▲▲つ39っ! おふねがないよ!!どーしよー!そうだ、くうぼにのろう!

 「……!」

 やがて森を抜けたなら、潮風香る、海近くまできたと分かるのだが。

 ……近付くにつれ、煙に風景が奪われ、焼け焦げの酷い匂いに変わっていった。

 その通りに、空爆は続いているみたいで。轟音と衝撃が辺りに木霊している。

 けたたましい機関砲の音、爆撃と共に砕け、遠退いて。

 ……煙晴れたなら、はっきりする景色。

 軍港の建物のいくつかは、破壊され、煙をくすぶっていた。

 ある程度の高さのある建物さえ、瓦解していて。

 つまりは、戦場の光景でしかなく。

 ただし、空母など、軍艦はまだ生きていて。

 言葉を失いそうな光景だが、目的は果たさなくてはいけない。

 近くに漁港もあり船を借りるんだ。

 軍港をよそに、漁港を目指す。

 不安はあった。

 もしかしたら、船も破壊されているんじゃないか、と。

 「あ!」

 杞憂に終わる。幸い、無事だったようで。

 漁港の船は、空爆の圏外だったか、原形を留めていた。

 良かったと駆け出したが……。

 「!!」

 「!!大和ちゃん、伏せてっ!!!」

 安心を打ち砕く、轟音がいくつか。気付いたと同時に、アビーの怒号が。

 合わせて伏せ、ちらりと空を見たなら。

 また戦闘機が舞い戻り、今俺たちがいる漁港目掛けて、機銃掃射が始まった。

 《システムドライブ。フォトンシールド・オービタル。》

 同時に、俺の盾が起動し、また、スフィアを自動で操作して。

 俺とアビー包むように光の盾を形成した。 

 様々な物が砕け散る音が響き、また、爆発の音も響いた。

 やがてそれらが、残響のように遠退いて、……静かになった。

 「……。」

 そっと頭を上げて見渡したなら。

 「……うげぇ……。」

 悪い状況を見て、思わず声を漏らした。

 目の前で、借りようとした漁船は、炎に包まれて沈んでいき。

 ……つまりは、通行手段を失った。

 立ち上がり、他にはないかを見渡すものの。

 やはり、どれも全て破壊しつくされてしまい。

 「あ~あ……。」

 同じく立ち上がったアビーは、残念そうな声を漏らして。

 その時二人、同じように呆然と立ち尽くす形になった。

 「……。」

 「……。」

 「どうしよう。」

 「ど~しよー……。」

 二人して、同じように声を出す。残念ながら、いいアイデアは出てこなくて。

 「!」

 それでも事態は進んでいるようで。

 けたたましいサイレンは鳴り響いており。

 加えて、遠くから騒がしく、急ぐような音も聞こえてきた。

 その方を見れば、軍港で。

 空襲を察知して、大急ぎで準備をしている模様。

 マキナや補給物資などのコンテナも見受けられ、急いで積み込もうとしていた。

 「!そうだ!」

 その事態を見て、閃きがよぎる。

 「アビー!」

 「?」

 呼んで示すことには。アビーは聞き入ってくれるようで、耳を傾けてくる。

 「……積み荷に紛れ込もう。」

 そのアイデアを言う。

 空爆といい、混乱状態だ、上手くすれば、忍び込めるかもしれない、と。

 「!」

 アビーもまたピンときたようで、呆然とした顔をやめ。

 そっと笑みを浮かべたなら。

 「流石、大和ちゃん!さえてるー!」

 賛同し、称賛する。

 「……決まりだね!」

 ならばと、俺は閃きに従い、軍港へと向かう。アビーも追従して。


 軍港は混乱していた。荷物の集積もそこそこで、乱雑気味で。

 それが幸いして簡単に侵入できた。

 そうであっても、帝国が占有する軍港だ。

 うかつに目立つのを避け、二人して身を潜めながら行動している。

 「……どーする?」

 アビーが声を小さくして聞いてきた。

 「……。」

 俺は、周辺を覗き、見渡し、顎に手を持ってきて、思案する。

 「!」

 その時に、空母付近にあるコンテナに目が留まったなら、またピンとくる。

 それだ、と。

 「アビー。あの、でっかくて、上が平らな船の近くに行こう。あそこで、頻繁に荷物を中に入れているみたいだから。」

 そのアイデア、口にして、指で示した。

 先は、大きな桟橋で。

 また、大きく混乱して、今いる地点同様、結構乱雑な状態だ。

 これも、好機だ。

 「!うん!」  

 アビーは、声を潜めてはいるものの。

 元気よく返事をしたら、俺に付き従い、その桟橋へと向かう。

 空襲の警報が鳴り響く中、荷物の搬入を急がせている。

 おかげで、桟橋まで俺たちは見つかることなく侵入できて。

 乱雑な荷物に紛れながら、丁度いいのを物色していた。

 「ねぇねぇ!」

 「!」

 横で見ていたアビーが、何か思いついたか、俺の横っ腹を突く。

 アビーを見たなら、どこか指さしていて。

 見れば、段ボール箱のようだ。……時代錯誤な気がするんだけど……。

 「あの箱知ってる!入るとあったかくて、寝心地がいいの!あれ、いいな!」

 「……そう、か……。」

 根拠も付け加えてくれたが、アビーらしいや、けれど生返事しか返せない。

 「バカ野郎!!!どうでもいい物を積み込むな!!マキナ用のコンテナを優先しろ!」

 「あ……。」

 離れた所から見ていたが、怒号が飛んでくる。

 警戒も一瞬したが、こちらの存在に対するものではない。

 荷物に関して、のようだ。

 怒号の後、諦めて釣り下げられた荷物は離されて。

 アビーが指さした段ボール箱目掛けて落ち、潰してしまう。

 「……。」

 「……。」

 二人して、呆然と見てしまった。これは、プラン変更なのだろう。

 だが、幸いか、あの中にいたら、二人ともぺしゃんこだったかもしれないね。

 「……どーしよー……。」

 困ったようなアビーの声に。

 「プランBだ。」 

 俺は模索の一言で答えて。

 言ったなら、辺りを見渡して。

 「!」

 目に留まるのは。

 輸送してくれた隊員さんたちが所持しているコンテナと似た雰囲気の物だった。

 マキナが搭載されたコンテナだろう。やっぱり閃きがよぎり。

 「あれにしよう。」

 アビーに提示する。

 「!おー……っ!」 

 その大きなコンテナに、思わず溜息で答えたアビー。

 「……いいねっ!」

 続くことには、賛同だ。

 俺は頷いて、どこか入りやすいコンテナを探した。

 アビーを連れて、探すと、割とすぐに見つかった。

 ……というか、チェックもそこそこか、コンテナの扉の閉じは、甘いみたいで。

 適当なコンテナに手を当てたなら、簡単に開いた。

 「……。」

 「……。」

 アビーに目配せて、頷いたなら、二人素早く乗り込んだ。

 乗り込み、こっそりと扉を閉めたなら。

 そのタイミングで大きくコンテナが揺れる。

 一瞬爆撃が直撃したのかと思ったが、違うようで。

 若干左右に揺さぶられる感覚があることから、幸い輸送されているみたいだ。

 「!」

 こっそりスフィアを使って、コンテナを照らすなら。

 確かに積み荷はマキナであり、それも大型。

 なお、俺たちがいても動かないのは、電源が入っていないからなのだろうか。

 ……幸いだが、謎めく。

 「!!」

 今度は床から衝撃が走り、静かになった。

 どうやら、目的の場所に置いたみたいで。

 とりあえず、第一関門はクリア、かな。そっと胸を撫で下ろす。

 「……。」

 壁に耳を当てて、外の様子を伺うと。

 「急げ急げ!!もう、他の物に構うな!!!出航しろ!!!」

 「……。」

 慌てる声が多数聞こえ。合わせて載せられた何かが動き出すみたいだ。

 振動が伝わることから、多分、船が動くのだろう。 

 また、そっと、扉を開けて伺うことには。

 巨大な空間の中だが、丁度船の中のような感じから、侵入に成功したと確信する。

 「……ねぇ。」

 「?」

 アビーが横から顔を出したなら。

 「成功した?」

 聞いてきた。俺は、静かに頷いた。

 「良かったー!これで、帝国まで安心だねっ!」

 聞いて、呑気な回答をアビーがして。

 「でもさ。バレないように気を付けないとな。」

 俺は釘を刺すみたいな一言を述べて、扉をそっと閉じた。

 閉じたなら外部からの光源はない。

 そのため、スフィアを使って明かりを確保する。 

 もちろん、照度は低くして、多く漏れないように。

 自分たちの存在を気づかれないよう注意を払った。

 その微かな明かりの中、浮かび上がるアビーの表情、いつもの呑気なままで。

 「ふぁぁ~!」

 「……。」

 その呑気さ極まり、ここに来て、欠伸を出すか。

 アビーの大欠伸に、呆れてしまう。

 「……なんだか~、眠くなってきたね?」

 「……。」

 呑気なセリフも、加えて。俺は、呆れて頭を抱えてしまう。

 「大和ちゃんは、疲れてないの?すごいねぇー。」

 「……?」

 頭を抱えていたが、続くアビーの、眠そうな声のセリフに、首を傾げて。

 「疲れて……?」

 俺は、そのセリフを反芻したなら。

 「今日、色々あったから、あたし、疲れちゃったかも。だって、スフィア狩りに来て、おっきなマキナと戦って、おっきな基地に行って、どったんばったん大騒ぎ、だよぉ。」

 「……ああ~……。」

 アビーが説明してくれた。思い返せば、確かに。

 今日は色々なことがあって、忙しかったかもな。

 納得しそうだ。疲労だって、あるかもしれない。

 「だから~、到着するまで、お休みっ!休憩っ!」

 「……。」

 元気よく言ったなら、さっと横になる。

 眠たそうなさっきのセリフとは大違いに、この時ばかりは元気だ。

 「く~……。」

 「?!はやっ!!」

 ……にもかかわらず、眠る。思わず声を出してしまう。

 その時、はっとなって口を塞ぎ、耳を澄ませた。

 「……。」

 息も殺したかも。だが、誰かが近づいて来る音はない。

 分かったなら、ほっとまた胸を撫で下ろした。

 また、アビーを見て、その寝顔に安堵の鼻息一つ、そっと頬を撫でてやる。

 「!」

 と、その寝顔を見ている内に、俺もまた眠気に襲われてくる。

 アビーの言うとおりだ、……今日色々あったしな。

 欠伸が漏れる。それは、疲労の証明であり。

 俺もまた、アビーの横で、冷たいコンテナの床ながら、伏せて眠る。

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