▲▲つ33っ! とつげーき!

 「……すげぇ……。」

 つい、言葉が漏れる。

 「ほら、ぼさっとしない。……能天気は置いといて、攻撃されたら一たまりもないわよ。」

 「!」 

 見とれていた俺の後方から、マフィンが出て一言掛ける。

 こちらはこちらで、もう構えていて、スフィアを既に展開していた。 

 掛けられた言葉にはっとなって。

 俺も相手側に向き直り、手持ちのスフィアを投げる。

 マフィンに教わった通り、そっと操作したなら。

 放たれたスフィア全て、光輝き宙を舞う。 

 《迎撃モードに移行。AWSドライブ。》

 合わせて、左手に備えた盾は言う。

 また、自ら表部分を開き、板を四方に展開して、光を収束させていく。

 《スフィア、リンク。フォトンシールド、オービタルモード。》

 さらには、光の膜を、俺たち一同を包むように展開した。

 《ロックオンを確認。各員衝撃に備えよ。》

 「!」

 同じくして、相手側の反撃が飛んできた。

 俺は目を細め、逸らし、直接光を見ないようにして、備えた。

 それほどの衝撃はない。凄まじい光の破裂を目にしていただけで。

 「ぐおぉ!眩しぃ!」

 近くにいたレオおじさんが叫んだ。直接目にしたらしい。

 「だ、大丈夫ですかっ?!」

 振り返り、安否を問うなら。

 「あー。大丈夫。ちょっとチカチカするが……。」

 目をショボショボさせながら、大丈夫だと手を振って応じた。

 「!」

 また、合わせて上から轟音が響き渡る。

 見上げたなら。

 空にて金属の鳥たち、戦闘機たちが群れを成して基地に向かってきていた。

 「全員退避!!」

 後方から追ってきた隊員さんたちが、怒号を響かせ言う。

 俺たちは応じて、後退したなら。

 同時に沢山の爆弾やミサイルが降って来た。空爆だ。

 《衝撃に備えよ。弾着まで……。》

 盾は指示し、カウントを開始した。

 《インパクト。》

 「!!」

 掛け声みたいに言い切ったなら、衝撃がこちらにまで伝わって来た。

 体を丸めて、衝撃を逃す。

 立ち上がったなら、土煙にまみれる光景。

 晴れてきたなら、柵も壁も破壊され。

 こちら側が、通れる道のような状態になっていた。

 「突撃!」

 隊長さんの掛け声に、一斉に彼の部隊が動き出した。

 また、上空も騒がしくなる。大型の航空機が迫り。

 俺たちが向かうのと同じ方向に移動、また、尻尾とでも形容しようか。

 その部分が開き、中からコンテナが次々と投下されていく。

 重さがあるか、かなりの加速が見られ。

 そのままなら、地表で破壊されてしまうかもしれない。

 爆弾なら、それでいいが。

 だが、爆弾じゃない。

 地表に迫る寸前に、大きく逆噴射して、風を起こしたなら緩やかに。

 そっと着地する。 

 他のコンテナも同じように。

 次々と着地したなら、コンテナが開き、マキナの獣たちが姿を現した。

 共和連邦側の、マキナたちだ。

 兵器を稼働させ、地表目標を。

 どうやら、迎撃システムのようだが、破壊していく。

 「!」

 今度は、大量の人が降ってきている。

 落下傘が開いたなら、悠々と降り立ち、次々に展開していった。

 ……まさに、電撃のような作戦だ。

 「クリア!」

 色々な所で、攻略の言葉が上がっていく。

 その様子を、ただ呆然と俺は見ているしかなかった。

 「!」

 俺を突く誰か。振り向けばアビーで。

 「ねぇ。あたしたちもお手伝いしよっ?」 

 そっと、笑顔で言ってきた。

 俺は、頷いてアビーと共に、帝国基地内の、奥深くへと入っていく。


 銃撃戦の音が遠退いていく。

 砲撃音も遠退き、やがて攻略の音も遠退いた。

 新たに聞こえてくるのは、勝利の歓声が。 

 その中に俺とアビーはまだいない。まだ、その中に入れない。

 ……人探しに従事するのだ、幼子の、母親を。

 開かれていった基地内の建物、もう調べられていたかもしれないが。

 一応確認していく。

 建物内は、焼けた跡があるが、……不思議と死体はない。

 遠くに見ることになるが、縛られ、行動を制限された人々の姿が多数。捕虜かな。

 運び出された物品にも、残骸はあれど、人の死骸はない。

 「?」

 ふとなぜか、それだけが気になってしまう。

 「……何だかさ、ちょっと、死人……って言えばいいのかな、いないね。」

 ぽつりと呟いたなら。

 「ん~。何となくだけど、スフィアのおかげじゃないかなぁ。ほら、防御のために結界張るとかあるじゃない!」

 「……そうか。ここの兵士たちも、使っているんだもんな。」

 不思議と、人的被害がないのは、スフィアを装備しているからなのだとか。

 隣のアビーのセリフに、……少し安堵する。

 そのままだったら、気分が悪くなりそうだったよ。

 「えへへっ。それよりも、探そう!」

 「!ああ、そうだな。……つまらないこと聞いて、ごめんね。」

 アビーが話を、行動を戻す。本来の目的、それは、幼子の母親を探し出すことで。

 ……忘れちゃ、いけないよな。頷いて俺は、本来の目的に戻った。

 「……。」

 しかし、探してもなかなか見つからない。

 というか、攻略し終えた雰囲気だから、もう半ば諦めかけていたその時に。

 「?」

 基地にて、崩れ去った格納庫らしき所に違和感を感じる。

 周辺が空爆され、焼け崩れているにも関わらず、やけにきれいだ。

 「!」

 目を凝らしてみると、スフィアが発するような光の膜が展開されていた。

 「……。」

 気付いた俺は、歩み寄る。

 「!や、大和ちゃん?!」

 「アビー、何だかあそこ、違和感がない?」

 俺が何か見つけたことにハッとなったアビーは、俺の後に続くが。

 なぜだろうかと、首を傾げていた。

 俺は、指で示したなら。

 「ほんとだー!何でだろー?」

 「……行ってみようと思うんだ。よければ、どう?」

 アビーも気づいた様子で。ならばと提案したなら。

 「行く行く!」

 素直に頷いてくれた。

 そこに近づいたなら。

 《フォトンシールドを確認。稼働レベル・低。突破できます。》

 盾は言う。俺は、そっとそこに手を当てたなら。

 「!いてっ!」

 バチンと電撃が走り、思わず手を退ける。

 《フォトンシールド解除。内部に入れます。生体反応をチェック。確認。》

 「……。」

 その際に、光の膜が消えたみたいで。

 ……盾が解除か、破壊したのだろうか分からないけれど。

 その後、盾は何か調べたらしく、また、生体反応を確認した。

 その回答に、俺とアビー、二人顔を合わせて頷いた。

 他の場所をチェックしても、それらしい人は見かけなかったんだ。

 残されたこの場所に、もしかしたらと思って。

 重苦しい巨大な扉を、二人して力を入れてスライドさせたなら。

 内部の様子が窺い知れる。

 「!!」

 その綺麗さに、目を丸くした。 

 攻撃をあれほど受けているにも関わらず、綺麗過ぎたのだ。

 アスファルト敷きの床も、壁も、何もかも。

 「?!」

 また、格納されていた物も綺麗過ぎて。

 中にあったのは、四発のプロペラエンジンを携え。

 動体は、船っぽい形状のそれで、大きい。航空機?

 いいや、何か違う。航空機に相似だが、であれば、胴体の形状に違和感が。

 「……!」

 気付いた、飛空艇。そうだ、飛空艇だ。

 前世でも、遠くから見たことがある代物。 

 確か、海難で救助するものだったような。

 「!」

 その隅で、何者かの影が動く。

 「だ、誰だ?」

 俺は声を掛ける。

 「もしかして、あの娘のお母さん?」

 アビーも合わせて声を掛ける。

 「!」

 応じるように、そっと顔を覗かせる人影だが、違う。女ではないようだ。

 よく見えない状況打開するために、スフィアを投じたなら。

 その人物の姿が分かる。

 また、様子見に体を乗り出していたがために、より一層に。

 ボサボサ髪に、白衣を羽織った人物。……研究員だろうか。

 ビストの特徴である、獣の耳は見受けられないことから。

 普通の人間なのだろうと推測する。

 「あの……。」

 そこにいては、何も分からない。俺は、まず声掛けをする。

 「ひ、ひぃぃぃ!!ビスト!!そ、外の連中は……?!お、おわぁああ!!」

 「?!」

 いきなり、その研究員は、発狂したように叫びだす。そして、また隠れてしまう。

 俺は、咄嗟に動き、追うと。今度は、置いてある飛空艇の影に隠れていて。

 震える様子を見せながら、たじろいでいる。

 「……?!」

 その際よく見たならば、何だかこの研究員、見覚えがあるような気がする。

 ……だが、思い出せない……。

 「……あの、その、もうここは共和連邦が……。」

 「ない!断じてない!帝国が共和に負けるなんて、ない!ひひっ!どうせ、いつもの悪い夢に決まっている!そうだ、いつもいつもいつも!私に付きまとう、くだらない夢、妄想!あああ!覚めろ覚めろ覚めろ!!」

 「……。」

 その人物が誰か思い出せはしないが。

 とにかく、話はしてみよう、と続けたものの。

 研究員は発狂のままで、話ができない。

 発狂のあまりにか、頭を抱え、振り乱す。

 だめだ、埒が明かない、その人に掛ける言葉が思いつかない。

 「!」

 助け舟か?アビーがひょっこり出てきて。

 その様子に何だか、ときめいた顔をして。

 「わーい!待てー!」

 「!!ちょ、アビー、やめた方が……!」

 猫らしいや、慌てふためく様に、本能が刺激されて、そのまま飛び掛かる。

 「ひぃぃやぁああああああ!!獣嫌い獣嫌い!猫嫌ー!」

 その状態の人間に、そのようなことをしたら、こうなってしまう。

 発狂が加速し、一気に燃え上がった。やれやれと、思ってしまった。

 アビーを引き剥がして、この場を収めようと近付いたなら。

 《危険分子を確認。排除する。》

 「?!な、何だ?!」

 盾のような機械音声がしたならば。

 同時に、機械仕掛けの音を、等間隔に響かせながら〝何か〟が近づいて来る。

 等間隔の音は、言うなれば足音で、……およそ人ではなさそう。

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