▲▲つ19っ! せいぶつへいきだったの?

 「ひっひっひ。さて、皆の衆、帰るぞえ。ここは家じゃないからの!」

 俺が仰け反ろうが、お構いなく、進み出ては、通路へ向かい、言ってくる。

 「!ばっちゃん、いいのかい?」

 先頭に立った村長さんに、レオおじさんが言葉を投げ掛ける。 

 「いいのじゃ。地と山の騒がしいことも、終わった。後は、そこの二人を連れて帰ればよい。」

 返答として、用はもうない、俺たちが帰ればいいだけ、とのこと。

 「ばっちゃんが言うなら、いいか。」

 レオおじさんは、納得してくれたようで。

 「あと、マフィンや。アビーと大和、治療しておやり。」

 「!分かりました。」

 ついでに、マフィンには別途指示が。

 治療行為のようで、言われたマフィンは、頷いて俺やアビーに近寄った。

 「ボロボロじゃない、二人とも。まあ、無事でよかったわ。それよりも、まずはその手ね。ケガしているじゃない、ほら、出しなさい。」

 「あ、ああ。」

 まずは俺からのようで。

 呆れながらも、心配そうに言われ、俺は両手を差し出した。

 今更ながら見るに、両手とも酷く爪が割れていて、所々出血もしていた。

 先ほど照らしてきたスフィアが、俺とアビーの元に集まってくる。

 マフィンは、指揮するように手を動かしたなら、見せた俺の両手に集わせていく。

 「少し痛むわ。我慢して。」

 「!あ、ああ。」

 治療を開始するためか、集ったスフィアは、光を発していく。

 あの、盾が出したようなレーザーを、小規模にして傷口に発射する。

 「いてっ!」

 「我慢しなさい、男の子でしょ。」

 「……。」

 軽く痛みが走るも、俺はマフィンに制されてしまう。

 だが痛みも、光が行き渡る内に消えていき。

 見れば、俺の爪は元通りになっていた。

 「!す、すごい。」 

 その様子に俺は、感嘆する。スフィアって、こんなこともできるんだな。

 「はい!終わり。次は、アビー。」

 あっさり言っては、ペチペチと手を叩いて、次はアビーに。

 「!そ、その、ありがとう。治療してくれて、……見つけてくれて……。」

 「!」

 アビーに視線を移した際に、気付いた俺は、お礼を言った。

 治療だけじゃない、見つけてくれたこと、助けてくれたこと、含めて。

 言ったならマフィンは、またこちらに視線を向ける。

 そっと、微笑んだなら。

 「いいのよ。トラブルも、慣れたものだから。何より、あなたたちは村の一員だもの、当然だわ。」

 含みなくそう言った。

 マフィンはアビーの治療に向かった。

 当然、俺と同じようにスフィアを集わせ、癒しの光を照射していく。

 「……。」

 その間、手持無沙汰。そっと誰か、目配せしたなら、レオおじさんに。

 「……えと、レオおじさん。」

 「おぅ!どうした?」

 言葉を始める。レオおじさんは応えた。

 「その、ありがとうございます。俺とアビー、見つけてくれて。」

 「おいおい!そんなこと聞きたいのか?当たり前だろ、お前さんもアビーも、俺の息子や娘のようなもんだ、助けてやるのが親ってやつだよ!がはははは!」

 何事かと聞き入ってくれたが、礼を告げたなら豪快に笑い飛ばす。

 そういう風に豪快に笑い飛ばされると、何だかこちらも笑いたくなってきた。

 「それに、大したことじゃない。山のパトロールとかは、俺の仕事のようなもんだ、お礼なんて、俺にはいいぞ。がはははっ!」

 「ははっ……。」

 続くことに、山のパトロールと。

 やっぱり、レオおじさんらしいや、俺はくすりと微笑んだ。

 傍ら。

 「はいはい、いつものいつもの。」

 「痛い痛い痛い痛い!マフィンちゃん優しく!!!」

 「……。」

 こちらを遮るように、治療中のアビーと、施術中のマフィンの会話が入ってきた。

 見たなら、痛みに涙するアビーの姿が。

 「ちょっと、いつもより酷いじゃない!何をしたらこんなことに……。」

 「うぅぅ!!痛いよぉ。う~……。それは、だって、出られないし、戦わなきゃいけないし……。出ようとしたら、壁になってるしで、頑張ったらこう。」

 「……まぁ、そうねぇ……。崩れた部分を破壊しようとしたら、まあそうなるわね……。分かった。」

 「……。」 

 どうやら思ったより酷いようで。

 マフィンはアビーから事情を聞いて、複雑そうに言い。

 頷いては治療を進めていった。

 俺は、思ったよりも酷かったことを知り、言葉を失っている。

 「はい!終わり終わり!いつもケガばっかりのアビーで、呆れるばかりだけど、今回は結構酷いわ。まあ、しばらく無茶しないこと。いいわね!」

 「うぅ~。分かりましたぁ……マフィンせんせー。」

 治療も終わったようで、また、無理もしないようにと釘差しが。

 アビーは項垂れ、トボトボと言った。

 「さっ!アビーと大和も見つかったし、帰りましょ!」

 マフィンは切り替えて、ここから帰ろうと宣言。

 「おーおー!それがええ!わしゃ疲れたわい。ほれ、レオ、おぶらんかい。」

 「?!ちょ、ばっちゃん?!いきなりっ……?!」

 宣言からすぐに、村長さんが一声乗る。

 どうやら、レオおじさんに乗っかるつもりであり。

 言われた本人は、目を見開き、驚く。

 「ほりゃぁ!わしをおぶらんかい!年寄りを歩かせるんじゃないぞ!」

 「えー?!あぎゃぁ?!」

 レオおじさん、心に抵抗あれど、叱責され、すぐに乗っかられてしまう。

 突然の衝撃に、レオおじさんは変な声を上げた。

 「つまらん声上げるな!!村一番の男じゃろうが!!」

 「ひぃぃ!!勘弁をぉ!!」

 「……。」

 変な声を上げたことさえ叱責。レオおじさんは涙目になって。

 俺は何もできず、ただポカンとしているだけで。

 一方的に、何だかやられて、不憫に思え。

 さらに、俺とアビーを助けに来たんだ、何か返そう!

 思考が決めたなら、俺はそっとレオおじさんに歩み寄っては。

 「レオおじさん、その、俺が負ぶっていきます!」 

 「!」

 そう言い、バックパックを下ろして自分の背を向ける。

 「なぁにいっちょ前の口をぉ。ぬしはまだまだじゃ。そういうのは、この獅子のように立派になってから言えいっ!」

 「がははっ!大和よ、気にすんな!俺はやりなれてる!だが、気持ち、ありがとうな!」

 「……え、あ、はい……。」

 だが、村長さんには未熟者と言われるものの。

 レオおじさんは気持ちだけでうれしいと笑って答えた。

 俺は、呆気に取られて頷いた。 

 「ほら、帰るわよ!」

 「!」

 やり取りを遮るマフィンの声、一斉に向けば、もう出口を指さしていた。

 俺は頷き、置いたバックパックに盾と。

 採取した原石を積み込み、マフィンに歩み寄る。

 後ろから、アビー、村長さんを背中に負ったレオおじさんが続いた。

 鉱山から外に出たなら、午後の陰りが見える。

 中に入ってから、結構時間が過ぎていたようで。

 その鉱山から帰りの道を、一同並んで歩んでいく。

 「ええと、マフィン、村長さん……。」

 「?」

 道中にて、俺が口を開く。先頭にいたマフィンは、振り返って、首を傾げた。

 「今日は、ありがとう。助けに来てくれて。」

 「……。」

 重ね重ねだが、またお礼を言う。

 聞いていたマフィンは、呆れ顔で溜息一つ、鼻から漏らして。

 「もう、何度目よ、それ。いいって言ってるじゃない。」

 「だが……!」

 「あなたたちを助けて、どころか、モンスターの持っていた巨大なスフィアや原石まで持って帰ってきているのよ、正直、お礼を言いたいくらいだわ、アビーにもね。」

 「ええと……。」

 何度、お礼を言うのよ、そんなマフィン、俺はいてもたってもいられなくて。

 言葉を続けようとするも、続けられることに、どうしていいか分からなくなった。

 思い返すと、今日持って帰ってきているのは、原石と、例の巨大なスフィア。

 価値がどれほどか分からない身のため、それがどれほどが想像できないが。

 こちらに礼を言いたくなるほどのもののようだ。

 「がははっ!真面目だなっ!気にすんな。俺からすりゃぁ、大漁だぜ!いっそ、村で宴会でも開くか?」

 「!」

 補完するように、レオおじさんが言ってくる。

 振り返ったなら、満面の笑みで、嬉しそうだ。

 「!宴会?!宴?!わーいっ!やったぁ!!」

 一番後ろにいたアビーが、レオおじさんの言葉を聞いて。

 顔を明るくして、今にもはしゃぎそうだ。

 「……気持ちは分かるけど、まずはそのボロボロになった服の修繕が先。その状態ではしゃいでみなさい。アビー、裸で踊る気?」

 言って、アビーと俺の服を指さした。

 「……確かに。」

 指摘されて気づく、自分の服。

 ドラゴンとの激戦に、アビーの服も自分の服も、すっかり傷んでいた。

 気づいたら、何だか申し訳なくなってくる。

 折角、俺のために作ってくれたのに、それを傷めてしまうなんて。

 「……えと、その、マフィン、ごめん。」

 たまらず、謝罪の言葉が漏れた。

 「!」

 マフィンは俺の一転した様子に、少しだけ驚いたようで。

 「……大和、あなたに至っては、お礼の次は謝罪ね……。ほんと、真面目な性格だこと。」

 だが、呆れて続ける。

 立ち止まって、体も振り返って、俺に指さしたなら。

 「いい?服ぐらい、いくらでも作れるし、直せるの。そりゃあ、アビーみたいにすぐボロボロにするのはどうかと思うけど、あなた、いいえ、今回の場合、何より命が助かったのよ。あなたたちが対峙したの、そういう存在よ。」

 説教じみた口調で、言ってきた。

 ややきつい言葉攻めに、臆してしまうが、案じている様子も伺えた。

 「!」

 同時に、ピンとも来る。

 「……ええと、俺とアビーが戦ったのって、どんな相手?」

 マフィンの続きそうな説教を、遮る形になるが、気になったことを口にする。

 「!」

 マフィンは、不快な顔をせず。

 むしろ説教を続けそうだった顔を一転し、意外そうに作り直した。

 「……一言で言えば、〝生物兵器〟かしら、特に大和、あなたの世界の言葉で表したならね。」

 「……〝生物兵器〟?」

 「そう。」

 紡ぎだすことに、どうやら、〝生物兵器〟のようで。

 また、説明に、俺の前世の時代の言葉で表してくれているようだ。

 ただ、俺の知っている生物兵器ってのは、ウィルスとかの類だが……。

 「……いまいちピンとこないな。どちらかというと、映画や漫画、ゲームの中に出てくるモンスターのようだったぞ。」

 有難いが、俺としてはこう、モンスターと単純に説明してくれた方が楽だ。

 言ってみた。

 「そう言った根拠はあるわ。」

 「へぇ。」 

 根拠がるようで。

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