▲▲つ46っ! いっくよー!

 「……。」

 やっぱりそれにも圧倒されてしまい、何も言えない。

 「サカマタさん!」

 「!」

 代わりとして、アビーが声掛けしてくる。俺はアビーを向いたなら。

 「そこまでしなくてもいいよっ!あたし、分かったもん。だって、あたしたちビスト、仲間じゃないっ!」

 太陽のような屈託ない笑顔を向けて言った。

 「……。」

 代弁して俺も反対はしない。釣られて出た笑顔が答えで。

 「へへぇ~。おぉぉ~、神よ、女神よぉ~……!」

 一方のサカマタさんは、敬服して伏せたままであり。

 アビーのそんな様子に、大それた口上を述べてしまう。

 「……。」

 聞いていて、こちらが恥ずかしくなる。

 しかし流石アビー、ここで恥ずかしさに顔を赤くしたりしない。

 動じないまま、にっこりと笑顔を続けていた。


 「ふぃ~……。」 

 それから、しばらくの間その状態で固まって、やっと姿勢を戻した。

 俺は、内心ほっとして。

 また、時間経過のあまり、アビーはまた眠そうだ。

 一息入れたか、サカマタさんは、またこちらに向かってきては。

 「いやはや、よかったよかった!ウィザードと一緒なら、鬼に金棒だぜ!」

 「あはは……。」 

 まず口を開くことには、喜びの声で。俺は、苦笑して答える。

 「これで、収容所の連中にも良い連絡できるな。」

 「?」

 続くことには、また気になることも。

 「誰か、捕まっているんですか?」

 ビストだから、帝国内では、捕まっていそうなものだ。

 野暮な感じではあるものの、一応。

 「そう見えるだけでよ、中に軍の、海兵隊が潜入しているんよ。ま、虎視眈々と、チャンスを伺っているんだけど、なかなか作戦が進まなくてね。あんたのおかげで、どうにかなりそうだ!」

 「……な、なるほど。」

 いやどうやら違っていて、収容所内部に、共和連邦の兵隊が紛れていて。

 作戦開始の機会を伺っているらしい。

 なるほどと納得したなら。

 「俺が、俺とアビーが来たことが、良い連絡になれるなら幸いですね。」

 続けた。 

 「ああ!なる、絶対なる!!」 

 サカマタさんは、希望に満ちた顔で、言い切った。

 言い切って、方針が決まったとして、サカマタさんは用意した地図を直す。

 「そうだ。あたいの場所に来いよ。ゆっくり寝られるぜ?」

 「!」

 遅い時間ながら、眠るとして、サカマタさんは提案してきた。

 俺は気付いて、アビーを見るものの、すっかり寝入ってしまっている。

 「ありがとうございます。……アビーも一緒に連れて行きますよ。」

 礼を一つ述べて、アビーを抱きかかえたなら、一緒にと聞く。

 「大切な客人、それも、あたいらの希望の星に、惨めな思いはさせたくないしな、いいよ。ついて来て!」

 笑顔承諾され、サカマタさんは先導した。

 「……えへへっ。大和ちゃん……あったかい……。」

 「!」

 寝言ながら、腕の中のアビーは呟いた。

 ちらりと見た寝顔は可愛らしく、それに俺は赤面してしまう。

 案内された先は、洞窟をくり抜いて作られた簡素な造りの部屋で。

 なお、きちんと寝床を置ける場所はあり。

 「?」

 潮風と波の反射が、心地よく反響する、素敵な場所だった。

 また、温度が一定に保たれているのか、快適で。エアコンさえない。

 確か上は砂漠であったはず。

 それでいて、これほどの快適さとは、全くよく考えられたものだ。

 ぼんやり、そう思っていたら。

 「ほれ、これをしいてええで。」

 部屋の隅を漁っていたサカマタさんが、言って、何か取り出してきた。

 簡素なマットのようで。

 それは、これを敷いて寝てくれとの意思表示。

 「ええとさ……。」

 しかしながら、簡素過ぎて、とてももてなすにはいささか忍びない。

 サカマタさんは少し悲しそうに、俯いて言い出す。

 「……いえ、いいんです。ありがとうございます。」

 言い出さなくていいと、俺は制して。

 それが精一杯なら、それだけでいい。

 それに俺とアビーは、帝国までの道中を助けられたのだ、これでも、十分。

 「……そっか。……すまないな。」

 その謝罪には、これほどのもてなししかできなくて申し訳なさもあって。

 けれど、そっと笑っていて。

 「これ、お借りしますね。」

 「遠慮しなくてい~よ。寝なよ、疲れたろ?あたいも寝るからさ。」

 俺は、丁寧に言っては、まずアビーを寝かせ、次に自分が横になった。

 サカマタさんは、遠慮しなくていいと言って、自分も横になった。

 「……うにゃ……。」

 微かにアビーは鳴いた。

 俺も目を瞑ったなら、夢の世界に行った。


 「全員、おこーし!」

 「?!」

 「?!みぎゃぁ?!」

 時間は経過して、やがて、朝の号令が響き。

 俺とアビーは、飛び上がるように起きてしまう。

 最初、何事かと周りを見渡して見たなら、だが、サカマタさんの姿はなく。

 「……。」

 「……うにゃぁ……。」

 どこへ行ったのかと、起き上がり。また、アビーは眠そうにして。

 二人して探したなら、洞窟の入り口の、丁度桟橋がある付近にて。

 その姿を見付けた。

 また、サカマタさんの部下も周りにいて、昨日見た雰囲気とは違って。

 きちんと整列していた。

 休め、の号令で、腰に両手をやり、肩幅まで足を広げて。

 やけに真剣に、サカマタさんに向いていた。

 「いきなりですまない!」

 「「いつものことです!」」

 「……。」

 サカマタさんが言い始めることには、いきなり、であり。

 だが、部下たちは気にしていない様子。

 ……いつもとは……。影から聞いていて、何だかな、と変に考えてしまう。

 「ようし、お前ら、気合十分だなっ!皆、いよいよだっ!」

 「「!!」」

 それを気合十分と確認したなら、サカマタさんは続けて。

 区切られたが、その言葉に、全員がざわめきだす。

 「帝国へ攻撃開始じゃーーーー!!!!」

 「「!!!!いぇええええええええええい!!!!」」

 「?!」

 言葉短く、ただ告げただけで、一斉に歓声が響き渡った。

 洞窟内に騒がしく反響するに、俺は思わず耳を塞いだ。

 「おまけに、ウィザードが味方する!」

 「「うぃいいいいいいいいいいいいい!!!」」

 「?!」

 さらに続けるに、俺をだしにした。

 歓声は余計高まり、もう耳を塞いでも防ぎきれない。

 「「ウィザード!!ウィザード!!ウィザード!!」」

 掛け声に誉れ高き名が連呼され、拳を振り上げて続けられる。

 俺は圧倒され、一方で全員の士気は高まり。

 「よっしゃー!全員掛かれ!!」

 「「いぇえええええええええい!!!」」

 「……。」

 締め括ったならば、また大きな歓声が上がり、全員が一斉に動き出す。

 洞窟の奥に入ったなら、ガチャガチャと騒がしい。

 何か、機材やら何やら、用意するかの様子だ。

 サカマタさんは、言い切って、深呼吸、足をこちらに向けて歩き出してきた。

 「!おう、おはよう!!」

 「!!」

 「……ふ、ふにゃ……?」

 俺とアビーを見付けて言葉を掛けることには、まず挨拶で。

 だが、圧倒され過ぎて俺たちは、反応が遅れてしまう。 

 「あ、あう……。お、おはようございます。」

 「お、おはよう……サカマタさん……。」

 遅れながらも挨拶をしたならば。

 「んじゃ、あたいは準備あるから、ちょっと奥に戻る!待っててくり?」

 サカマタさんは、にっと笑い、言っては奥に。

 サカマタさんのスペースに戻って行った。

 「……何か、朝からすごいもの見た気がする。」

 「……あたしも……。」

 その背中見送って、俺ら二人、ぽつりと呟く。

 圧倒された余韻は、まだ残っていて。

 合わせて、奥から、他の人たちと同じようにガチャガチャ音を立て。

 止まり、サカマタさんが戻って来たなら、装いが大分違っていた。

 昨日初めて見た姿ではない。

 ウェットスーツのように、体にフィットする服装をしてはいるが、何か違う。

 さらに、その上には色々入るベスト。

 腰にはアビーみたいにポシェットが備えられている。

 「どうした?あたいの美貌に惚れた?」

 「!い、いえ。」

 見とれているのを、惚れたと察したか。

 サカマタさんがからかうように言ってきた。

 俺は首を横に振って。

 「へへへ。分かってんよ。あたいのこの服装だろ?なぁに、ある意味パーティ会場に行くようなもんよ。花火もド派手によ、あたいら含め、海軍や、陸、空の連中まで含めて、どったんばったん大騒ぎよ!」

 冗談だと、笑い、また、冗談めかして続けて。

 聞いていて、アビーはポカンとした様子だが。

 俺は意味は、何となく分かりはする。

 ……これから、戦いに行くのだ。

 それにしては、戦いに赴く緊張感というものがなさそうだけれども。 

 「む?その顔……。あたいが真剣でないって顔だねぇ~?」

 「……!」

 見抜かれた。ジト目で見られ、たじろいでしまう。

 「しゃ~ないじゃん!あたいは生まれつき、ど~も真剣なのが似合わんのんよなぁ。」

 サカマタさんは、困ったように髪を掻きながら言う。

 「……。」

 サカマタさんの言葉に、意見は浮かばず。

 「でも、ま。血が騒ぐっていうか、そんなもんよ。み~んなそう。」

 「……はぁ。」

 続けることには、単純に血が騒ぐから、とのことで。生返事で答える。 

 「「全員、準備完了です!」」

 「!」

 そんなやり取り束の間で、他の全員が集まり、一斉に声を出した。

 その方向に目をやると、さっきと同じように全員整列しているものの。

 やはり、服装が違っていた。

 サカマタさん同様、ウェットスーツ様の物を着込み。

 上にはベスト、腰にはポシェットを備えて。

 違いとして、肩から見え隠れする、筒状の物が見えたことか。

 軍用のライフル銃に、あるいは、バズーカ砲みたいな物も。

 「!!おっしお前ら!」

 サカマタさんはまた、集合した面々に向き直り、姿勢を正したなら。

 「出陣じゃーーーー!!!」

 「「いぇえええええええええい!!!!」」

 その様子から、また号令を掛けて。

 怒号のように響き渡る、歓声に俺はまた、耳を塞いだ。

 全員が一斉に動き出す。

 今度は、桟橋付近にあった、水密扉を開き、駆け出していく。

 その一斉に動いた一団が過ぎ、取り残されたように俺とアビーが、ぽつんと。

 いや、サカマタさんもいた。

 見送ったのち、こちらに向き直っては、手招きをしてくる。

 「んじゃま、あたいらも、行こうぜ!待たせちゃ、悪いもんな。」

 自信満々に笑み、言っては。

 俺たちは、一群がくぐった水密扉をくぐって、向かう。


 「!」

 「わっぷっぺぇ?!」

 くぐった先、そこから陽光が差し、さらに、砂埃が舞う。

 陽光の激しい眩しさと、風立つに交じる砂埃に俺は目を閉じて。

 アビーは、まともに喰らったか、吐き出すような声を上げてしまう。

 聞いた通り、砂漠だ。

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