▲▲つ20っ! ふくなおそー

 「遠い昔、帝国が作った兵器なのよ、よくお婆さまが仰ってたわ。ただ、コストが掛り過ぎて、作られた数は物凄く少ないけれど。」

 「なるほど。」

 兵器という根拠、続くようで。頷いて聞き入る。

 「丁度、あの鉱山辺りも、昔戦場だったらしいわ。だから、あのような兵器が、ついさっきまで存在していたの。……スフィアは資源だったから、あそこを取られたままだと、こちらの生活にも響く。退治するために、多くの人たちが挑んだわ。けど、空しく、帰ってきた人たちはいなかったわ。」

 悲しくも言う。

 「……。」

 悲しそうな言い切りに、沈黙が。また、理解もする。

 だから、服がボロボロを咎めることもしない。

 「けど、それも今日終わった。あなたたちが、あれと対峙して帰ってきた、唯一の例なのよ。」

 「……だから、さっき服がボロボロであっても、咎めなかったんだ。」

 「そうよ。」

 少し明るさを取り戻して続くことに。

 俺は、だから、お咎めなしだったのかを聞くならば、頷いた。

 「それに。」

 「?」

 「素晴らしく思うわ。あの兵器を倒したこと、きっと、聞いたら村中が大喜びよ。」 

 「そう、……か。」

 締めは、称賛だった。俺は、複雑になり、言葉を詰まらせる。

 実感がないために、どう言えばいいのか。

 「……案外、アビーが言うように、〝ウィザード〟かもしれないわね……。」

 「?」

 傍ら、ぽつりとしたマフィンの呟きが。少しだけ気になる。

 「ええと、マフィン……?」 

 「……なぁに?」

 「何か言った?」

 「……何でもないわ、独り言よ。気にしないで、別にあなたやアビーを咎めることを言ったんじゃないわ。……まあ、アビーについては、色々と言いたくなることはあるけど、ここで言うことでもないし。」

 聞いてみたが、やんわりと断られる。

 「!マフィンちゃん、うぃざーどって言った?!」

 代わりに、後ろからアビーが聞いてくる。

 「気のせいよ。さあ、早く帰りましょう。」

 「え~……。」

 気のせいだと一蹴されたが、アビーは、少し意地悪そうな。

 いや、何か詮索しているような、疑っているような目で。

 ニヤニヤと笑みを浮かべていた。 


 そんな道中、進んだなら、もう村の出入り口まで着た。

 「ZZZ……ぬぉぁっ?!」

 「?!」

 レオおじさんの背中に負われた村長さんが、気付いて声を上げる。

 ……が、その前に寝息が聞こえていたため、どうやら、今まで寝ていたのだろう。

 大きなその声に、一瞬驚いたが、単なる寝息だったと自身を安心させる。

 また、この時器用だなと気付いた。

 負われていただけなく、寝ていて、それでも抱えたスフィアを落とさないとは。

 「ほれっ!そろそろ降ろさんかい。」

 「うぃ!ばっちゃん。」

 村長からの指示が飛び、レオおじさんは頷いて止まったなら。

 ゆっくり腰を下ろす。

 その背中から、ひょいと、年齢を感じさせないほど軽やかに村長さんは降りた。

 「やれやれ。年寄りには、山登りはきついからのぉ。レオや、いつもありがとうのぉ。」

 降りたなら、レオおじさんに向き直っては、礼を言う。

 一方のレオおじさんは、腰を叩きながら、安堵の息一つ。

 「ふぃ~。お褒めにあずかり、光栄ですっと。あ~たたたた。」

 腰に疲労があるのだろう、疲労感溢れる顔で、言ってはまた腰を叩いた。

 「いよっ!レオおじさん力持ちっ!元気いっぱい!」

 称賛の声がアビーから向けられる。拍手さえ、付け加えられ。

 耳にしたレオおじさんは、疲労感な顔をやめ、にぃっと笑い。

 両腕を上げ、力を加えて、力こぶを作って見せる。

 「おうよっ!俺は村一番の力持ちだっ!!何のこれしき、これぐらい楽なもんだっ!がははははは!!!」

 獅子が吠える様な感じで、笑い飛ばして見せた。

 その姿、頼もしく思え。

 「じゃ、今から買い物行くから、ついてきておくれよ!」 

 「!エルザおばさん!い、いつの間に……。」

 その頼もしさにかまけて。

 ひょっこりと道端から姿見せたエルザおばさんが一言頼み事。 

 いきなり現れたエルザおばさんに、俺は驚いて飛び退く。

 「これぐらい、あたしだってできるわよ。伊達に昔、狩人やっていたわけじゃないんだかんなっ!なはははは!すまんな、びっくりさせちまって。」

 「……は、はい……。いえ、大丈夫です……。」 

 俺の驚き様に、笑い飛ばして言ってきた。

 そんなものかと、俺は自分自身にして、落ち着かせる。

 「?!か、母ちゃん……?!ちょ……いきなり……!!!」

 当然、レオおじさんも驚いたようで。

 言葉がショックのあまり、たどたどしくなっていた。

 「いきなりもあるかい!いつもやってるだろっ!ほらほら!村一番の男の名が泣くよっ!子供たちにも自慢してんだろ!」

 「う……うぉおおおん!俺、今日鉱山まで行ってきたんだよぉ。勘弁してくれよぉ。」 

 尻込みしているレオおじさんに。

 エルザおばさんは、そのお尻を叩くかのように言葉を畳みかけてくる。

 女とて、獅子。

 凄み加えたか、流石の大男も。

 肝っ玉母ちゃんには敵わないようで、弱気に、目尻に涙さえ浮かべて。

 鉱山での疲労もあるだろう、だが……。

 「いつもの山登りだろうがっ!それとも、〝伝説の化け物〟でも退治したんかい?!」

 いかほどの疲労とて、慣れているだろうと言われたら、言い訳もできない様子。

 「!!」

 いや、エルザおばさんの言葉にピンと来たような顔をした。

 「そ、そうだよ。こ、鉱山に住む化け物、あのモンスターをさ、アビーや大和を救うがてら、倒したんだ!ど、どうだ?」

 閃きに弁解を告げて。

 ただ、今作った感じで、準備不足の感があり。 

 言葉たどたどしく、怪しまれるものでしかなく。 

 「えっ……。」

 傍らその言い訳に、俺は絶句して。

 「嘘つくなっ!どうせ、そんな化け物見たら、震え上がって何もできないくせして。あんた、嘘をつくのはヘタクソなんだからなっ!」

 案の定怪しまれ、嘘だと見抜かれてしまう。 

 「……すんません。嘘でした。」 

 地面に正座し、深々と頭を、地面に擦り付けるように下げる。

 土下座をしてみせた。

 「ふふん。そんなこったろうと思ったよ!別に叱りやしないさ。できないって分かってんだから、こっちは。あんたは、あたしがいないと何もできないからな、なははははっ!」

 嘘つかれても、いいや、もう最初から見抜いていたか。

 怒ることはない、呆れながらも、笑い飛ばして見せるエルザおばさん。

 大男は項垂れたままで。

 「……。」

 その豪快さに、傍らの俺はポカンとしたまま、見ていた。

 「さて、と。アビーちゃん、虎猫ちゃん、そういうわけで、あたしは旦那と一緒に買い物ってことで、ここでさよならさね。」

 そんな俺に、また、近くにいたアビーにも向き直ったなら。

 項垂れる大男に手を掛けながら、用事ができたと言ってくる。

 「!あ、その、今日はあ、ありがとうございます。ま、また明日……。」

 反応が遅れて、俺は呆然を残したままながら。

 頭を下げ、お礼と明日への挨拶を告げる。

 「エルザおばさん、またねー!レオおじさんありがとー。」

 アビーはいつもの調子で言ったなら、手を振った。

 「それじゃ、マフィンちゃん、ばっちゃん、またね。」

 マフィンと村長さんにも向いたなら、一言を。 

 「ええ。また、明日。」

 「うむっ!」

 マフィンは丁寧に、村長さんは強く頷いて見送った。

 「!!ちょ、か、母ちゃん?!お、俺の首根っこ掴んじゃ、やだ……っ!」

 見送られる先にいた、レオおじさんは、エルザおばさんに首根っこを捕まれ。

 引きずられるように動かされていく。

 嫌がるような言葉、呟いたが。

 「村一番の男が、女にリードされて泣き言言うんじゃないっ!さ、子供たちのために、行くよっ!」

 一蹴。引きずっていく。

 俺たちは、その様子、乱暴だが仲睦まじささえ感じる様子を、優しく見送った。

 遠くなる背中に、見えなくなるまで手を振って。

 「さぁ、帰るぞっ!」

 「!」

 村長さんの鶴の一声が、残された俺たちに響く。

 見たなら、村長さんの家がある小山を、杖で指し示した。

 気づいた俺とアビーも、帰路へと、アビーの家路へつこうとする。

 「あ、待って。」

 「?」

 だが、マフィンに止められる。

 向いたなら。

 「あなたたちは、服がボロボロだから、私の家にまず来てね、修繕してあげるから。」

 その目的を言ってきた。

 「……あ、そうだな……。」

 言われて、改めて自分の服を見たなら。

 先の戦闘で傷んだ箇所がいくらか見え、頷く。

 「えー。大丈夫だよ。飛び跳ねても、ほら、平気だし。」

 一方のアビーは、飛び跳ねても大丈夫と言って。

 飛び跳ねて自らの服の様子を見せてくれた。

 ……俺の服以上に傷んだそれは、激しく動いたら余計ボロボロになりそうな。

 「アビーは、なおのことよっ!」

 その傷み様から、マフィンはやや叱りつけるように言ってきた。

 「はーい。」

 言われたアビーは、素直に従うようで、間延びした返事をした。


 帰路へつくのをやめ、マフィンの、村長さんの家に赴く。

 着いたなら、ふと村長さんに視線を向けて思う。

 相当な年のはずに見えるが。

 町の出入り口からここまで、ほとんど休みなく踏破する様子、只者じゃないと。

 ……村での入り口の一件は、冗談なのかな?思えてしまう。

 息整える様子もなく、杖を掲げたら、主を迎え入れるように、戸が開く。

 また、空気と光を取り込むように、家中の戸や窓が開いた。

 家が生きているかのように錯覚するが、多分、村長さんの力だろう。

 「さ、どうぞ。」

 マフィンは臆することなく、手招きした。

 「え、えと、お、お邪魔します。」

 「お邪魔しまーす。」

 逆に俺は、村長さんの様子に驚いたままのため、声が少々上ずって挨拶を。

 方やアビーはしかし、マフィン同様臆した様子はなかった。

 「うむ。……マフィンや、わしは奥へ行く。あとは頼むぞえ。」

 先にいた村長さんはマフィンに言って、奥へ消えていった。

 「分かりました。」

 マフィンは頷き、村長さんを見送る。

 俺とアビーもまた、村長さんの後姿に、頭を下げて見送った。

 「さ、こっちよ。」

 完全に姿が見えなくなったなら、マフィンは手招きする。

 場所は、この前案内された居間だ。

 案内されたなら。

 「さて、服を脱いで。修繕するから。」

 「!」

 いきなり言われた。

 服を直すためとはいえ、案内されてすぐに言われたなら、ドキリとするよ。

 なお、その、いかがわしい。

 ちょっとエッチなことをするために言われたんじゃないと弁明しておく。

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