▲▲つ44っ! ていこくについたー!

 「……基地……。」

 だが、見た目からして、想像できなく、腑に落ちない。

 納得のために反芻するように、言葉が漏れた。

 はっきりと、自信のあるものじゃない。

 「……信用してないようだね。」

 「……う、その……。はい……。」

 また、察された。振り返り、悲しそうな顔をしていた。

 俺は、正直に言うしかなくて。

 「いやー。そのさ、はっきりとあたいらだって、分かったら、……ダメじゃんかよ?」

 「……あ、はい。」

 「あたいらは、帝国から見たら、敵でっせ?そんなはっきりと、目立つように基地があってみろ、〝おいでませ、サカマタと愉快な仲間たちの屋敷〟とか、あと〝ようこそ!オルカランドへ〟とか、〝ドキッ!美女だらけの海水浴場!ポロリもあるかもね?〟とか書いてみろ、……速攻でやられちまうぜ!」

 「……あ、はい。……大変よく分かりました。」

 素敵な解説が成された。

 ……何となく理解できたが。

 例があまりにも目立ち過ぎないだろうか、疑問に思う。

 まあ、共和連邦である以上、早々に見つかってしまっては元も子もない。

 彼ら彼女らが、潜むためには、そうせざるを得ないのだ。

 やり取りの最中、その秘密基地の入り口を通ったなら。

 解説通り、基地らしい雰囲気が出てくる。

 洞窟の奥に進んでいく内に、ぼんやりとした明かりが見え。

 また、最初ごつごつと牙のような岩石も。

 コンクリートらしきものに舗装された部分に置き換わっていく。

 明かりの向こうには、階段があり。

 水密扉か何か、分厚いもので遮断された場所も見えた。

 向かうは桟橋だと、何となく思える。

 確かに基地らしい。

 「なっ!」

 先導していたサカマタさんは、振り返って、どうだと聞いて来る。

 「すっごーい!」

 「……た、確かに。」 

 コメントはまずアビーが素直に答えて、俺は確かにと頷きを見せ。

 耳にしたサカマタさんは、自慢げだ。

 桟橋に接近したなら、サカマタさんはまず飛び上がり。

 「よーしっ!お前ら!ゆっくり接近させろよ!」

 「「うぃー!」」

 指示を出す。

 呼応して。

 サカマタさんの仲間たちが、ゆっくりと俺とアビーが乗る船を接岸させていく。

 「ほいっと!」

 「うお、速っ!」

 ある程度来たなら、アビーが一息ついて。

 するっと船から抜け出し、ぴょんと軽々桟橋に上がった。

 その速さに、俺はつい声が出て。

 「ほらっ!大和ちゃんも!」

 「!」

 招き声に、手を差し伸べて。

 合図に俺は、そっと立ち上がり、荷物を背負って同じように跳躍した。

 「!!」

 「ほいっと!えへへっ!大和ちゃん上手上手!」

 跳躍は上手くいき、同じように桟橋に上がり。

 また、アビーの手に丁度収まったなら、アビーはにっこりと微笑んだ。

 見つめ合う形になったが、そっと微笑みで答える。

 「なーなー!おれっちも握手していい?」

 「いや、あたちはサインで!」

 「えぇー……。」

 そんな様子に水を差すような、サカマタさんの仲間たちのせがみ。

 戸惑いが再び現れて。

 「はいはい!順番に並ぶ並ぶ!」

 「「はーい!」」

 サカマタさんが、手を叩くなら、一斉に返事して。

 皆は桟橋に上がり、きちんと並んできた。

 「うわぁ!本物だぁ!」

 「あはは……。」

 握手を求めてきた人には、まだ戸惑い交じりに。

 苦笑が混じりながらも握手を返し。

 「サイン!おれっちサインを!!」

 「分かった。」 

 サインを求めてくる人には、サインをして。

 「ねぇねぇ!スフィアを沢山動かすの、見せて見せて!!」

 「……分かった。」 

 スフィアの技術を見たい人には、見せた。

 まあ、マフィンから習いたてで。

 多分端から見たら、まだまだかもしれないけれど。

 「すっごーい!大和ちゃん上手~!」

 「……。」

 見せたなら黄色い声援が届くものの、それはアビーからだったけど。

 アビーのそれに、言葉は返さない、代わりに、そっと微笑みを返して。

 皮切りで、桟橋の周辺は、盛り上がりの色に満ちていった。


 やがて、太陽は沈み、暗がりが洞窟の基地内まで入ってくる。

 「!」

 盛り上がりに、色々としていたなら。

 時間はあっという間に過ぎていたのか、ここでやっと気づいた。

 「?」

 呑気にやっていたなら、サカマタさんは徐に奥の。

 人目につかない所に引っ込み、しばらく戻っては来ない。俺は、首を傾げる。

 「?!」

 戻って来たなら、サカマタさんは下着姿になっていて。

 体のラインがよく分かるような状態に。

 また、お尻には、シャチの尻尾が見える。

 そんな姿を見て、軽く、顔が赤くなった。

 「な、何でまた……!」

 「ふぃー!ずっとウェットスーツ着てると、蒸すのよね~。いやぁ~、目の毒になるかもしれんから、我慢してたんだけどよぉ……。流石にもう、限界!」

 「……そ、そうですか……。」

 理由としては無茶苦茶な気もするが、納得するしかなく。

 「うぃー!おれっちも着替えて来るよ!!」

 「あたちもー!」

 「……。」

 これもまた、皮切りに他の面々も着替えだす始末。

 俺は、彼ら彼女らの様子に黙したまま見送る。

 濡れたウェットスーツは脱ぎ去って、下着やら。

 各々好きな格好になって戻って来たなら、また、色々とせがんでくる。

 せがみが第二ラウンド。予感して体が強張りそうだ。

 「だー!もう!お前らなぁ、一応この人ら客人なんでっせ!あんま、無茶振りさせんな。それより、もてなすもてなす!」

 「「えー?!」」

 「……い、いえ、大丈夫……です。」

 サカマタさんは手を叩いて注意したら、皆からブーイングが飛んでくる。

 俺は大丈夫だと、付け加えて。

 「あんたらも、疲れてんだろ?無茶しちゃいけんぜ?」

 「……は、ありがとうごさいます。」 

 視線を俺に向けたなら、気遣いの言葉が来て。俺は、素直に頭を下げた。 

 「ほらほら!さっさと準備する!」

 「?」

 「「はーい……。」」

 俺が頭を下げたのを確認することなく、サカマタさんは視線を戻し。

 部下たちに、手を叩いて指示を出していた。

 一同から生返事一つ、それぞれ散り散りになり、動き出した。

 「……ええと、何を?」 

 何をするのだろうか、浮かんだ疑問を口にしたなら。

 「ま、ちょっとしたもてなしさね。あんたらも疲れただろう?ここまでの道中といい、あたいのやんちゃな部下の相手といい、さぁ。」

 「あ、あはは……。ありがとうございます。そ、その、皆さん大変賑やかで、飽きないですね……。」 

 おもてなしをしてくれるそうな。

 基地までの道中の疲れや、部下たちの相手で疲れただろうと労いに。

 お礼を伴うものの、苦笑交じりに言葉も出た。

 「いやいやぁ~。お世辞でも嬉しいねー。やんちゃな奴らばかりだからさ、あんたらみたいな、大人しいのがいいのよぉ~、ほんと。」

 「……え、えと……は、はぁ……。」

 サカマタさんは、お世辞でも嬉しいと言ってくれた。

 俺は相変わらず、苦笑のままで。

 だが、言われた内容に、視線を少しアビーの方に向けてしまう。

 向けた上で、疑問符を浮かべ。

 首を傾げて戻し、サカマタさんにはまた苦笑で答えて。

 「?」

 アビーは、どうしたの?とこちらも首を傾げるものの。

 それ以上の追及はしてこなかった。

 「!」

 その疑問といい、苦笑といい、は途中漂ってきた香りに掻き消されていく。

 魚系の香り。

 醤油や、煮つけの香りも混じる。

 魚料理か。ちらりとサカマタさんを見て思うに、らしいなと感じた。

 アビーも嗅いでおり、料理を想像してときめきの瞳の色を見せていた。

 アビーらしいや、そっと笑む。

 「姉貴ー!できやしたー!!」

 「!おう!」

 同時に、出来上がりの声が響いた。料理が完成したらしい。

 サカマタさんは、応じて、立ち上がり、料理の受け取りに向かった。 

 サカマタさんの仲間たちが持って行き。

 そこから、まるで宴のような催しになり、大騒ぎ。

 ……ここが、秘密基地であることさえ、忘れて。


 宴と大騒ぎが終わったなら、片付け、やがて途端静かになる。

 そこは、やはり秘密基地だ、そう感じて。

 そうなったらそうなったらで、サカマタさんの仲間たちは散り散りに。

 各自の速度で奥へと消えていった。

 「?」

 何だろうかと思うと。

 「そりゃ、もう夜も深い。寝る時間さね。ほれ、あの奥、あそこ寝床にしてるんよ。」

 「……そうですか。」

 サカマタさんが答えてくれた。

 俺は理解し頷く。

 それに、夜が深いとなると、眠気も感じ始めてきた。

 ちらりとアビーを見たなら、彼女も眠そうに。

 「んじゃ、あたいらも寝ますかね。二人とも、一緒に来いよ。」

 「!あ、ありがとうございます。」 

 察したか、サカマタさんは親切に言ってきた。俺は、自然とお礼を述べる。

 「!」

 だが、すっくと立ちあがって、自分の寝床に案内する前に。

 何か気付いたか、立ち止まる。

 「……そう言えば。」

 「!」

 何か話があるみたいで、ぽつりと口が動いたなら。そっと、俺の方を向いてきて。

 「あんたら、帝国に何しに行くんだ?まさか、観光じゃねぇよな?」

 「……!」

 今になって、目的を聞いてきた。

 まあ、確かに道中、仲間たちがなかなか楽し気で、それは宴でも同じ。

 そんなのに、言い出すタイミングなんて計れない。

 また、言い出しに観光かと言われたものの、そんなはずはない。

 「……観光じゃありません。ええと、ある人を探していて。」

 「ほう。」 

 問い掛けへの答えに、俺は言い始め。

 サカマタさんは、聞き入るように俺を見てくる。

 「ある幼子の件であって……。……。」

 続けたなら。

 内容はもちろん、あの幼子の母親探しで。

 もちろん、その後村の仲間たちと別れて行動していることも告げて。

 かつ危険を承知だと。


 「……というわけなんですよ。決して、観光では来ていません。」

 「……。」

 話し終えたなら、サカマタさんは、熟考するように黙り込んでいて。

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