▲▲つ51っ! あっ!またあのひと

 「あなた、できるでしょ?スフィアを扱えるなら。」

 「!……あ!」

 そんな俺に、何か見抜いたような視線でマフィンは言ってきて。

 そこではっと気付くことには。

 そう言えば、アビーのレーセや手袋探すのに。

 スフィアを扱うようにしてみたことがあったんだった。

 「……そう言えば、やったことある。アビーの手袋やレーセ見つけるのに。」

 「……でしょうね。正直、驚きね。教えたその翌日には、そういうことができるようになっているなんて。……本当に、ウィザードね。ふふっ。」

 報告したなら、呆れかえった言葉を返すものの。

 それは俺の成長への驚きも混じり、複雑ながらも、嬉しそうでもあった。

 「!すっげぇなオイ!がはははっ!やっぱりウィザードと豪語するだけはあるなぁ!」 

 「?!い、いてててて!!」

 傍で聞いていたレオおじさんは、驚嘆し。

 嬉しさのあまり俺の肩を強く叩いてきた。

 痛さに思わず声を上げてしまう。

 「!!」 

 「そこに誰かいるのかっ?!」

 ……その声は残念ながら、帝国の兵士に届いてしまい。気付かれる。

 「あ、まじぃ。」

 レオおじさんは危険を察知したのだが。

 「敵だー!!!」

 逃げようにも、一歩遅く。

 一人の兵士が告げる怒号に、途端けたたましい警報が鳴り響いた。

 その一声皮切りに、こちらに向かってくる足音が多数。

 硬い物が当たる音も、一緒に聞こえてくるに、重火器も所持しているのだろう。

 ……化け物を退治するのかしら?そういうレベルだ。

 「に、逃げろぉ!!!」

 誰が叫んだか、こちらの一声、俺たちは足音のしない方向目掛けて、走り出した。

 「このおバカっ!!!」

 「いってぇ!!ごめんよぉ~、母ちゃん……。」

 逃げる最中に、レオおじさんはエルザおばさんにぶたれている。

 走りながらも何とか謝っていた。

 「ど、どの道見つかっていたと思う!遅いか、速いかだけで。それよりも、破壊するべき場所を見付けよう!そ、それに俺も声を出しちゃったし、これは、俺も悪いや。皆、ごめんよ!」

 道中俺は、フォローかどうか分からないが、入れて。

 謝りもした。俺が、痛さに声を上げなければ。

 「あらもう、いい子ね!ちゃんと謝るなんて。いいのよ。その通り、見つかっていただろうからねぇ。」

 言ったなら、エルザおばさんは俺に笑顔を向けて言ってきた。

 「大和の言う通りよ。速く見つけないと。私も全力を出すわ。」

 マフィンも走りながら言って。

 すると、目を瞑ったなら。

 感覚を研ぎ澄ましているようで、耳がピクピク動いていた。

 「見つけた……!かなり下の方だけど、辿ってみる!」

 「!」 

 すぐに見つけたようだ、マフィンが言ってくる。

 言って、先頭に立ち、皆を案内していく。

 やがて俺たちは、下に潜っていくみたいで。

 動いている内に、砂漠の暑さが和らぎ、地下の涼しさを感じてきた。

 「!!」 

 何か、こう、スフィアの気配をこちらも感じ取った。

 感じとしては、盾以上に強く、大きい。

 もし、スフィアの気配の強さが、その大きさに比例するというのなら、まさしく。

 そうしている内に、広い所に出て、つい立ち止まり、見る。

 「……!」

 声が反響しそうなほどの半球状で、明かりも反射して。

 その中央は吹き抜けに加えて、何だか、巨大な塔のような物も見える。

 スフィアの輝きか、どこからか清らかな光も見えて。

 かつ、半球面にて反射して、全体を照らす。

 ある意味では、幻想的にも見える。

 見とれそうだったが、続く多数の足音に、諦めざるを得ない。

 ……また、その中央の塔その真下にて、巨大なスフィアの感じを覚える。

 そこが目的地なのだろうが、相手さん、素直に通してくれそうもないな。

 「!そこ、その塔の下。……でもっ……!」

 マフィンは言うものの、言葉を区切ってしまう。

 さて、その続きそれは、他ならない、帝国の兵士たちの登場で証明されて。

 マフィンは気付き、また、決意したように俺を見たなら。

 「行きなさい!行って!行って、あなたなら、できる!!」

 言い放った。

 「!で、でも……!」

 いきなり言われても俺は、素直に行くとも言えず躊躇いで。 

 「このまま進んでも、私たちは閉じ込められてしまうわ。ちゃんと、帰り道も確保しないと。それに、大和、いいえ、ウィザード、あなたなら、できる、そう思ったの。後ろは、帰り道は私たちに任せて!」

 諭すような言葉に続けて、退路は自分たちが確保する、と。

 言って、自信満々に微笑んで。

 それは、俺の力を見越しての言葉。信頼。

 耳にして俺は、またここで、自分が震えてしまうのを感じた。 

 ……やはり俺は、誰かに誇れるほどの人間ではないのかもな。

 「!」

 だが、震える体の一部、手を握られて。

 アビーだ。アビーが握って。笑みを見せたなら。

 「アビー……。うん、行くよ。」

 「あたしも行くっ!だって、そうでしょ?一人が不安なら、あたしも行く。」

 「えっ?!」

 震えが止まった、なら、この勢いのまま、駆け出せそうだ。

 と決断の言葉を告げようとしたなら、アビーもまた行くと言ってきて。

 翻って目を丸くし、顎が外れるかと思うほど、口を開けてしまった。

 「はぁ……。言うと思った。」

 見ていてマフィンは、呆れた溜息漏らす。

 でも、言うだろうと予想していて、もうあの、別れの時みたいに怒りもしない。

 代わりに、呆れた笑みを浮かべながらも、マフィンはアビーに向いて。

 「あなたも行って。アビーと大和なら、きっと上手くいく。それと、大和、ほら、しゃんとする。そんなんじゃ、間抜けよ。」

 「!う、ごめん。」 

 「えへへっ!マフィンちゃん、ありがとー!」

 言ってきた。ついでに、俺にも。

 言われて俺は空いた口を戻し。

 アビーは、認めてくれたと、にっこり笑顔を返して。

 「……それじゃ、皆、行ってくる!」

 姿勢を整えて、俺は足を塔に向けたなら、残る皆に一礼を。

 アビーも一緒に、一礼して。

 「おぅ!行ってこい!」

 「頑張れー!」

 「頑張ってくれ、私も、退路を守る。」

 「頑張ってきな!あたしも、久し振りに旦那と暴れておくからさ!」

 皆はそれぞれ声援を送り、手を振った。

 合図に、俺とアビーは駆け出す。


 駆け出したその時に、乱戦の音を耳にする。

 「!……皆っ……!」

 激しい乱戦の音に、俺は戦う皆の姿が気になり。

 つい、後方を気にして、目を向けてしまう。

 アビーは、俺の手をつないで微笑んで。

 「大丈夫大丈夫!皆強いもん!」

 「!……アビー……!」

 励ますように言って、皆への信頼を見せる。

 聞いた俺は、その信頼に頷いて答え、前をまた見据える。

 乱戦の音遠退いて、塔が近づいたなら、下への階段を下っていく。

 そうすると、スフィアの気配は強くなる。

 「!」

 眼前に、巨大で硬そうな扉が阻み。その気配、中から感じて。

 ……ここにきて立ち止まらなければならなくなった。

 「ど、どうしよう……。硬そうで、あたしじゃ壊せない。」

 「……だな。」

 同じ考えはアビーも持っていて。

 その硬さから、いくらアビーでも、どうにもできないようだ。

 《現在、このエリアにはフォトンシールドはありません。ですので、レーセの出力を調節したら、この扉は破壊可能です。》

 「!」

 解決策は盾が提示する。

 周辺を検査していたようで、構造も検査した結果の提示だ。

 指示通りで、俺はレーセを取り出したなら、光の刃を発生させる。

 《レーセと接続。出力設定。リミッターを解除。出力全開放。》

 「?!うわぁ?!ま、眩しい!!!」 

 ……指示通り、構えたが、なお激しい光が発生して。

 《オービタルレーザー、パラレルで起動。》

 「?!え、そ、それも?!」 

 レーセだけじゃなく、不足する出力をスフィアで補うようで。

 レーセの範囲に合わせて、スフィアも展開された。

 スフィアからレーザーが発されて、円を描くように動く。

 なぞるように、俺はレーセを動かして。

 「!大和ちゃん、あたしも手伝うよ!」

 「!!あ、アビー?!い、いいの?!……眩しいよ?」

 「いいのいいの!!」

 レーセで扉を溶解させている最中に、アビーも進み出て。

 眩しいんじゃないかと聞いたが、大丈夫だとアビーは手伝いをする。

 いや、眩しさに臆することなく俺の傍にいて、光の爪を立てて。

 二人、共同作業、扉を破壊することになった。

 扉は、円を描くように焼き斬られたなら。

 もう、境界としての意味をなさず、俺たちを通せるようになってしまう。

 ほんの少しの力、加えるだけで、外れてしまいそうだ。

 「……。」

 「うん!行こっ!」

 アビーと俺、互いに顔を合わせ、頷き合ったなら、確かめて。

 二人して、扉に手をやり、押し込んだなら、感嘆に外れて、道ができて。

 俺たちは、塔の中へ踏み入った。

 「!!」

 入ったなら、中は大層な物が詰まっているわけでもない。

 巨大なスフィアに、それをコントロールする、パネルがあるだけで。

 後は、何もないが、外と同じ、半球状の空間ではある。

 巨大なスフィアが光を発し、空間を彩っていて。

 そのコントロールパネル前面にて、誰かが操作しているみたいだ。

 白衣を着た男のようだが。

 「!!き、貴様らはっ?!び、ビスト!!け、獣!!!獣ぉ!!!」

 「!!あっ!!あの時のっ……!!」

 俺たちが踏み入ったことに、気付いたその男が振り返るなり。

 嫌悪するかのように叫んできた。

 その姿、見覚えがあって、俺もつい声を上げてしまう。

 その男は、あの時、基地にいた白衣の男で。

 何やら、機械仕掛けの人型兵器を伴っていたはずの、あの博士だ。

 途中、光学迷彩よろしく、素敵な飛行艇で脱出したが。

 今日ここにきて、再会する、不可思議に。

 なら次は、どう声が掛かる?話す?

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