act4 boy・meets・??? 

ARTアンリアルツール『グングニル』

北欧神話の主神オーディンの投槍、その再現武器。

1m程の、トネリコの柄にシャベルの様な黄金刃を付けた槍には神話由来の「投げれば必中」「迎撃不可」「持ち主の元へ返る」といった権能チートが備わっているが、それゆえ不殺戦法を取ることは難しい――


と思われるかもしれないが

だったら、投げなければ良い話。

そしてグングニルは魔剣グラムを叩き折ったことに起因きいんする「武器破壊」権能チートも持っていた。


――バギャンッッ!!


グングニルが振るわれ、粗悪な剣が容易く壊れる。


「クソがぁ!」

「これで、最後ッ!」


グングニルの柄を振るって、悪態をついた抵抗勢力レジスタンスの男を気絶させる。

そう、ツラヌイは拠点にいる敵の武器を破壊し回ってた。若干息が上がっている。


「制圧完了です。全員ぶん殴って気絶させました」

『おーおー、良い戦いっぷりよー?敵性反応ゼロ。ああでも最低限警戒はしといて、嫌な予感がするから』

「あ、はい…」

『照れるなよ、称賛は素直に受け取っておけ。さーて、気絶している奴らの回収は後続部隊に任せるとして、私達は『黒い波』の根源を特定しに行こう。追跡機械犬ハウンドドッグの反応が正しければココにあるはず』


抵抗勢力レジスタンスの仮拠点は、木と葉と布を組み合わせた複数のボロテントで構成されていた。テントの中には葉っぱを敷き詰めただけの寝床や水瓶みずがめ、剣や斧の他、用途のわからない穴の空いた鉄棒や黒い粉なんかがあった。粉は黒色火薬だろうか。


「なんですかねこれ。

神奥の夜明け団プロメテウス?」


テントにでかでかと飾っていた旗の文字を、目に搭載された翻訳機能が日本語に変換してくれる。


『組織名みたいねー。人類に火をもたらしたギリシャの神の名を冠するとは、いい趣味をしてる』


あらかたテントを捜索したが『黒い波』の根源らしきものが見つからなかった。

そうして諦めてテントから出てきたところで偶然、ツラヌイの目にあるものが映った。

何かがキラッと光ったのだ。


それはまるで危険な物を遠ざけるように、仮拠点から少し離れた森の中にあった。

木々をかき分けて森に進むとそれの全貌が見えてきた。


「……これは神社?さっき光ったのは神社の鏡か」

『けどシルエットがそれっぽいというだけーで建材や建て方はデタラメだね』

「何のために建てたんでしょう」

『ふうむ、多分『黒い波』の根源を抑え込むためでしょーね。あと、この神社モドキでおおよそ確定よ、根源の正体』

「神社で抑え込むってことは……」

『元々地球にいた神よ。異世界に逃げてきたんでしょう。黒い波が蛇ってことも考慮すると蛇神かな』


実は、様々な事情で地球に居られなくなった神は異世界へと転移していた事が最近明らかになっていた。神が近代になって姿を消したカラクリという訳である。

人に関わらない、人への恨みを晴らそうとするなどスタンスは個人、いや個神こじんによって様々だが、いずれも強大であることは確かだった。


「なんとかなりますかね」

『どの神なのかはわからないけど、死と再生の象徴として信仰されてきた蛇と殺し合うのはオススメしない。ここは下がって私にまか――


三鬼の言葉は最後まで続かなかった。

轟音を立てながら、神社モドキが手榴弾の如く四方八方へ吹き飛んだからだ。


そして土煙が舞う神社モドキの残骸から『何か』が

肉食獣でも眼の前にいるんじゃないかと錯覚するような強い圧を放つ『何か』が


いいや。少女が現れ、言った。



わたしとともだちになって」





ツラヌイは心の中で悪態をついた。

――おいおい待ってくれ。そいつは俺の苦手分野だ。

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