▲▲つ43っ! うみのきち

 「え、ええと、いいんですか?」

 それが冗談か否か、聞き返してしまう。

 「いいも何も、あたいらもまたそっちに用事があんだよ。何だー、道すがらいいもの拾ったぜ!おっしゃ!決まり!!」

 「は、はぁ……。」

 どうやらサカマタさんは帝国に〝用事〟があるみたいで、都合がいいらしい。

 生返事だが、頭の中ではその〝用事〟のことを想像していて。

 ……それは多分、作戦か何かかな?

 「?!み、耳が?!」

 決めたならサカマタさんは、口を開けて。

 ……喋ったのだが、何も聞き捉えれれない。どころか、痛みさえ感じた。

 「み、耳がぁ?!」

 アビーも同じように。……何をしたんだ?

 「!」

 すると、周辺の海面が、次々と盛り上がって来た。

 やがて、サカマタさんと同じように、人影を出したなら。

 それらは、サカマタさんと同じ服装の人たちだ。

 いや、一部違う者もいる。

 そちらはライトグレーを基調にしたウェットスーツの人だ。

 ……シャチ繋がりで集合しているのなら、ライトグレーはさしずめイルカか。

 だとすると……。

 「いててて。ええと、何をしたんですか……?」

 痛む耳を押さえながら、聞いてみると。

 「なぁに。集合を掛けたんだよ!あたいらは、シャチの能力があるんだ。こうやって、海中でコミュニケーションだよ。」

 サカマタさんは胸を張って、自慢げに答えた。

 ならばあの行為は、高音を立てて、合図を送ったのかも。

 海上ならまだしも、海中まで響くならば、遠くまで聞こえるのかもね。

 その音に呼応するように、彼らは集合したんだ。

 見渡して、ウェットスーツ姿の人たちにて、思う。 

 「……。」

 また、圧倒される光景に、言葉が思いつかない。

 「おー!こいつが大和か!あの、ウィザードの……。」

 「すっごーい!見て見て、猫さんだ!」

 「わぁ。あんなに沢山のスフィアを使ってる。」

 傍ら、俺の話題で持ち切りであり。

 どうやら、噂は広まっているのは、サカマタさんの話通りの様子。

 「はいはい!興奮しないしない。仕事仕事。」

 「「えー!」」

 「……それ、サカマタさんが言う?」

 宥めるために、サカマタさんは手を叩いて。

 周辺からブーイングが飛んできた。

 ただ俺は、聞こえないほどの小さい声で、突っ込みを入れた。

 言ってちらりとサカマタさんを見たが、聞こえていない様子。

 それはそうとして、サカマタさんはして、仲間たちに指示を出し。

 なんと、引っ張るロープを俺たちが乗っている船に括り付けていた。

 「おっし!行くかー!目指せ、帝国!」 

 「!もうできたんだ。」

 サカマタさんが、ガッツポーズをしていたなら。

 もう引っ張るのは完成しており、これでいつでも引っ張れる状態だ、感心する。

 サカマタさんが合図をしたなら、ロープは引っ張られ。

 「!うぉ?!」

 「!わぁ!!」

 釣られて船も動き出す。ぐらつきについ、俺とアビー声が出てしまった。

 海上で彼ら彼女らに助けられ、俺たちは、帝国を目指して航海する。

 その道中に、思うことには。

 「……助けていただき、ありがとうございます。」

 「えへへっ。あたしも、ありがと!」

 「?」

 まずはお礼だった。何だか、便乗しているみたいで、悪く思えて。

 「い~よい~よ、お礼なんて。あたいら、そっち方面だし。丁度いいのっ。」

 「でも……。」

 「あたいらさ、群れで行動するんよ。ビストなら、皆群れの一員よ。だからさ気にしなくていい。自分じゃ難しいなら、できる誰かに手伝ってもらう。そんでもって、難しいなら、もし自分ができるならできることをする。そうやって、持ちつ持たれつ、よ。」

 「は、はぁ……。」

 そうであっても、サカマタさんは気にしない様子。

 振り返っては、そう言ってにっこりと笑った。

 共生関係だから、皆何かできないことがあれば、できる誰かが力を貸す。

 持ちつ持たれつの関係。

 だから、こうすることも。

 俺は、まだ、実感ができず、生返事のままで。


 サカマタさんに頼んで、海上を進んでいく。

 「……?」 

 海上でやたら静かに見えるのだが……。

 だが、彼ら彼女ら、目配せしては頷き合い、時に笑い合っている。

 アイコンタクトだけで、成せるものじゃないと思う。まさか、テレパシー? 

 何もできないこの状況だと、ついつい暇を持て余して。

 ……失礼ながら、思案しそうになった。

 「あの……。」

 「ん?」

 サカマタさんに、言葉を掛ける。

 振り向いて、首を傾げるサカマタさんに、俺は口を動かして。 

 「皆さん、何を話されているんですか?それも、どうやって。それに、海軍所属と聞きましたから、よろしければ、そのことも詳しく教えて下されれば。」

 と。

 聞いていたサカマタさんは、こちらも思案するみたいに、視線を逸らして。

 「まあ、会話が聞こえないのは、ちょっとしたコミュニケーションの方法だろうね。ほら、あたいら海中で音波出し合うみたいにさ。あ、ちなみに内容は、君のこと。もう皆、興奮してるよ。」

 「えっ?!」

 聞こえないのは。

 いわゆる海獣同士のコミュニケーション方法の応用だからのようで。

 して、その内容は、俺のことで持ち切り。

 その通りに、ちらりと見たら、恥ずかしいのか。

 興奮しているのか、さっと顔を逸らした。 

 「……なるほどね……。」

 納得する。

 「と、じゃあ。あたいらのことよね。あたいらは、海軍の中でも、敵地内に潜入する任務をしてるのさ。ま、作戦が進むまでの間、暇潰しに漁に出たりもするけどね。」

 「へぇ。」

 「あ、ちなみに、今回のはたまたま偶然よ。ほらさ、海戦があるとさ、魚とか逃げ惑うから、漁がしやすいの。追っていたら君たちを見付けたわけよ。ま、魚以上の大物よ!全くもう、あたいら運がいいわ。有名も有名、超有名人を見付けられて、握手まで頂いたんだ、もう全く。今日は興奮して寝れんね!」 

 「……はぁ。」

 サカマタさんたちの任務は、敵地に潜入する任務とのことで。

 その傍ら、自給自足のために、漁をしているとのこと。

 そのついでに、俺とアビーを見付けたとのことで。

 これは本当に、運がよかったみたいだ。

 「!」

 すると、聞き耳立てていたか、他の人が騒ぎ出す。

 「えーっ!やっぱり握手したんだ!ずるいー!!」

 「あたちもあたちも!!」

 「……。」

 サカマタさんが、握手していたことへのブーイング。俺は、何も言えないでいる。

 「ほらほら!無駄口叩かない!握手だったら、後でいくらでもさせてもらえるだろうよ、なっ!」

 「?!」

 宥める言葉紡いで、さらに、ウィンクで俺に合図してきた。

 された俺は、戸惑いが走るものの。

 「いいんじゃない?大和ちゃん、モテモテだね!」

 「……あ、アビー……。」

 フォローというよりは、何だか違う気がするが、アビーが横から言ってきて。

 「あ、まあ、別に、それぐらいなら……。」

 不快ではない俺は、頭を掻いてそう言った。ただし、戸惑いはまだ拭えていない。

 俺のその言葉を聞いたら、周辺は余計に騒ぎ出した。 

 「あー!!ほらほら!余計なこと言ってないで、さっさと進む!」

 騒ぐ全員に、叱咤し、急がせた。

 ……その叱咤に静まり返るものの、それは表面だけであり。

 結局俺たちに聞こえない言葉で騒いでいて、変わりなく。

 サカマタさんは、どうとも言えないと頭を掻きむしっていた。 

 その様子に俺は……。

 「有名なんですね、俺って……。」

 ぽつりと声掛けをする。 

 「そりゃま、陸軍が最初に噂して、近くにいたあたいらの仲間が海軍に伝えてさ、聞いたら海軍が奮起して、軍港をぶっ飛ばしてってなってね。もう、特に海軍は大盛り上がりよ!ウィザード、ウィザードって。」

 「な、なるほど……。」

 そういう流れのようで。

 多分、別れる時に、話を聞いていたあの隊員さんの仲間が、広めたのかもね。

 「いやー、ほんと、嬉しいわー!!だって、海軍って皆海の上でさ、退屈してんのさー。刺激があるのって嬉しいわー!」

 「……。」

 続きにサカマタさんは、呟いて。方や俺は、聞いていて心の中で一つ思っていた。

 ……その、海軍さんですが……。

 噂のあの人こと俺が乗っていた機体を、容赦なく落としませんでしたかね……?

 ……いや、知らなかったのだろうから、責めるのも無粋だし。

 あと、サカマタさんが謝ったこともあり。 

 こうしてくれるのもあり、不問にしよう。

 また、サカマタさんや、アビー、また、他の面々の顔を見ては。

 表に出すのも癪になる。

 正直、表に出すことでもない。おまけに助かったんだし。

 「!!」

 「「~♪!」」

 思っている傍ら。

 サカマタさんの仲間たちは、気分の高揚から。

 内容がよく分からない歌を歌いだす。

 いきなりに、つい戸惑ってしまうものの。

 励ましも感じたり、喜びも感じたり。

 ……イルカ、シャチたちの歌なのだろうか分からないけれど。

 聞いていて、勇気づけられてくる。


 歌混じる航海、やがて大きな陸地へと迫っていった。

 「!」

 そこは何だと、目を凝らしていると。

 「見えたぜっ!帝国の領土だ!」

 「あれが……っ!」

 サカマタさんが示した。俺は、驚嘆の声を出し、言葉を詰まらせる。

 そここそが、帝国で。

 見える場所には、だが、港のようなものは見えない。岸壁のようだが。

 また、その上は、土の露出した、生気のないもので。

 ただただ、先は不毛と、感じえた。

 「……。」

 威圧を感じ、生唾を飲み込んだ。

 俺たちの航海は、さらに奥へ向かい。

 「!」

 まるで、大陸か島が、化け物のようにその大口を開けたような。

 そんな場所を目指して行った。多分洞窟で、不思議に、首を傾げてしまう。

 そこに、何があるのだろうか。

 「おう!驚いた顔してんなっ!」

 「!」

 察されたようだ、サカマタさんが言ってくる。 

 「ええと、何であんな場所に向かっているんだろうって、不思議に思って。」

 思ったことを述べるなら。

 「おう!あそこ、あたいらの基地なのさ。」

 その回答がサカマタさんから述べられて。

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