▲▲つ7っ! しゅぎょうぶそくー
「ふぅ……。」
マフィン〝先生〟は整えるように一息ついて。
スフィアのこと、文化の授業を終わらせる。俺は頷いた。
「次は何を聞きたい?まだ、アビーも帰ってこないみたいだし。」
「!それじゃあ……。」
初めての俺に、まだ疑問があるでしょうと見抜いてマフィンさんが聞いてくる。
俺は、これが最後の質問だと、バックパックの、〝盾〟を取り出して見せた。
「とりあえず、最後だけども、これについてだけど……。」
「……何これ……?!」
俺の大切な物が固まったそれ、変な機械みたいな物だけども。
何か分かるだろうかと、期待をしたが、開口は初めて聞いた、彼女の一言。
見たことのない物のようで。彼女は目を点にしていた。
そっと手を触れてみて、観察。全体を満遍なく調べたなら。
「!」
《システムブート。警戒フェイズ。》
「!!」
その盾の、スフィアと思しきものが輝き、無機質な音声で喋りだす。
このことに俺もマフィンさんも驚いた。
起動音か、妙な音も立てている。
振動もあることから、何だか動いているようではあるが。
「!これは……!」
何か気づいたマフィンさん、なぜかスフィアを取り出し。
発光させ、きっと見据えた。
緊張した様子から、何かこう、攻撃しそうな雰囲気で。つまりは、攻撃の構えだ。
《ロックオン確認。AWSドライブ。FCS並列。》
「!!おわぁ?!」
盾は思考する。
その上で、攻撃を受けると判断したそれは、あの時と同じように。
光を集積する板を出した。
光が収束し、輝きだす。俺は変な声を上げてしまった。
《ジャマー展開。》
「?!きゃぁあ!」
盾が防御用に、何かしたようで。
その時マフィンさんのスフィアが一瞬激しく発光したら、途端光を失う。
軽い衝撃か痛みがあったようで、彼女は叫んでしまう。
「!す、ストップストップ!」
嫌な予感がした。このまま続くと、何が起こるか分からない。
俺は停止のため、盾を触って言う。
《管理者権限により、停止。アラート解除。》
板が収納され、振動も停止する。止まってくれたようで。
「……ええと、すみません。」
俺は、ちょっと気まずく頭を下げた。
「……いいえ。こちらこそ、驚かせて……。」
マフィンさんは、自分のせいだと言って、俺を咎めやしない。
「……今のでちょっと分かったかも。もしかして〝マキナ〟かしら。」
「?〝マキナ〟?」
それ以上に、何か分かったようで、また気になる言葉を口にした。
俺は、反芻する。
「そう。主にヒトが扱う道具の一つで、スフィアを動力源に動く、機械の類、かしらね。」
「……ロボットか?」
動く機械にピンときた俺は、知っている単語を述べる。
「そうね。古くはそう呼ばれた物かも。今は、自立行動もできる機械で、私が知っている限りでは、戦闘兵器として扱われている、ということかしら。これは、小型だけども、大型になると、それこそ強力な武器を持って、地上を闊歩していたわ。まあ、主に帝国が扱うけど、共和も負けじと投入したりしていて、そうね、この海の向こうなんて、そんな巨大兵器が闊歩する世界だわ。」
「はぁ、それはまた、SFな……。」
解説への感想に、俺はついそんな未来のことを言う。
「さて、その盾の話は、どう?流石に何であるかは、残念ながら私じゃ分からない。ごめんなさいね。考古学者やあるいは研究者なら分かりそうなものでしょうけども……。」
「いえ、それだけでも、ありがたいです。」
マフィン〝先生〟の授業も終わり。
マフィンさんは、この盾については残念ながら分からないとのことで。
俺は、話を聞いてくれただけでもありがたく、お礼を述べる。
「さて、と。……まだ時間があるわね……。何か他に、ある?ないなら、これからアビーたちの様子でも見に行こうかなと思ったけど。」
次に、と。時間が余っている感じからか、何かないかと聞いてくる。
この村に初めて来たのだから、まだあるでしょうと。何より、色々言いたそうだ。
「……う~ん……。」
ちょっとだけ、悩んだ。
「!」
ピンとくるものを見つける。
さっき俺が、〝SF〟だの呟いたそれが気に掛かり、それを話題にしようと。
「そういえば、今は西暦何年ですか?やれマキナとか、スフィアとか、他色々なことがあったから、時代がよく分からなくて。俺の記憶にあるのが大体2010年代ぐらいだけど……。」
「?〝西暦〟?……聞いたことないわ。古いかも?」
「ふ、古い……かも?」
振ってみると、まずの回答は、〝古い〟かも、とのこと。
「多分、今のカレンダーでも載っていないから……。」
軽く悩んでいる。
「うーん、そうね、私たちビストの歴史は、知識や、また色んな人の観測から、おおよそ太陽の周りを3000回周った感じだから、それより前は……う~ん……。」
「!」
少し頭を巡らせて、マフィン〝先生〟が出した回答それは。
太陽の周りをおおよそ3000回周ったほど。
つまり、3000年以上ということだ。
ビストの歴史的に、だけど、断定じゃない。
「……。」
回答にはっとなり、また、口が止まる。
その時代の曖昧さに、言葉が思いつかない。未来なのか、別世界なのか……。
気持ちとしては、後者がいいんだけれども……。
「……ちょっとどうしたの?ショックでも受けた?」
俺の様子が気掛かりになり、マフィンさんは聞く。
「……ああ。」
辛うじて、その返事だけができた。
「……不思議ね、あなた。聞き覚えのない暦のことを聞いたりするし。……質問していいかしら?あなたの、記憶とかについて……。」
「!」
俺のそのことが気になって、マフィンさんは深堀してくるようで。
俺は、少し呼吸を整えて、自分のこの記憶について語りだそうとする。
「……笑わないでくれよ。俺が転生したことについて。」
「分かっているわ。話してみて。」
「ああ。……。」
前置きに、一言添える。
笑わないで聞いて欲しいと。
同意のための頷きを見たならば、俺は改めて語りだした。
……。
……。
「……。というわけなんだ。」
こうなった経緯も踏まえて俺は。
マフィンさんに自分の前歴といい、この世界に来たことといい、話してみた。
「なるほどね。まあ、いわゆる〝異世界〟への転生かもだけども、分からない。でもまあ、持論だけど、遠い遠い過去のような世界を異世界と称すなら、仮に遠い遠い未来も、そうでしょうよ。」
「かなぁ……。」
マフィンさんの持論が展開。
ちょっとだけ、〝異世界〟というものに期待しているものの。
残る曖昧の正体が分からないながらも、納得する。
「まあ、気を落とさないで。折角生まれ変わったんだから、この世界も楽しんでいきましょうよ。あの娘、アビーだったら、なおのことこう言うわ。」
そんな俺にフォローの一言、少し心配そうな顔をしながらも。
しかし、俺のことを少しは理解できたと満足そうだ。
「……ありがとう。そうだな。」
ちょっとだけ元気がでたかも。俺は、お礼を言って、この話を締め括る。
「さて、そろそろ迎えに行きましょうか。」
「うぎゃぁぁあ……!」
「……。全く、いいタイミングで……。」
話もこれほどに、ではアビーたちを手伝いにというタイミングで。
アビーの絶叫が響く。まるで待ってましたと言わんばかりだわ。
途端そう言わんばかりの呆れ顔になったマフィンさん、ぽつりと呟いた。
「……。」
何が起きたんだろうかと、俺は心配になる。
「気にしないで。多分ドジったんでしょうから。行きましょう?」
「あ、ああ。」
こういうことには、もう馴れっこだとマフィンさんは、そう言って俺を手招いた。
「……。」
外に出て、アビーたちの手伝いにと、アビーの絶叫が心配にと出たならば。
大きなハチに襲われているアビーの姿が見えた。
通り過ぎる一瞬で見たなら、スズメバチのようで。
「な、何が……。」
何が起きたのだろうかと、問うと。
「……全く呆れたもんじゃわい。スズメバチの巣を踏み抜きおったんじゃ。」
「?!」
いつの間にか俺の背後に現れた村長さんが、呆れ顔で解説してくれた。
俺は、その突然の動きに、目を丸くする。
ただ、解説がありがたく、状況が何となく理解できた。
地中にある、スズメバチの巣を、誤って踏んづけてしまったんだろう。
何だか、容易に想像できる。
「うわぁん!た、助けてっ!マフィンちゃん!!こ、怖いよぉ!!」
涙目で訴えてきた。
刺されたら一大事だろう、俺もまた、恐怖ながら立ち向かおうと前へ出た。
が、マフィンさんに手で制される。
「助けたい、その気持ち、大事だわ。けど、闇雲に向かっても、あなたも被害に遭うだけ。ここは、私に任せて。」
「!ま、マフィンさん!」
「マフィンでいいわ。色々と話を聞いて、あなたのこと、分かったから。もう、他人のように振舞うのは、やめましょう?」
何も、見捨てるためではなく、冷静に判断してのこと。
俺が闇雲に飛び出しても、被害が増えるだけだ。
また、俺にそっと顔を向けたなら、微笑んで、認めてくれることを言った。
認めたからこそ、自分の呼び名を親しくと述べて。
言った後、マフィンさん。
いいや、もう親しい。
マフィンは、スフィアを取り出しては、輝かせる。
「えいっ!」
スフィアを押し出すように動かしたなら、風と圧力が放たれる。
その風と圧は、集っていたスズメバチを吹き飛ばしていった。
「うぎゃぁああ!!!」
……ついでに、アビーも吹き飛ばしていった。
「あ……。ごめんなさい。」
マフィンがぽつりと謝ったなら。
「うにゃぁ!!」
地面に叩きつけられてしまう。しかし、頑丈なのか、すっと起き上がった。
顔から地面に叩きつけられたためか、若干鼻が赤くなってしまっている。
涙目になりながら、頭を少しぽりぽりと掻く。多分、思考しているのか。
「……むぅぅぅ!マフィンちゃんひっどーい!あたしを巻き込むなんて!!」
思考終了、からの怒り顔。
「……うっ。ご、ごめんなさい。ちょっと今回は、力が入り過ぎたかも。」
言われた本人は、申し訳なさそうな顔をしながら、アビーに頭を下げていた。
それで、やられた本人はまだ、不満そうで。まだ許してくれなさそうだ。
「ひっひっひ!!修行が足らんの!」
「うぅ~……。」
仲裁は村長さんが。言われた本人は、項垂れた。
「そうだよ!しゅぎょうぶそくー!」
追い打ちにアビーが指さしながら言ってきた。
「おぬしはなお足らん!」
「うにゃぁ!」
が、アビーが言えるわけでもなく。
体へのダメージは元より、心にダメージが与えられ、こちらも項垂れてしまう。
「あ~と……。ま、まあ、大したことなかったと、無事だったで、よし、としないか?」
俺は、そんな状況に掛ける、そんな言葉を。
少しは、慰めになるだろうか。
「……ふぅむ。おぬしは駆け出しだが、〝器〟であるやもせぬ。ひっひっひ、よく鍛えるのじゃぞ!」
「……は、はぁ……。」
その俺の言葉へのコメントは、何だか褒められているのか分からないもので。
言ったその後、家の奥へと消えていく。俺は、複雑な心境だ。
「あー!大和ちゃんいいなぁ!」
「ぐぬぬ……。悔しい……。」
傍ら聞いていた二人、何だか羨ましそうで。
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