▲▲つ24っ! すふぃあのつかいかた

 「……いや、ちょっと待った。……何て言った?」 

 すぐに気付いた俺は、手を前に出し、制して聞く。

 「え?だって、大丈夫かは、実際に攻撃してみないと分からないじゃない。」

 さらりと怖いことを答える。

 身をもって、教え込むつもりらしい。

 「さあ、行くわよっ!……大丈夫、かすり傷ぐらいはつくかもしれないけど、命までは取らないわ。」

 聞いて不安に染まる俺に、容赦なくマフィンは続け。

 構えたなら、スフィアたちが追従、光を収束させる。

 さっき、光弾を出した態勢だ。

 「……ちょっ!!マジか!!」

 俺の不安なんて聞いていない。

 マフィンは本当に攻撃するつもりだ。やむなく俺も構え、光の膜を強くする。 

 《警告!!ロックオン!AWS起動。》

 ……そう言えば、忘れかけていたが、盾が動くこと。

 アビーが持っていたバックパック、光を発してガタガタと騒ぐように動く。

 今にも飛んできそうだ。

 「アビー!……しっかりそれ握ってなさいよ。大和と一緒になると、何か、練習にならないかもしれないから。」

 「!わ、分かったぁ!」

 マフィンは気付き、バックパックが飛んでこないよう指示を出す。

 もし、このまま俺に攻撃すれば。

 盾が、盾の入ったバックパックが飛んできて、防御しかねない。

 それでは、……俺としても何か違う。

 アビーは言って、ガタガタ震えるバックパック背負い。

 より遠く離れ、また、自分ごと飛んでいかないように、近くの木にしがみついた。

 「アビー、……その、ごめん、……ありがとう。」

 俺は、何だか申し訳なく思い、掛ける言葉、掛けるだけ掛けた。

 「さあ、気を取り直して。行くわよ!」 

 「お、おうっ!」

 気を取り直したマフィン、構え、スフィアに光をまた収束させる。

 さっきはいきなりだったが、スフィアの使い方を教えてもらっているんだ。

 やろうと、やる気を入れ、マフィンと対峙する。

 光の膜をより厚くするようイメージしたなら、厚くなり、防御を厚くした。

 《警告!警告!ロックオン!!ロックオン!!》

 強い警告が離れた盾から発せられる。

 必死に、主たる俺、管理者を守ろうと。

 健気ささえ感じるが、騙すようで、悪く思えた。

 「……すまん……。」

 目を瞑り、頭を下げ盾に謝罪を。

 煌めきがいくつも、それは閃光を伴い、光弾を放った。

 「!」

 数多の光弾は、俺のスフィアの前で、光の盾に阻まれ、爆ぜていく。

 「うっ!」

 完全ではない。一部は貫き、俺の頬を掠めた。

 ……当たり前だが、マフィンが手加減をしている、傷は浅い。

 「……うん。まあ、上々じゃないかしら。気を落とさなくていいわ。初心者にしては、あまりに上出来ですもの。」

 「……そ、そうか……。」

 攻撃を終えたマフィンは、また顎に手を当てじっくりと見て、判断。

 評価してくる。

 良かったようで、俺は、光弾の掠めた頬を拭って、小さく返事を一つ。

 「大丈夫。練習すれば、上手くなるから。」 

 「ありがとう、マフィン。」

 アドバイスが続き、俺は礼と頭を下げた。

 ふと、何だか達成感かで、頬が緩むのを感じた。

 《攻撃を確認。これより迎撃を開始します。》

 「……あ……。」

 有難いアドバイス、練習の出来の評価に。

 水を差すような言葉が盾から聞こえてきた。

 ……嫌な予感がする……。

 「わわっ?!バックパックが……!!口がっ……!」

 アビーの驚きの声。

 見れば、バックパックの口が思いっきり開き、光が溢れ出してくる。

 「!」

 盾が勢いよく飛び出したら、光を発する板を、自らの全体に展開していた。

 光が板に集められ、より発光する。

 《AWS・FCS、フルドライブ。迎撃並びに反撃開始。》

 「!!」

 俺の場所まで飛んで来たら、甲高く唸り、……何か作動させていた。

 さらに、形態が変わり、盾の中心が、スフィアを中心にして、十字に開く。

 ……端から見れば、青筋のマークに見えなくもない。

 実は怒っている?

 「?!ちょ、ちょっと、止めなさいよ、あれっ!」

 マフィンは叫ぶように言う。嫌な予感を覚えているのは、俺だけではないようで。

 また、俺は止めようと動くものの。

 それよりも早く、マフィンは構えて、防御の姿勢をとっていた。

 「?!」

 俺が手に取って止めるよりも早く、煌めきが走る。

 幾多ものレーザーが俺をすり抜け、後方のマフィンにまで向かって行った。

 衝撃と、放電音のようなものが、反対から聞こえる。

 ちらりと見れば、幾多のレーザーは。

 マフィンの幾重に、多く張り巡らされた光の盾に阻まれているみたいで。

 「うっ……。」

 しかれども、押されている。それに苦悶とも焦りともとれる表情をした。

 まずいと、思う。もし、破られたら……。

 俺は、視線を戻し、手を広げ、盾に向けたなら。

 スフィアを操作するみたいに、動かした。

 《管理者権限を確認。移動。並びに、現行のシステム停止。》

 感情のない言葉が発されたなら、盾はその開いた部分を閉じ、発光を止める。

 その上で、俺に飛来した。手に収まったなら、完全に元の盾に戻っている。

 感情のない、読めないその盾は、……不気味に感じてしまう。怒り収まったか?

 「いつっ?!……うぅ……。」

 タイミングを同じくして、軽い悲鳴が上がる。

 見れば、残光がマフィンの光の盾を貫き、同じように頬を掠めていたようで。

 軽く、傷口を押さえていた。幸い、それだけで大事ではなく。 

 ほっとしたのと、申し訳なさそうな気持ちが溢れてきた。

 「ま、マフィン、ごめんっ!!」

 俺は、そのまま謝罪を述べた。

 「……いいえ。大したことじゃないわ。気にしないで。」

 「う……。でも……。」

 手で制されるものの、心残りだ、声も漏れる。

 マフィンはしかし、痛みの顔をすぐに戻したなら、向き直る。

 「気にしないで。訓練に傷はつきものだから。私の、力のなさ、というのも、思い知ったもの。それに、この機会に、スフィアを使った治療も教えられる。」

 それでいて、彼女はさらに、次のことを教えてくる。

 それは、昨日俺とアビーに施した、スフィアを使った治癒の方法のようだ。

 傷つけられたこと、不快とか、負の感情はなく。

 むしろ、これ幸いとばかりに教えようとしてくれた。

 「分かった。お願いするよ。」

 教えてる、その真剣な眼差し。

 ならばと俺は、申し訳なさを隠し、同じように彼女に向き直り、構える。 

 「体を固くする必要はないわ。」

 「ああ。分かった。」

 固く構える必要はないと、マフィンに言われ。

 少し力を抜き、柔らかく、動けるようにする。

 「いい?これは初期に行う方法だけど、まず、スフィアを傷口まで持っていくこと。……直接持って行ってもいいけど、普通、宙に浮かせて持って行くことが多いわ。」

 マフィンは説明して、スフィアを一個、宙に浮かせて、傷口まで向かわせる。

 そこは、マフィンの閃光が掠めて傷つけられた頬で。

 スフィアが寄って来た際、変に緊張、固唾を呑んだ。

 「傷口を撫でるように、動かすの。優しくね。」

 言って、そっとマフィンは撫でる様に手を動かしたなら。

 俺の傷口に寄っていたスフィアが、淡く発光する。

 「?!」

 途端感じるこそばゆさに、俺は軽く目を瞑った。

 傷口付近に感じる、痛みの感触が、温感と共に心地よさに変わっていく。

 光が消えていったなら、変なこそばゆさも消え。

 そっと俺は傷口に触れたなら、そこに痛みはない。

 ……癒えた。

 「さっ。やってみなさい。」

 実演はした。今度は、俺の番だと手招きを。

 俺は、こっくりと頷いて。

 彼女に言われた通り、スフィアを彼女の頬に向けて動かす。

 「……。」

 マフィンは、慣れているはずだが、やはり他人が扱っているのが不安か。

 俺が差し向けたスフィアの姿に、緊張の顔をした。

 確証にごくりと、唾を飲み込む音も聞く。

 俺は、撫でるようにスフィアを動かしたなら、同じように淡い光が発される。

 光はして、頬の傷に照射され、傷口を焼くかのよう。

 「んぅっ!」

 「!」

 マフィンは変な声を上げる。痛みに疼いた声に近いが、もっと別の。

 色っぽさを感じるようにも捉えられ。

 その声に俺は、色っぽさ感じ頬を赤く染めてしまう。

 「ちょっと!変な顔しないでっ!」

 「うっ……。ごめん。」

 気付かれた。俺は、頭を下げ、謝る。もうその頃には、傷は完全に癒えたようで。

 言ったマフィンは、頬をさすり、傷の有無を確かめているようだ。

 少し恥ずかしさにか、頬を赤く染めていた。

 「ふぅ……。」

 だからか、払拭するためマフィンは一息ついて、整えて。

 元の、冷静な表情に戻ったなら、じっと俺を見据えて。

 「スフィアの使い方、分かった?……大丈夫、分からなかったら、また教えるから。」

 今日教えたことのまとめに入ってくる。 

 「!」

 俺もまた、赤くなった頬を戻し、口に指を当て、思考。

 「どうだろう……。」

 まとめ上げた言葉を呟いた。

 どうだろう。それは、実感のなさ。自信のなさ。

 当たり前だが、一度で上手くいくとは思っていないし、十分とも言えない。

 見抜いたか、マフィンは眉をピクンと跳ねさせた。

 「……まあ、今日が初めてだからね。分からないわね。今日のところはここまでにしておきましょう。後は、練習あるのみ。そうしたら、やがて、……。」

 「?」

 フォローを入れてくる。

 今日が本格的にやった初めてだから、分からないだろうと。

 しかし、最後言葉が濁される。俺は、首を傾げて。

 「ま、マフィン……?」

 「……ウィザード……。」

 「!」

 どうしたのだろう、聞いてみたなら、濁された言葉の先が。

 先の、ある言葉が耳に入る、〝ウィザード〟と。

 「そ、それは……。」

 「うにゃっ?!うぃ、うぃざーどって??」

 その言葉の意味、問おうて、同じタイミングで、耳を立て。

 アビーは同じようの単語に反応し、顔を覗かせた。 

 「!ごほん!な、何でもないわ。気にしないで。」

 聞かれていたとマフィンは、咳払い、また顔を赤くして、言葉を濁した。

 「とにかく。今日のところはここまで。後は練習あるのみよ。いいわね。」

 濁しに合わせ、覆いを掛けて締める。

 なら、これ以上追及しても、多分無理だろうと思い、俺は切り替える。

 「分かった。ありがとう。」 

 切り替えた後には、ご指導ご鞭撻を賜った礼を添えた。

 「……。」

 マフィンはそんな俺をじっと見る。追求しないか探っているかのようで。

 「!」

 見つめられてると俺は、視線を外した。

 マフィンは軽く頷いたなら、どうやら安心したようで。

 こちらも切り替えるつもりだ。

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