▲▲つ13っ! えるざおばさんにもあげる
圧倒されっぱなしだが、気を取り直して俺は、アビーと一緒に薬草探しだ。
草原にある草はただの草で、掻き分けながら進んだなら。
やがて、形も香りも違う草が目に付くようになる。
アビーがその一本に手を付けたなら、ひょいっと毟り取り。
まず匂いを嗅いでみる。
次に、葉を一枚ちぎっては、口に入れて咀嚼した。
「う~~~~~!苦い!」
涙目になりながらも、確かめているようで。ただ、苦そうな顔だ。
「ええと、大丈夫?」
俺は心配そうに聞いてみた。
「へーきへーき……。うん!この味は薬草っ!あ、ちなみに毒草だったら、舌が痺れて味も分からなくなるから。」
「あ、うん。分かった。」
苦みがまだ取れていないような顔をしながらも、丁寧に説明してくれた。
俺は頷く。
「!そうだ。」
また、薬草を大量に持っていくならと。
俺は自分のバックパックを差し出して、そこに入れることを閃いた。
「入れなよ。」
俺は言って、バックパックの口を開けて、差し出す。
中には例の盾があるが、スペースにはまだ余裕がある。
この空きスペースに入れれるだけ入れよう。
「!ありがとう!大和ちゃん、いいアイデア!」
素直に喜んでくれたようで。
薬草をある程度残して、バックパック満杯まで詰め込んだなら。
それを元のように背負う。
「?!」
重量が高まっていた!俺はバランスを崩してしまう。
が、寸での所で踏み留まった。
「どっせい!!」
気合一発、自らを奮起させて。
「!!すごいすごい!!大和ちゃん強ーい!流石、男の子だね!」
その様子を、褒めてくれる。
俺が倒れそうだったさっき、急いで駆けつけようとしてくれたが、一転して。
「でも……。」
また転じて、不安そうに。
「ここの山道、下りだから……。転がっちゃうかも。あたし、大和ちゃんを支えるよ!」
「!」
それからの、支えの手、いつもの屈託ない笑顔で言っては。
俺の背中に回り、そっとバックパックに両手を添える。
「これなら、下り坂でも大丈夫だよっ!」
「!ありがとう、アビー!」
後ろから声がする。振り返ったなら、言って笑顔を見せたアビー。
俺は、その頼もしさに心も体も軽くなった気がした。
「えへへー、電車ごっこ!出発しんこー!!」
「?!ま、また変なことを……。」
俺が先頭に立って移動する様子を、子供の遊びに例えて言う。
俺は突拍子もないそれに、言葉を詰まらせるが。
しかし、懐かしくも思い、もう紡がなくてもいいやと感じた。
「分かった。出発。」
合わせて言う、〝発車〟の合図。そうして、俺とアビーは山を下りて行った。
山道を引き返して、例の銭湯まで来たなら。
番台さんの傍の机に、薬草満載のバックパックを載せ、中身を取り出していく。
顔を覗かせた番台さん、女性の〝虎の人〟のようで。
虎を思わせる模様の髪に、鋭い瞳をしていた。
「あらー!アビーちゃんと虎猫ちゃん、ありがとう!助かったわ!」
「いえいえ!こっちも、いつもお世話になってるし!」
「俺も、昨日お世話になりましたので。」
番台さん、とても喜んでいるようで、満面の笑みだ。
お礼を述べ、さらに、俺とアビーの頭を撫でた。
俺とアビー、それぞれお互いさまと言い。
「そうだ!今日も入っていきなさいな。サービスしておくわよ!」
「え、いいのいいの?」
「!」
お礼として、今日も入っていきなさいと言われ。
アビーは子供のようにはしゃぎ、俺はいいのかなと、躊躇いが。
「いいわよ。薬草探し、それと、ここまでの道中、疲れたでしょ?」
その一言に、俺はあやかりますと頷いた。
確かに、道中決して楽じゃない。そんな肉体に、大浴場は心地よいだろう。
そうして今日は、お礼の湯を、俺とアビーはいただいた。
今回は例の薬湯は使わないでいた。普通に大浴場のお湯をいただき、上がる。
さっぱりした気分で、服に袖を通して、荷物を持って出たなら。
先に上がっていたアビーが、昨日と同じように牛乳瓶片手に、一気飲み。
俺も同じように、牛乳瓶片手に一気飲み。
「おーいしー!!」
アビーの歓喜の声と気持ちよさそうな笑顔、つられて俺も笑みを浮かべた。
お湯をいただいた後、帰路に就くものの。
その前に、とアビーが寄り道をしようと言い出した。
「?どうしたの?」
「うん。ちょっとね。レオおじさんのお家に寄ろうと思って!」
「へぇ。それはまた……。」
「ええとね、お礼!これを上げようと。」
聞いてみたなら、レオおじさんの家まで行くようで。
それもまた、お礼の品も片手に。
山にあった薬草で、俺のバックパックに入れた以外に。
アビーのスカートの、ポケットにも入れていた物らしく。
「なるほど。いいな。」
そのアイデアに俺は、頷き、一緒にレオおじさんの家に向かって歩き出す。
相変わらずの沢山の洗濯物が掛けられた庭で、相変わらずのエプロン姿。
更に、一息ついて、腰を伸ばしている、その後ろ姿に。
「エルザおばさん!」
アビーが声を掛けた。
エルザおばさんが振り返ったなら、意外そうな顔をして。
「おや、アビーちゃん!どうしたんだい?」
言ってきた。
「エルザおばさん、おにぎりありがとう!!」
振り返り言ってきたエルザおばさんへ、感謝の言葉をアビーが掛けたなら。
手にしていた薬草を差し出した。
「えと、俺の方からも、ありがとう。」
俺もお礼を言って、頭を下げる。
「!いいのかい?!この薬草、寅さん所の銭湯に持って行ったんじゃないのかい?」
「いいのいいの!銭湯さんには持って行ったから、これは、お裾分けっ!」
「あら、嬉しいねぇ~!」
それは、銭湯に持って行った物じゃないのか。
そう聞いてきたら、お裾分けとアビーが言う。
満面の笑みで喜び、エルザおばさんはアビーの頭を撫でだした。
「えへへっ!」
アビーは嬉しそうに笑う。
「ほら!あんたもこっちに来て!」
「!お、俺も?」
「当ったり前じゃないか!沢山運んだんだろ?ほれ、よしよし!」
「……。」
アビーだけじゃない、俺にも、とエルザおばさんは手招きする。
自分に指さして聞いたなら、当たり前だろうと、褒めるように言ってきた。
少し、恥ずかしいが俺は頭を差し出す。多少力が入っているが。
優しさも感じる撫で方で、俺は恥ずかしいやら何やらで、顔を赤くする。
「あ~あ。アビーちゃんや、ええとそっちの虎猫ちゃんみたいに、うちの子たちもいい子だったらなぁ。」
「えぇ~……。」
「え~!そんなことないよ!エルザさんの子たちも、皆いい子でしょ?」
そうしている中、自分たちの子供を思い、愚痴が出てきた。
俺は、どうコメントしていいやらで何も言えないが。
代わりに知っているアビーがフォローしてくれていた。
「あらっ!嬉しいわぁ~。ほんと、いい子だねぇ!うちの子なんて、暴れん坊やら、お転婆やらで、大変よ~。あ、いっそうちの子にならない?虎猫ちゃんとアビーちゃん合わせてさ。なぁに!今更一人二人増えたって、大して変わりゃしないよ!」
「え~!そんな、悪いよぉ~。」
「ええと、お気持ちだけで……。ははっ……。」
喜びのあまり、エルザおばさんは俺たち二人も子供にしようとさえ言い出した。
まあ、多分冗談だろう。
居候も悪いと思い、俺は気持ちだけ受け取ることにした。
アビーも、そんな感じで。
「なっははは!言葉の上手い子。敵わないわぁ~!」
エルザおばさんは、悪く思わず、豪快に笑い飛ばした。
笑い方が、何だかレオおじさんに似ている。
「うぉ~い!帰ったぞぉ~!」
「!」
何となく、心で噂したら、遠くから手を振ってくる人影が一つ。
例の大男で、レオおじさんだ。
「おっと!うちの旦那のお帰りだっ!と、いうことはもうその時間ね。そろそろ、夕飯の支度とかしないといけないねぇ。」
気づいたエルザおばさんは、気合を入れるようにエプロンの紐を締め直したら。
言って、レオおじさんお方に向き直る。
「じゃあ、あたしたちも帰ろっか。」
「ああ。」
気づいたアビーは、言って帰路の方に足を向ける。俺は頷いた。
「それじゃぁ!エルザおばさん、またね!!」
「それでは、失礼します。」
「!!そっかい!ああ、気を付けて帰りな!今日はありがとな!」
ならばと、踵を返す前に。
アビーはエルザおばさんに手を振って、別れの言葉を言った。
俺は、頭を下げて同じく言う。
振り返ったエルザおばさんは、同じように手を振って見送った。
家に着いたなら、アビーは大きく伸びをする。何だかんだで、疲れもあるようで。
そう言えば、と俺も疲労感がある。
いくら、銭湯に浸かってきたからと、疲労が完全に抜けているわけではない。
「何だか、眠たくなってきた。今日はここまでにして、もう寝よっか?」
「……。そうだな。」
気づいたなら、もう夕刻もとうに過ぎていた。
アビーは欠伸交じりの声で、言ってくる。俺も頷いた。
そっと、床に伏せて、天井を見つめたなら、急に瞼が重くなってくる。
「……お休み……や……まとちゃ……ん。」
「……ああ。お休み。」
同じく床に伏せたアビーが、眠りの挨拶をするものの。
途中から聞こえなくなってくる。どうやら、もう眠りについたようで。
俺も、静かに言っては、そのまま夢の世界へ。
その際、アビーがそっと俺の体に手を添える。
まるで、母親のように。伝わる温もりに、安心感を覚えて、眠りへ。
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