▲▲つ50っ! みんなでいこうっ!
「おいおい!大和ちゃんよ!見とれんでくれよ、恥ずかしい。」
「!」
全員集合のこの場にて、エルザおばさんが一言紡ぎ、顔を少し赤くした。
「この服さぁ、何年振りかねぇ。子供が生まれてからは、着てないからね。着ることないって思ってて油断したよぉ。体形だって随分変わったんだよぉ。」
「……ええと、そ、そんなにお変わりないのでは……。」
エルザおばさんは、自分のこの姿について言って。
特に、曝け出された重要なお腹の部分をさすってもいた。
聞いていて、言うほどの体形変化かと思ってしまう。
不釣り合いなほどではない感じだが。
一応、フォローを入れてみる。
「!あぁ~もう!嬉しいこと言っちゃって!可愛いねぇ!うちの息子にしたいぐらいさ!」
「?!わ、むぐぅ?!」
それが嬉しかったか、エルザおばさんは俺を抱き寄せて。
胸に顔を埋めさせ、頭を撫で回してきた。
子育てを経験しているであろう体は、確かに母親の香りがして。
だが、恥ずかしくて俺は顔を赤くした。
「……ぷはぁ。……皆、どうして?!」
抱擁はさておきと、俺は顔を上げ、どうしてここに来たんだと聞く。
「そりゃぁ……。なぁ。」
「マフィンとこのばっちゃんが、〝村の者が戦っているのに、手助けしないとは何事だ〟、って言っちゃってさ。戦える、いんや、戦い慣れした奴連れて、ここまで遥々来たってわけさね!なははっ!」
レオおじさんが躊躇い気味に語りだそうとした傍らで。
エルザおばさんが先に続けて、笑い飛ばした。
どうやら、マフィンやレオおじさんからの話で、村長さんが奮起して。
村の人たちの内、腕の立つ者を向かわせたらしい。
村の一行揃い、また、エルザおばさんの笑いに合わせて、微笑みあって。
釣られて、俺とアビーも笑顔になった。
《……あの、仲良く笑うところすまないが……。》
「!あ、そうだ……。」
《……今我々は、戦場の中にいる。それは、終わってからにした方がいい。》
その中良い、様相に、水を差すようで申し訳なさそうに。
マキナの中の隊員さんが言ってきた。
つい忘れていたと、自ら恥じて。
そも、今はまだ、仲良く手を取り合う。
懐かしささえ感じる、情景の中ではない、戦場だ。
長閑の似合う情景じゃない、砲火の中、戦場だ。
隊員さんの言葉に、俺は、いや俺たちは現実に戻されてしまった。
「がはははっ!忘れていたぜ!」
「すみません、つい……。」
《……まあ、致し方ない。あなた方の仲間なのだから。それよりも、その、ここで何度も頼んでしまい、申し訳ない。》
「いいえ、大丈夫ですよ。同じビストですもの、皆仲間よ。仲間を助けるのは当たり前のこと。」
現実に戻されたなら、早速本題に入るみたいで。
だが、隊員さんはやっぱり申し訳なく思っているみたいで。
だがその申し訳なさ、マフィンの一言で一蹴されてしまう。
《……そうだな、あなた方はそういう人たちですからね。分かりました。では言いますが、……よろしいのですか?》
「いいの何も……。」
「決まっているだろ!やるってんだ!」
《……分かりました。》
隊員さんに躊躇いはあり。
だがそれは、レオおじさんやマフィンの覚悟に消されて。
《……司令官に伺うしかない。今少し、時間をください。》
「いいわ。」
覚悟決めたか、隊員さんはそう言って、スピーカーを切った。
マフィンは頷いて、見送って。
俺は、エルザおばさんからの抱擁を解き、そっとマキナの巨人に向き直る。
「……。」
また、耳を澄まして、通信機にやるならば。
《この際やむを得ない。動けるのが彼らだけなら、彼らしか。……だが、大丈夫なのか?》
《〝西の荒獅子〟と〝東の荒獅子〟、おまけに〝アマゾネス姉妹〟がいるんですよ。……大丈夫だと思います。》
《……そうか。ならば、躊躇う暇、いいや、余裕もない。やらせてやれ。》
《了。任務に戻ります。》
「……。」
出歯亀のようで悪く感じるものの、通信を聞いていて。
意思決定があったようだ、多分、俺たちに任せるつもりで。
ただ、〝アマゾネス姉妹〟は、公然なのか……。
兵士たちの間に、広まっているみたいだ。
それはさておいて。俺は向き直って。
《……君たちに任せる、どうか、壁を破壊してほしい!》
決まったことで、隊員さんから、任務が言い渡される。
聞いて、ここに躊躇いの言葉はない。自信抱き、皆笑った。
互いに、見つめ合い、頷きあったなら。
「行きましょう。」
マフィンの鶴の一声に、それぞれが動き出す。
《分かった。》
皆の意思は汲み取られた、と隊員さんは言って。
また、何か準備しているかのようで。
《ええと、マフィンさん、これを。》
「!分かったわ。」
マキナの巨人は膝をつき。
コックピット付近から光を発し、宙に立体映像を投影した。
それは、帝国の、特に首都をリング状に覆う、長城の情報のようで。
構造も表示されて。
見た目は、何の変哲もない壁のようではある、風に表示されているものの。
中身はハイテクだ。
対空火器が格納されるようになっていたり。
また、対空火器、他防衛兵器を完全に格納すると。
全体が巨大な回路のようになって、巨大なスフィアのエネルギーを展開し。
光の膜を全体に張り巡らせられるようになる。
つまりは、全体、このリング状になっている長城に合わせて。
超巨大なフォトンシールドが形成できる、というものだ。
こうなると、外部から攻めることはできない。
つまり、難攻不落となり、帝国を攻めることが永久に不可能になる。
火器が稼働している状態なら、まだ侵入の余地があるものの。
そうなる前に、この壁を破壊しないと、攻略はほぼ不可能だ。
だが、リング状の内、どこか一つでも破壊されたら、完全な防御はできず。
……そのために、誰かが内部に入らなければならない。
そのために、そう、俺たちが選ばれた。
《……これは、我々の偵察部隊の賜物だ。この壁を破壊したならば、帝国は降伏せざるを得なくなる。村の皆さん、いいや、ウィザード一行!検討を祈る!》
最後、隊員さんは言い切り、空中投影を終えた。
マキナが立ち上がったなら、壁に向き直り、構えた。
《道は私が、私たちが作る。あなたたちは気にせず進んでくれ!》
言って、マキナは轟音を響かせ、突撃する。後に、マキナの獣たちも続いた。
爆音と、炸裂音、響いたなら、攻撃を始めていて。
「……。」
俺は、皆を見て、頷いたなら、先頭に立ち、駆け出す。
皆は、俺の後に続いて駆け出した。
砲撃下に駆け、時に砲撃を避けては、壁を目指す。
「フォトンシールド・オービタル!」
《フォトンシールド・オービタル。スタンバイ。ドライブ。》
俺はただ前を向いて駆けながらも、盾に言った。盾は聞き、コマンドを実行して。
手持ちのスフィア、ほぼ全て使い、光の膜を形成して。
途端、攻撃の光弾が爆ぜて、嫌に眩しく輝く。
「ぐっ!」
目を瞑るが、疾走をやめない。やがて俺たちは、壁の前に辿り着いた。
「!」
さて、入り口はどこだろう。
当たり前だが。
〝ようこそ!帝国へ!〟という案内板と共に、示されているわけもない。
眼前にあるのは、壁だけであり、入れる場所はない。
「どいてな!大和!」
「あたしらに任せな!」
「!レオおじさん!エルザおばさん!」
ならばと、レオおじさんとエルザおばさんの二人が前に進み出る。
何をするのかと、見たならば、二人とも同じように構えて。
「「一挙入魂!!」」
拳を輝かせて、弾丸のように二人打ち出す。
突き出された拳の衝撃を伴って、光弾が打ち出され。
また、二人の光弾が合わさり、巨大な光弾となって、壁に突き進んでいく。
「?!おぁああ?!」
爆音と衝撃に飛ばされそうになるものの、屈んで堪えて。
立つ煙にむせそうになるものの、すぐに収まったなら顔を上げて見るに。
二人の一撃で、壁に大穴ができていた。
「!す、すごい……。」
感嘆の声を漏らす。
「な、何事だぁ?!」
「ほ、報告します!!!!壁が、壁の一部が……!!」
「ある程度の砲撃には耐えられるんじゃないのか?!ええい、フォトンシールドの展開はまだか!!!」
「まだです!!!」
「敵の侵入が予想されます!只今現場に急行中!」
その衝撃に、内部の人間は慌てふためいており。
音声が穴の内側から、聞こえてきた。
「!」
また、誰かが俺の背中を叩く。振り返れば、クサバさんで。
背負っていた道具入れから、弓を取り出して、調整して、目配せしてくる。
「行こう。」
その言葉に俺は、頷いて。
「うっし、一仕事終わり!しゃぁ、次だ次!」
合わせて、前方で壁を破壊したレオおじさんが、足を踏み出した。
俺は頷き、また一同も頷いて追従する。
中に入ったなら、慌ただしい足音や。
道具を輸送する音などが響き、騒がしくあった。
幸い、俺たちの侵入には気づいていないみたいで。
「んで、スフィアを探す必要があるってわけだが。さて、誰か提案ある?」
レオおじさんが第一声を。
「私にあるわ。」
自分にあると、マフィンが言って、手を上げて。
「おう!マフィン、何かあんのか?」
「スフィアの気配を辿ればいいと思うの。恐らく、巨大な光の盾を形成するのに、一つで行うにしろ、分散して使うにしろ、それなりに、大きなスフィアが必要なはずよ。辿れば探せるはず!」
「あたしも賛成。分かりやすくていいや!」
マフィンの提案は、スフィアの気配を辿ればいいというもので。
ヤグさんが挙手して賛成して。
番台さんも同じく上げて。……アマゾネス姉妹は賛成のようだ。
「……いい提案だがよ、俺、ちょっと苦手で……。」
「大丈夫よ。大和もいるんですし。少なくとも、二人でやればできないこともない、そうでしょ?」
「!え、俺が?!」
レオおじさんは、そういうのは苦手のようで、難色を示していたが。
マフィンが続けることに、俺も手伝えばいいとのことで。
振られて俺は、目を丸くした。
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