▲▲つ26っ! さがしものはなぁに?

 「そう言えば、アビーはどうなんだ?」

 アビーは、スフィアの扱いはどうなのだろう。その問い。

 それをアビーに出してみたなら、一転、何だか暗い顔に。

 察した俺は、やっぱり今のなし、そう言いそうになった。

 「ええとね……。」

 「う、その、言いにくいなら、言わなくても。俺も、つい興味本位でさ。その、ごめんよ。」

 しかし、続けようとする。やっぱりいいと、俺は言ったものの。

 「……あたしね、ヘタクソなんだ……。」

 「……。」

 制止を振り切って、言い始めた。何だか、悪く思えて、気まずい空気に。

 「下手だから、その、スフィアをね、よくなくしちゃったり。」

 「……。」

 気まずさながら、聞き入るしかなく。

 「あたしね、スフィアを宙に浮かせたり、その状態で動かしたりすることができなくて、どっかに飛んでっちゃうの……。それで、よくトラブルになったし、マフィンちゃんや村長さんに怒られたり。」

 「……。」

 「……酷い時には、レオおじさんの頭に直撃したりしたんだ。」

 「……そう……か。」

 「……。」

 アビーの、スフィアコントロールエピソード、それは不器用なようで。

 悲しく、相槌を打つしかなく。

 「……ん?!れ、レオおじさん?!」

 だが、単語を耳にして、引っ掛かり、顔を上げる。〝レオおじさん〟。

 「……レオおじさんに当たった時は、おじさん笑い飛ばしていたけど、多分、痛かったんだと思うよ、たんこぶできてたし。もちろん、謝ったよ。」

 「……難儀だね……。」

 その難儀さに、少し可哀そうに思えて来て。アビーも何だか、悲しそうだ。

 「……だがよ、それは苦手だってことで。」

 「……でもね。あたしそれは苦手だったけど……。」

 苦手なことは誰にでもある、それはアビーから教えられたこと。

 俺が、それを紡ぐその上に、重ねてくるように。 

 「……スフィアを使って、体を強くするのは物凄く得意なんだっ!」

 得意なこと述べては、顔を上げ、いつものように笑顔いっぱいにしては。

 「だって、誰だって、得意なことも苦手なこともあるもん!あたしは、これでいいのっ!」

 らしいことを、言い切った。

 「……そうだね。」

 らしい彼女に、笑顔で送る。

 いつもの彼女に戻ったなら、また鼻歌奏で、家路につく。

 俺は、そんなアビーの背中を見ながら。

 スフィアを動かしながらも追従していった。


 家に帰って、横になり、天井を眺めていても、俺はスフィアを動かし続ける。

 三個ほど浮かべて、動かして……。

 何だか、最初より上手くなってきたか。

 動きが滑らかに、複雑に動かせるようになっていた。

 「!!」

 その動かしている様子に、アビーは目を丸くし。

 今にも飛び掛かりそうな体勢になっていた。

 猫の本能がそうさせるようで。

 「にゃっ!にゃっ!にゃにゃっ!!」

 「……。」

 アビーは、猫のように飛び掛かるものの、スフィアに触れることはできない。

 俺がして、回避。

 ……何だか、本当に猫を飼っていて、弄り回している気分がしてきた。

 「うにゃぁああ!」

 思いっきり飛び掛かるものの、だが、当たらない。

 「?!」

 当たらないが、俺を目掛けて落ちてくる。

 咄嗟に俺が操作したなら、光の膜が形成、彼女を宙に浮かせた。

 「おーっ……!!!」

 感嘆の声が漏れる。さらに、嬉しそうに微笑んだ。

 「やっぱり、うぃざーどだねっ!」

 その単語口にして。

 その練習続け、夜は更けていった。

 そっとスフィアを、丁寧に並べて、戻したなら、アビーと一緒に眠りにつく。


 そうした翌朝。

 「……?」

 この日物音で起こされる。

 ゆっくり目を開けば、探す音と共に、天井が揺れるのを目にした。

 横を見てもアビーはいない。上に登って、何か探し物をしているらしい。

 ゆっくりした動作で体を起こし、這いつくばる体形になったなら。

 猫みたいに体を伸ばし、大欠伸。

 立ち上がって伸ばして、歩いたなら階段に向かう。

 アビーの背中が見え、やはり、何かを探しているようで。

 「アビー、おはよう。」

 「!」

 その背中に、挨拶を向けたなら、気付いたアビー、手を止めて振り返る。

 俺を見たなら、ぱっと顔を明るくした。

 「大和ちゃん、おはよう!」

 いつもの元気な挨拶を返して。

 「……また探し物?」

 「!……うん。けど、ちょっとどこにやったか思い出せないの。」

 次に俺は、探し物かい、そう聞いてみる。

 そのようだが、見つからないようで、俯き加減だ。

 「俺も手伝うよ。」

 元気が出るかな、俺は自ら申し出る。

 その通りに、アビーは俯くのをやめ、元気を取り戻したように、明るくなる。

 「……ううん。いいよ!大和ちゃんはゆっくりしててよ。」

 「二人なら、効率いいだろう。その、どんな物かによるけど。」

 「……。」

 けれど、いいよと断られそうに。

 それでも言い続ける俺は、予定も頭の片隅にあって、そのためにも、と思い。

 今日もまた、マフィンが来る。もし、二人なら遅れることもない。

 「マフィンに怒られるよ。俺も手伝うから。」

 極めつけの一言。

 「……そうだね。うん!一緒にやろう!」

 聞いたアビーは、頷きとても嬉しそうに笑うのだ。

 朝の始まりに、俺とアビー、探し物を探す。

 俺が跳ね階段を上り、物置状態の天井に入ったなら。

 「……話戻るけど、どんな物?」

 まず、どんな物なのか聞いてみる。

 「ん?ええっとね。大和ちゃんが貰ったような、手袋!それと、スフィアが入った小さい懐中電灯みたいな物!」

 口に指を当て、思い出したことを口にすることには。

 昨日俺が貰った物と同じ手袋と、……小さい懐中電灯のような物のようで。

 「……。」

 俺も口に指を当て、考える。

 「!」

 ピンときた方法を思いついた。

 俺と貰った物と同じ手袋と、アビーが言った懐中電灯には。

 スフィアが施されている、なら、呼び寄せることも。

 そう思いつき、そっと、空を撫でてみる。

 《おはようございます。本日は……。今日の天気は……。今日の運勢。一月生まれは……。》

 「……。」

 反応はあった。

 が、それは下に置いているバックパックにある盾で。

 抑揚のない声ながら、挨拶を返してくれた。

 丁寧に日付、天気まで言って、かつ占いまでやってくれるとは。

 なかなか機能の優れたものだ。

 感心するものの、ごめんよ……呼ぼうとしたのは、君じゃないんだ。

 《かしこまりました。待機しておきます。いつでも行動できます。その際はお呼びください。》

 「……。」

 気持ち伝わったか、盾は丁寧に言葉付け加えて、沈黙した。

 その様子、俺は静かに見守って。

 「!わ、光ってる!」

 「!そ、そうか。」

 別の方でも反応があったようで、アビーが何か見つけたと声を上げた。 

 振り返ると、陰った天井の奥、仄かに輝いているか、光が見える。

 アビーはそこに向かって行き、手探り、見つけたようで、持ち上げた。

 光により露になる物は、箱のようで。

 光はその中にある物から発せられているみたいだ。

 「あったー!」

 確認のために、箱を開いたなら、目的の物のようで、嬉しそうに言う。

 掲げて見せることに、確かに手袋で、また、懐中電灯みたいな物を合わせ二品だ。

 「?」

 よく見ると、俺の貰った手袋とはまた、少し特徴が違う。

 手の甲にスフィアがそれも、大きめのもの、が埋め込まれているという違い。

 何か違うのだろうか、首を傾げた。

 「!ええとね、これはあたしの、あたし専用の手袋なんだぁ。それでね、この、懐中電灯みたいな物は、〝れーざーせいばー〟って言って、スフィアの光を、刃状にして出すもの。皆、〝れーせ〟って言ってるの。」

 「……へぇ。」

 俺が疑問に思っていると気づいたなら、アビーは説明してきた。

 俺は、関心を示し、まじまじとそれらを見つめる。

 アビーは、手袋をはめ、例の懐中電灯みたいな物を握ったなら。

 そっと離れて、何かスイッチを押すかのようにした。

 「見ててね。」

 一言を合図に、ブンという独特な音と共に、光の刃が発生する。

 「!」

 眩しく、かつ、熱を感じる。俺は顔を逸らし、直接見ないようにした。

 それはまるで、SFだ。

 「ね?すごいよね。」

 アビーは首を傾げて言ったなら、その刃を消す。

 「……。」

 俺は、アビーの持つ〝れーせ〟、多分〝レーセ〟と呼ぶのだろう、に圧倒され。

 何も言えないでいる。

 しかし、驚きはしない、未来なり異世界なり、さもありなんと。

 「これはね、金属みたいに硬い物を切断するために使うんだって説明されたんだけどね……。」

 「……。」 

 圧倒されている俺に、追加説明が。そのような道具らしい。

 聞いていて、理解し、俺は頷く。

 「でもね、あたし、……不器用で、これ使えなかったんだ。ねえ、よかったら、大和ちゃん、使ってみない?」

 「!」

 少し悲しそうに続けたなら、アビーはそっと。

 その懐中電灯様の筒を、俺に手渡してきた。

 「……。」

 手渡してきたそれを、無下にするのも難だ。

 俺は手渡されたそれを、受け手で取る。

 「ありがとう。でもさ、いいのか?アビー、これはそれなりに便利なものだろう?」

 コメントとして、いいのか、と。

 それなりの道具だろう、それを俺に手渡すなんて、余程だ。

 「いいのいいの!それにあたしには、特注のこれがあるもん。」

 手放しても構わない、補って余りある道具があると、顔を明るくして言ったなら。

 付けた手袋をぐっと握ったなら。

 レーセと同じような刃が、手袋から三本ずつ発生した。

 「……なるほど。」 

 またも圧倒されるが、納得もする。

 自分では扱えないから、特別に自分用のものがあり。

 それが今アビーが付けている手袋で。

 だから、必要としない。

 「えへへっ!あたしじゃ使えないけど、大和ちゃんなら、何だか使えそうな気がするの。あげるね!大事に、……してね?」

 「ああ。」

 首を傾げての、お願いに、頷きを。

 「あたしよりも上手な人に使われて、きっとれーせも満足だし、ね。」

 付け加えに、レーセも満足そうだと、慈しみの笑顔も添えて。

 だから、あげる、自分よりも上手に使えそうな人に。

 それがそう、俺なのだということだ。

 「分かった。使いこなしてみせるよ、ありがとう!」

 ならば俺は、使いこなしてみせる、そう約束のように言い切った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る