▲▲つ18っ! いっそ、くらしちゃおうかなっ?だめ?

 「ど、ど、ど、どうしよー!!」

 「どうもこうも、全く分からん!」

 そうであってもアイデア出すために、俺とアビー二人、それぞれ別々に動き回る。

 加えて、アビーに至っては、そこらを走り回る始末。

 「!」

 と、何か閃いたか、アビーははたと動きを止める。

 「……。もしダメだったら……。」

 「……?」

 アイデアがあると、やけに冷静だ。

 俺は、聞き入るために動きを止め、期待の眼差し伴い、彼女を見つめた。

 さて、そのアイデアとは。

 「あたしの、全力全開で壁をぱっかーんしよう!」

 「……〝ぱっかーん〟?何だそりゃ。」

 よく分からない言葉を紡いだなら。

 スフィアの発光を強め、同時に自らにも気合を入れる。

 「!ま、まさか……。」

 気づいてはっとなる。

 さて、そのアイデア。

 それは想像だが、塞いでいる瓦礫やら、何やら、破壊しようとするものだろう。 

 「うにゃにゃにゃにゃにゃー!!」

 気合十分、アビーは拳に光を収束させる。

 拳による一撃を、塞がれた通路にて放った。

 想像通りであり、そうした先には。

 「うぎゃぁぁぁ!!!」

 激痛が返ってきたようで。アビーは手を押さえて、転がり回る。

 「……。」

 俺は、ダメだったかと肩を落とす。

 さて、次なるアイデアはないか、頭を巡らせる。

 そうしたら、アビーが止まり。

 起き上がったなら、アイデアが浮かんだ顔をこちらに向ける。

 「!」

 その顔に俺は、顔を上げ期待の眼差しを向けた。

 「いっそ、一緒にここで暮らしちゃおう!」

 「……がくっ!」

 期待は裏切られ、俺は肩を落とす。

 アビーに至っては、この状況においても、ポジティブだ。

 ……アビーらしいっちゃらしいが。激戦の後だというのに元気なものだ。

 「おいおい……。そりゃないぜ、もっとほら、壁を破壊する。とか、さ。」

 落胆なことに、俺はツッコミを入れる。

 「うぅ~。だってぇ。もう、これしか方法がないよぉ!」

 「うぅ~……。」

 アビーにはもう、打つ手がないようで。また、俺もない。

 同じように唸ってしまった。

 「!」 

 いや、俺には一つ手段がある。早速だが、実行に移した。

 両膝をつき、両手を合わせたなら、祈りの姿。

 ……何のアイデアも思いつかないなら、神様にでも、祈りましょう。

 「えぇ~……。お祈り?誰に?何に?」

 「……この状況を救ってくれる誰かに……。」

 意外なことに、アビーが期待していないようで。

 が、他に思いつくこともない。

 アビーもまた、俺と同じように跪き、祈りを捧げた。

 「!」

 祈り通じたか、通路側から音が、採掘するような音が聞こえてきた。

 つるはしの切っ先が、岩石に当たり、弾かれるか、砕かれるかに近い、金属音。

 衝撃か、振動か、伴ってこちらに伝わってきた。

 気づいた俺は、ぱっと顔を向け、立ち上がってその場所まで行く。

 向かったなら、そこは破壊された通路の入り口で。

 「ええいっ!まどろっこしいことせずに、いつものクソ力見せんかいっ!」

 「えぇっ~?!勘弁してくれよ、ばっちゃん……。」

 「?!」

 くぐもった感じはするが、どこか聞き覚えのある声が聞こえた。

 「……くそぅ、やるしかないか。岩が一旦溶けて、固まってやがらぁ。並大抵じゃ、びくともしねぇってやつか。……分かった。ぉぉぉぉぉおおおお!!!」

 「?!ちょ、ちょっと、無茶なことは……。慎重にしないと、向こうの二人まで被害が及ぶわ!!」

 考察からの、気合を入れているような声。

 加えて、俺たちを案ずる声も聞こえてくる。

 《警告!ロックオン!スフィア起動レベル上昇。》

 「?!こ、ここで?!」

 何か感じ取った盾は、俺に警告を伝えてくる。

 「がぉぉぉぉ!!!」

 「?!」

 それも束の間、獅子のような咆哮が轟く。

 《警告!回避!回避!》

 「うぉぉ?!」

 「!!う、うにゃぁ?!」

 咆哮が轟いたと同時に、盾は強い警告を告げた。

 俺は、反射的に飛び退き、また、アビーを掴んで退けた。

 地響き、唸り、衝撃。

 突き抜けたかと思うと、塞がれた通路から、光が差し込んできた。

 「アビー!大和ー!!」

 その光の先から、俺たちを呼ぶ声。さらに。

 「お願い、照らして。」

 投げ込まれていく、数多もの光る水晶玉、スフィア。

 地面に落ちる前に跳ね、空中で浮遊したなら、強い発光を。

 それら、俺とアビーのいる空間を強く照らし出した。それら、救いの光で。

 その救いの光ながら。

 しかし、俺とアビーは、一緒に抱き合っていて。

 呆気に取られながらも、互いに守ろうとしていた。

 「アビー!虎猫の子っ!」

 「アビー!大和!!」

 光に照らされる中、俺たちを呼ぶ声、光を遮る二人の影。

 そのシルエット、坑道内では不気味に思え、また、突然の登場に恐怖し。

 「うぉぉあああ!!た、食べないでぇ~!」

 「うにゃぁぁあ!!た、食べないでぇ~!」

 つい、変な言葉を二人、口にしてしまった。

 「……そのアホさ加減なら、大丈夫そうね……。」 

 影の一人、俺たちの様子を見て、少女が頭を抱えて呆れた。

 「!」

 「!!ま、マフィンちゃん!!」

 はっきりと聞き取れた声に、知り得る人物の名が浮かび。

 俺は気付き、アビーはさらに、その人物の名前を口にした。

 ……そうその一人は、マフィンだ。

 もう一人、大男のシルエット、それはつまり、レオおじさんだ!

 気付いたなら、俺とアビー二人とも、顔を合わせ、安堵する。

 「おぉおおお!アビーよ、虎猫の……っ!」

 「……レオおじさま、〝大和〟ですよ。」

 「おおぅ、そうだ。大和よ!無事だったか、がっはははははっ!!」

 その通りに、大きく、喜び伴い笑うレオおじさん。

 両腕を上げたなら、抱き締めるように俺たちを覆った。

 「?!」

 「わわぁ?!」

 軽く痛み感じるほどの強さで抱き締められ、アビー共々目を丸くした。

 「こりゃぁ!クソ力はしまわんかい!ここで二人を殺す気かい?!」

 「いてっ!……いいじゃねぇか、ばっちゃん。感動の再会によぉ。」

 レオおじさんの背後から出てきた、小さな影。

 言うなり持っていた杖でレオおじさんを叩いた。

 村長さんだ。

 俺とアビーに近づいたなら、何か話したげに見てくる。

 「これこれ!レオや、手を放しておやり。聞きたいことがあるのじゃ。」

 そのためには、開放されなくてはならないと、村長さんは言ってきた。

 「う……。分かった。」

 レオおじさんとて、村長さんには頭が上がらないようで。

 素直に受け入れて、俺とアビーを抱き締めた腕を離す。

 そうなったなら、近寄っては真っ直ぐ俺とアビーを見つめ直す。 

 「さて……。地と山が騒いでおっての。こうなるのは、久し振りじゃ。何があったか話してみぃ。」 

 「……ええと。」

 「えと、モンスターが出てきて……。襲われてぇ……、そしたら、大和ちゃんがスフィアや光を操って、うぃざーどで……。そうしたら、倒しちゃった。」

 「……。」

 事情説明に、俺は話をまとめようと思考したなら。

 一歩早くアビーが言ってしまうものの、たどたどしく、よく分からないでいた。

 「……アビー、それ、説明になってないわ……。」

 マフィンは、聞いていて分からないようで、呆れ、頭を押さえた。

 「あい分かった。じゃが、主はもう少し勉学に打ち込むように。」

 「うにゃぁ?!」

 「えぇ……。」

 ただし、村長さんは理解しており。

 そのことに俺は驚き、アビーは、説教加えられたと、ショック、項垂れた。

 「まずは、弔いじゃ。」

 「?」

 そんな俺とアビー尻目に、通り過ぎたなら、空間の奥へ、足を進める。

 見れば、そこは、灰の山があり、つまりは、例のモンスターの亡骸。

 俺たちより前に出る、先頭に立ったなら、持っている杖を高々と掲げ。

 祝詞か呪文か、あるいは経典の一説かのような言葉を紡ぎだす。

 何だろうかと見渡せば、マフィンは手を合わせている。

 「……。」

 それは、弔うための何か、祈りの言葉なのかもしれない。

 聞いていた俺も、手を合わせた。

 俺がそうしたなら、アビーも続いて、手を合わせた。

 すると、灰が舞い上がり、細かくなり、散り散りに消えていく。

 その際に、光に当てられ、キラキラと輝いた。

 仄かなスフィアの輝きと相まって。 

 高く昇っていくそれに俺は。

 魂の救済の光景と悟り、神々しささえ感じてしまった。

 どこからかの風が舞い、その灰と光を伴って、勢いよく外へと飛び出していく。

 風に合わせて舞い、天へと昇っていった。

 「!」

 その風の強さに思わず目を瞑ってしまう。

 風がやんだなら、ゆっくり目を開ける。

 そこに、灰の山はなく、代わりに、あのドラゴンの物だろう。

 スフィアが中央に鎮座していた。

 灰に埋もれたそれが、ここで露になった。

 そのスフィアは、ドラゴンのような荒々しさはなく。

 清らかに、静かに輝いている。

 「うむ!よきスフィアじゃ。」

 村長さんは歩み寄って、そっとそのスフィアを手に取ったなら。

 反応して、より強く輝いた。

 また、手に取ったことにより、大きさがよく分かるようになる。 

 俺の両手でも覆いきれないほどの大きさだった。

 「……さて。相当な手練れがやったと見れるが、マフィンや、誰だか分かるかえ?」

 そのスフィアを脇に抱えて、戻ってきたなら、マフィンに一声掛けてくる。

 「ここに、アビーと大和だけでしょ?だったら、大和ですね。」

 周囲を見渡し、少し考えたなら、迷いなくその答えを導き出す。

 「何故かぇ?」

 「えー?!悩まず即答?!」

 その根拠。ただし、アビーは不満そうに言ってきた。

 「だって、アビーはスフィアをこんなに扱えないもの。それに、私だってそこまで扱えるか自信ないですもの。だったら、大和以外考えられないわ。」

 「がびーん……!」

 「ひっひっひ……。なるほど。」 

 根拠はそれで。言われたアビーは、ショックのあまりまた、項垂れた。

 村長さんは、不気味に笑って、頷く。

 「!」

 笑った後で、ゆっくり俺に近づいては、じっと見つめて。

 「……わしの目に、狂いはないのぉ。ウィザードか、といえば、まだ未知数のようじゃが、〝器〟と言われれば、納得がいく。虎猫の子、大和や。精進するのじゃぞ。ひっひっひ……。」

 「?!は、はい……?!」

 不気味に笑い、俺に評価を下してきた。

 緊張と不気味さに、俺はぞっとして、軽く仰け反る。

 返答の声も上ずってしまい。

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