▲▲つ23っ! しゅぎょう!
何事もなく、過ぎた夜を経て、翌朝に。
朝の寝覚め、俺とアビーは、戸を叩く音で。
二人して、まるで姉弟のように一緒に伸びをしたなら揃って戸を開き。
「あ、おはよう、マフィンちゃん。」
「その、おはよう……。」
「……あ、あなたたち……。」
戸を叩いた人、それはマフィンで。
今日はいつもの服装にプラスして。
アビーと同じようなポシェットを腰に身に着けている。どこか行きそうな感じだ。
そのマフィンは、挨拶よりも先に、呆れ果て、頭を抱えた。
「?」
「?どうしたの、マフィンちゃん。」
二人して、シンクロするように首を傾げてしまう。
「……どうしたもこうしたも、あなたたち、何で下着のままなのよ……。」
「あ……ごめんね。さっきまで寝てた。」
「あっ……!」
その理由とは、下着姿のままであるということ。
指摘され、アビーはてへっと可愛らしく舌を出しウィンク。
自分の頭を軽く小突く。
俺は、気づいて赤面した。
「……アビーは元より、大和まで……。あなた、段々アビーに似てきてないかしら?……習慣、改めた方がいいわよ。」
「う……。き、気を付けます。」
呆れながら、改善要求される。俺は、頭を下げて、気を引き締めようとする。
人前に出る格好ではないので。
アビー共々一旦奥に引っ込んで、着替えてからの、テイク2。
「おはよう、マフィンちゃん!」
「おはよう、マフィン。」
「……ええ、おはよう、二人とも。」
ばっちりと今度は朝の挨拶を。
アビーはいつも通り、元気よく言っては。
両腕を上げて、よりその元気っぷりをアピールする。
気を引き締めた俺もまた、いつも通り、変り映えなく普通に頭を下げた。
マフィンは、呆れ顔もさることながら、挨拶を返す。
テイク2でOKをもらえたようで。
「さっ、約束だからね、来たわ。」
さて、本題と。昨日した約束だから。
マフィンは言い出してくる。
「そうだな。……で、俺に何か用がある、だったよな。で、用って何だい?」
それは俺に用があるということだったので、聞いてみた。
「そう。大和、あなたにスフィアの使い方を教えようと思ってね。」
「……それはまた、どうしてだ?」
「覚えておいて、損はないわ。スフィアを使えたら、これから先、より便利になるもの。」
「……はぁ。」
その要件、それは俺にスフィアの使い方を教える、とのことで。
俺は生返事を一つ、どういうことかはっきりしないでいた。
「ほら、行くわよ。アビーもどうせ一緒に来るでしょ?」
「……分かった。」
「うん!分かった。行く行く!」
そんな俺を横目に、マフィンは予定通りと、行動を。
アビーにも了解を取ったなら、アビーもその意志があるようで。
俺は、当初よりマフィンはこの予定のために訪ねたのだと思考し、頷いた。
バックパックを持ち、準備したなら、朝日が照る道を、俺たちは歩き出す。
向かった先は、マフィンの家の裏手、草原になっている台地の場所。
雰囲気としては、薬草を採りに行った場所と似ている。
アビーはピクニック気分か、スキップして、弾むように。
マフィンは、小さな溜息一つ、らしいと思っていて。
俺は、スフィアの使い方とは、どのようなことをするのか。
想像できないという表情でいた。
その台地に立ったなら、マフィンはスフィアを取り出して、光らせ宙に浮かべる。
いくつも浮かべたなら、その姿、星を従える者に思えて。
「さ、大和もやってみて。」
「?!あ、ああ……。」
見とれ、上の空だった俺は、マフィンに言われ我を取り戻し。
言われるがまま、自分のスフィアを取り出して、光らせる。
「……。」
ただ、ここで悩んでしまう。
どうやって、宙に浮かせたのだろうか?
「……ごめん、マフィン。宙にどうやって浮かせたっけ?」
戸惑いも相まって、俺はマフィンに謝り、首傾げ。
「簡単よ。そっと、羽を投げるように優しく投げてみて。もし、あなたを信じてくれているなら、スフィアは応えてくれるわ。」
「……分かった。」
説明してくれた。
頷き、羽をそっと投げるように。
スフィアを同じくらいの力で、投げようとしたなら。
「?!」
手の中のスフィアは、羽のように、自ら浮き上がる。
その重さ故、羽を飛ばすような力では普通浮かないはずのそれは、浮いた。
思わぬそれに、俺は目を丸くする。
「……えぇ……。」
マフィンもまた、自然と飛んだそれに、初心者とは思えないと驚いていた。
「その、……撫でるように動かしてみて。」
「……ああ。」
言われるがままに、俺はそっと、撫でるように動かしたなら。
宙に浮いた球は、撫でるように動く。
「……。」
マフィンはまた、驚きの表情のままで。考え込むように指を口に当て。
疑問に、眉を潜ませたなら、スフィアをして、光をより強く発させる。
光が収束し。
マフィンは手を前に出すと、収束した光が、手の前にまた収束しだす。
「……。」
目配せに、俺は頷き、同じようにしようとしたら。
俺のスフィアが勝手に前に出て、光を強く収束させ始めた。
《スフィアの接続を確認。リモートコントロール。パワーを送信します。》
「?!」
俺のスフィアを感知したか、バックパック内の盾が途端喋る。
背中からの声に、また目を丸くする。
背中から周囲に発せられた光が、一点のスフィアに収束した。
「……ちょっと。背中の盾置いたら?あなたの実力に見えないわ。」
「あ、……だよな。」
眉潜ませたマフィンは、指摘してきた。
盾のそれは、自分の実力じゃないでしょうと。
俺も頷き、バックパックを外し、置いた。
置いたが、盾からの収束は止まらない。
「ええと、アビー?」
「?」
「……ちょっと持っていて……。」
ならば、と、近くで自由にしていたアビーを呼び。
俺は自分の手に持っていたバックパックを手渡した。
「分かったぁー!」
元気のいい挨拶一つ、受け取ったなら。
俺の大事な物と知って、同じく大事そうに抱き締め、察して、距離を取る。
《スフィアを検索。……。確認。パワーを送信。》
「えぇ~……。」
それでも、盾は力の放出をやめない。
声が届いたら、やっぱり俺の方に向かって光を照射してくる。
「……どういう理屈か知らないけど、……止められない?」
俺を追尾してエネルギーを送信するようで。
気づいたマフィンは俺に止められないか言ってきた。
「……これで止まるか分からないが、やってみるか……。」
理屈が分かっていない以上、何か試してみないと、と。
俺は疑問と腑に落ちないことに、訝し気に首を傾げながら行動する。
そっと左手を差し出して、広げたなら。
「?!わわっ?!」
「……あ、あれ?」
アビーに渡したバックパックが、光を発しながら浮遊。
アビーを引きずりながら近寄ってきた。
思わぬそれに、俺とアビー、二人とも戸惑う。
バックパックが左手の前に来たなら。
《コマンドの入力をお願いします。》
中の盾が喋った。
「……一か八か、〝停止〟。」
指示か、言葉を求められたようで、俺は言ってみる。
《コマンド入力、確認。パワーサプライ停止。監視モードへ移行》
入力は受け付けられ、中の盾は光を発するのをやめた。
「?!わっ?!」
「あ……。」
途端に、宙に浮いていたアビーは、落下。
ただし、軽く宙に浮いていただけなので、それほどの高さではない。
そっと着地する。
「わぁっ?!……ととっ!」
アビーはまだ、突然のことに思考が追い付いていないようで。
「ええと、何だかごめん。」
「……。」
そんな彼女に謝った。だが、我を忘れているアビーから何の返事もない。
「おーい。」
近づいて、彼女の眼前で手を振ってみる。
「すっごーい!!」
「……。」
からの、ぱっと顔を明るくしての、いつものパターンだ。
「なにそれー!どうやったー?!」
「全然分からん!」
アビーに問われるものの、スフィアの使い方。
宙での動かし方を試したら、できただけだ。
分かったことだが、盾を呼び寄せるのにも、応用できるらしい。
「はぁ……。」
一方のマフィンは、アビーのそんな様子に呆れ気味で。
「……はいはい。アビーは離れる。ほら、大和、続き続き。」
気持ち整え、気を取り直すように、手を叩いて言って、アビーを離れさせ。
また、スフィアを宙に浮かべては、先と同じように光を収束させる。
「分かった。」
俺も続きだと、スフィアを起動させ、光を収束させる。
盾がパワーを送信した時とは違い、その発光は穏やかだ。
「……正直、本当に初心者かと思ってしまうわ。」
「はぁ……。」
そこまでの動きを見て、マフィンが一言。
俺は、実感が湧かないまま、生返事になる。
「スフィアを扱うに際して、宙に浮かせるまで苦労するものだけど、あなた、光を収束させるまで行けたわね、驚きだわ。」
「あ、うん……。」
「まあ、次の動作は、対象に光を照射すること。照射するところまで出来たら、応用すれば攻撃にも、防御にも転じれるから。あと、光照射による治療行為にも転じれるわ。見てて。」
「分かった。」
初心者はどうやら、宙に浮かせるまでがせいぜいで。
光の収束まで行くのは手馴れた者でないと、とのようで。
俺は相槌を打つと、マフィンは次の動作と。
宙に浮いたスフィアをして、動かし始める。
光を収束させたなら、押し出すように手を動かす。
スフィアではない、光の弾丸が発射された。
少し離れた地点の、芝に焦げ目を作る。
「これは、スフィアに光を収束させたなら、ボールか何かが目の前にあって、それを押すようにすれば出せるわ。やってみて。」
「……分かった、やってみる。」
簡単な説明をしてくれた。
やってみてと、マフィンの作った焦げ目を指さしている。
それは、ターゲットはそこだと、着弾させてみて、との暗黙の指示。
頷き、言われた通り、俺もやってみたら。
光弾が勢いよく発射、マフィンの指示した地点を、抉った。
「まあまあね。」
「……そう?」
コメントは普通。
まだまだ実感は湧かない、俺は首を傾げる。
「……コントロールもいいわね。それなら、次、防御とか、やってみましょうか。」
「……う、うん、分かった。」
マフィンは顎に指をあて、俺をじっくり見ながら。
考え、次に何ができるかと指示を出してきた。
合わせて俺も、頷く。
マフィンは手を広げ、体の前に突き出し。
今度は円を描くように動かしたなら。
スフィアは光を集めて、膜のように大きく円形に広げる。
……光の盾。俺は、それをそう形容する。
「……。」
マフィンに静かに頷いて、俺も同じようにしたなら、光の膜が同じく出現した。
「ふむふむ。……じゃ、実際に撃ち込んでみましょうか。」
「……。ああ。」
マフィンは俺が光の盾を展開したならば、感心し、頷き。
……気になる言葉を紡ぐ。最初俺は、何も考えずに頷いてしまう。
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