▲▲つ49っ! みんなきたよっ!

 《うわぁぁ!!敵が多い!!いやっはぁあ!!!》

 にもかかわらず、先の戦闘機隊。

 ソラネコだっけか、その内の一機、変わらずに敵に向かって行き。

 「!!こ、こちらも……?!」

 多勢に無勢、そう思える状態だったものの。

 こちら側に援軍もあり、多数の郡翼が現れた。

 翼に描かれた、真円で象られた花の模様、さながら、花束のように見え。

 《空軍各機、隊列を乱すな。海と陸の連中を支援しろ。後続の連中のためにもここで力見せとけ。》

 《了。》

 空軍の通信だ。

 その後、散開し、ソラネコたちの支援に回った。

 陸だけではなく、この空まで砲火が上がる。

 共和連邦のは、手練れか、損失がほとんどなく。

 帝国の迎撃機を次々と撃墜していく。

 俺は、圧倒されてしまい、動けなくて。

 「!」

 などと思っていたら、戦闘機が一機。

 空から高速でこちらに向かって降りてきていた。轟音と圧に思わず体を屈めて。

 その戦闘機、共和連邦の一機。

 俺の頭上にて機体を回転させて、コックピットを俺の眼前に見せつけて。

 そのコックピット、ガラスみたいな、透明なやつじゃない。

 装甲、そう思わせるほどの。故に、こちらからパイロットの様子は見えない。

 「!!」

 ……だがなぜか、そのパイロットが、にやりと笑った気がした。

 さながら、有名人を見付けたと、はしゃぐように。

 「ぐっ!」

 俺とアビーの頭上を通り過ぎたなら、一気に加速。

 また機体を回して、空を頭上に捉えて。

 途端上がる砂煙に、思わず目を閉じる。

 《警告。飛翔体接近。防御します。》

 「えっ?!」

 どうやら、うかうか目を背けることも許されなくて。

 何か接近しているらしい。と、砂煙の中から、戦闘機がその姿を現した。

 こちらは、帝国側のようで。だが、飛行が安定していない。

 例の、さっき通り過ぎた一機を追撃して、また、ここにて急加速を掛けられ。

 衝撃に舞う砂煙に、センサーが追い付かなかったか。

 コントロールを消失していると思う。

 攻撃よりも、逃げを優先して、パイロットは脱出したようだ。

 コックピットが破壊され、飛び出すのを目にする。

 だが、残骸は、俺に向かってきた。

 「……げっ?!」

 「危ないっ!」 

 反応が遅れた、だが、アビーが俺を突き飛ばし、盾となって。

 「!!アビー!!」

 俺はまた、反応が遅れてしまう。が、叫ぶより早く。

 アビーは己の力を発揮していた。

 サマーソルトしながら、アビーは光の刃による爪撃を放っていたのだ。

 残骸は瓦解し、軽々と降り立ったアビーは、自慢げに笑う。

 「えへへっ!」

 挙句、ブイサインまで出して、示す。

 俺もそっと笑って、立ち上がって体勢を整えた。

 アビーにありがとうと、一瞥し。

 《あれが、あの虎猫がウィザードかっ!くぅ~!かっけぇ~!最高にイカれた奴だったぜぇ!》

 通信機から音声が漏れてきた。

 「……。」


 この通信、あの俺の頭上よぎった、戦闘機のパイロットかな。

 ……危ないと文句を言いたくなるよ。

 周波数合わせて、言ってみようか?

 《このバカ野郎っ!!落ちたらどうすんだ!!……拾わねぇぞ。》

 《?!が、〝ガント〟?!や、やめてくれよそんな冗談。あー、もういいじゃんかよ、一機撃墜したんだし~。》

 《……早晩死ぬぞ!貴様っ!》 

 《へっ!そんなヘマしねぇ!空で俺に勝てる奴はいないんだよ!》

 《……フンっ!言ってろ。イカれ野郎。》

 《それは俺にか?それとも今空で暴れている奴らにか?陸上の奴ら?》

 《……お前のことだ、〝ソード〟。覚えておけ、言うこと聞かないと、落ちても拾わない。》

 《ひぃ~……!》

 「……もう、切ろうかな通信機。」

 代弁は一応してくれたみたいだ、同じ航空隊の誰かが。

 けれど、口うるさいのか、お喋り好きか、会話の多いことで。

 呆れた俺は、通信機を切りたくなってくる。

 《あ!大和っち?切っちゃだめよん!あたい連絡できないから。》

 「……あ、はい。分かりました。」

 しかし、呟き聞こえたか、サカマタさんに止められてしまう。

 残念ながら、どうやらこの乱戦の音を切断することはできないみたいだ。

 付き合うしかなく、諦めに溜息が漏れた。

 《そう悲しくすんなよぉ。楽しいじゃんかよぉ、この空気。ほらさ、こう、体のボルテージが高まるとかさ、……ならない?》

 「……分からないです。」

 何か、諭されてきた。……戦場に対して高揚感があるかと問われても。

 残念ながら、日数立たない俺には、何が何だか分からず。

 《あ~……。がっくし~。サカマタちんしょっく~。あたいらだけってつまらんよぉ。》

 「ええと、分からないですけど、……通信は切らないでおきます。」

 《おう!そうしてくれ!ウィザード、あんたの素敵な声聞きたいからよん。》

 「あ、はい。」

 諭されてしまったよ、切らないでおこう。

 俺は、また、前に向き直ったなら、構えて。 

 また、状況確認のため、耳を澄ましていて。

 《……こちら前線攻撃隊、撤退状況はどうだ?》

 《ほぼ完了だ。だが、敵の追撃がないとも言い切れない。持ちこたえられそうか?》

 《どうだか。このまま、壁を攻略して、先の基地を叩く方が賢明だ。》 

 《……。難しいな。》

 《司令官、どういうことだ?》

 《撤退と護衛に回したい。攻略には人員がもっと必要だ。……誰か、行ける奴はいそうか?》

 《……他も無理か。なら私が、と言いたいが、この機体を預かっている以上、難しい。……いや……。》

 状況の確認のために、聞き進めていたならば、不安があるようで。

 だが、マキナが振り向いて、俺を見つめたなら。

 「!」

 《ウィザードなら、あるいは……。》

 《妄想は慎め。一人で打開できるなら、苦労せん。》

 《……そうか。……なら、このまま一度撤退して……。》

 《そこで弱気になるんか!!部隊が必要なら、いるだろうがよ!》 

 《?!だ、誰だ?!……おい!民間人か?!誰が連れてきた?!》

 《……あなた方……。》

 「?!こ、この声って……?」

 俺に、何か頼もうとしたが、しかし、指揮官は首を縦には振りそうにない。

 その様子に一石を投じるような、聞き覚えのある声についはっとなって。

 《俺たちがよ!この、〝西の荒獅子とその愉快な仲間〟がよ!!》

 《何よそれっ!!私たちは村の代表なの。勝手な名前は付けないで!》

 《いや、そこは〝アマゾネス姉妹とその取り巻き……〟……。》

 《あなたたちもよ!》

 《ふふ。私は、どちらでもいい。大和とアビーを助けるのなら、名前なんて関係ない意志と力があればいい。》

 《あんただけじゃ、力不足だろっ!あたしがいるっ!》

 「……。」

 加えて、他の人たちの声も続いて。聞こえてきたことに、頼もしさを感じて来て。

 そう、その声は……。

 「……皆、来たんだ……。」

 そこで区切ることには。そう、その声の主たちは。村の皆だ。

 レオおじさん、マフィン、番台さん、ヤグさん、クサバさん、つまり村の皆。

 ん?

 聞き覚えはあるが。

 あの別れたメンバーにいない人が混じっている気がしてきた。

 首を傾げてしまう。

 「え、何々?!皆の声がした?!」

 「!あ、ああ。」

 アビーが隣から首を出して聞いて来ることに。

 俺は、希望に満ちた顔で頷いて答えて。

 「……よく分からないけど、皆がいるらしい。」

 「えっ!ほんとっ?!」

 「ああ。」

 続けたなら、アビーの顔は明るさに包まれて。

 「マフィン、……ええとええと、他の皆!ど、どこに?!」

 俺は通信機を取り、音声を送った。

 《!!や、大和?!ど、どこ?!》

 《!!な、何だって?!い、いるのかっ?!》

 《ええ。……待って、トレースするわ。……見つけた。ねぇ、お願い。私たちを、降ろして。どんな所でも構わない!》

 《了解。……いいのか?ここは対空砲火のきつい所だぞ?》

 《構わないわ。……いいえ、だけじゃない、守ってくれるはず。そこに、大和が、ウィザードがいるなら、きっと……。》

 《え、おいおい!冗談きついぜ?!お、俺ここで降りたら、ハチの巣になっちまうぞ?!》

 《あ~んた。男で、でかい肝っ玉あんだろ!ここで度胸見せんかい!》

 《か、母ちゃん、勘弁を~……。》

 「!!!お、降りてくるっ?!」

 どうやら、降下してくるらしい。

 聞いて俺ははっとなり、急いで構え、盾をきちんと動かして備えた。

 《さあ、早くっ!》

 《う、うおぉおおあああああ?!》

 《今行くよ、ウィザード!》

 《へへっ、楽しそう!》

 《んなことなぁああああああい!》

 「んなことなぁああああああい!」

 「き、来た……。」 

 やがて通信が会話と同じになったなら。

 上空に、レオおじさんたちの姿が捉えられるようになった。

 「!」

 衝撃が伝わるなら、舞う砂煙。

 思わず目を瞑ってしまうものの、スフィアを操る手を止めない。

 「なはははっ!やるね、大和ちゃん!」

 「……ぐぅぅ……。もうやりたかねーぞ、俺は。」

 「流石だ。」

 「ふふっ。言った通りだわ。」

 砂煙、カーテンのように覆ってはいるものの、薄くなるにつれ。

 シルエットをはっきりさせていき。

 同時に、それぞれがそれぞれ、言葉を紡いできた。

 「……。」

 それが頼もしくて、それが嬉しくて、笑みが漏れて。

 「!み、みんなー!!!」

 俺が抱いた言葉の代弁、アビーがしてくれて。

 見えてきたその人物たちに、アビーもまた、屈託ない笑顔を見せる。 

 今ここにて、スフィア狩りに来た面々が、集う。

 砂煙失せて、完全に姿を見せたなら、スフィア狩りの時の姿でいて。

 「?」

 だが、その中に一人、あのスフィア狩りの時にいなかった人がいた。

 エルザおばさんだ。

 「……!」

 しかも、いつものエプロン姿ではない、動きやすい服装で。

 ただ、奇抜過ぎて思わず目を背けたくなる。

 へそ出しで、身軽。レオおじさん同様、上半身も下半身も動きやすい恰好だ。

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