。君の肉体を、尊厳さえなくあんな風にしたんだ。それだけじゃない、私は、いや、〝私〟は他にも罪深いことをしていてね、ビストをいたずらに傷つけたりもしていたのだ、……これは、私の罪滅ぼしだよ。終わらせたい。それに今の私は、盾だ。》
《盾は、盾らしく、守る物だ。》
《らしいこと、やらせておくれ。》
「……。」
答えは、無事である保証はない、とのことで。
だが、それでもやり通そうとするそれは、罪滅ぼしであり、自らが盾でありと。
故に、望む。
その決意に、俺は、どう声を掛けたらいい?言葉が出なくなる。
そっと、俺はアビーに目をやり、また、投影する盾を見て、思う。
時間もないし、俺たちがやっても、危険過ぎて難しい。
だが、その盾が、できると言うならば、それしかなく。
それは、同時に、その人の死を意識させる。
「い、いいのか……。」
震える声で、問う。
相手の死への意識は、もし、同意したならば、現実になり。
そうなると、相手を殺してしまう、思ったなら震えてならない。
怯えに近いかもしれない。
……できるなら、断ってほしいとも思ってしまう。
そうなれば、その人を見殺しにすることもない。
《いいとも。どの道、私はもう死んでいる身だ。今更、死が怖いと怯えても、意味がない。だからね、君たちは生きなさい。》
「……。」
断ることもせず、使命を全うするために、俺を見据えては。
俺は、また、沈黙してしまい。
だが。
「……分かった。」
「うん!分かった!」
「え……?」
もう止められないならば、そうする他ない。辛いながらも俺は、頷いた。
……頷いたのだが、アビーも頷くものの。
そこに俺のような逡巡した様子は見られない。
いきなり何をと、俺はポカンとしてしまい。
「ええと、おじさん……?頑張ってね!終わったら、迎えに来るよ!」
アビーはまだ、続けて。
だが、どう聞いてもそれは、この先に命のやり取りがあると感じさせない。
いつも通り、終わったらまた会えると、いうようなもので。
もしかして、状況理解していない?
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