act3 道すがら

無事に『黒い波』を退しりぞけたツラヌイは北欧神話の神槍グングニルの展開を維持しつつ、三鬼みきと会話をする。


『――あービビった。やっぱ不測の事態って慣れないわー……』

「……初めての実戦は成功ってことで良いんですか?」

『残念ながらまだ終わってないんだなー。ヒント、私は朝なんて言ったっけ?』

「すいません。……反抗勢力レジスタンスの掃討でしたっけ」

『正解、さっきの黒い波は反抗勢力レジスタンスの一作戦でしかない。元から断たないとまーたやられる可能性がある。だから今から敵に反撃するよ』


そういう訳で、作業服の赤髪碧眼少年ツラヌイは追跡機械犬ハウンドドッグを連れて森を歩いていた。これを使って『黒い波』の臭いを辿たどり敵を叩く、という訳だった。

ちなみに、追跡機械犬ハウンドドッグの見た目は某犬型ペットロボットAIB○を大型犬並に巨大化させた物を想像してもらうと手っ取り早い。


「そういえば施設や村は無事でしたか?」

『問題なーし。村も採掘施設もアンドロイドも』

「それは良かったです」


追跡機械犬ハウンドドッグは勝手に追跡してくれるので、貫威はその後をついていくだけで良い。

時々、魔獣と呼ばれる異世界こっちの獣――今回はイノシシのような姿の魔獣だったが他にも色々いる――が現れたがグングニルの敵ではなく、ツラヌイは紙切れのように吹き飛ばしていた。

そうなると手持ち無沙汰なので三鬼と雑談を――もちろん最低限の注意を払いつつ――することにした。


「長距離歩くのって久しぶりです」

『間違ってもらくしようと追跡機械犬ハウンドドッグに乗るなよー。数百万するから壊すとマズイ』

「ヒエッ……。何でそんなモン使ってるんですか」

『しょうがないでしょー、異世界そっちに生き物は飛ばせないんだから』

「生き物を飛ばしたらどうなるんでしたっけ?」

『もれなく魂が吹き飛んで御臨終チーンだよ』

「あー、犬の魂もデータ化できれば良いんですけどねぇ」


話題が終わってしばしの沈黙。ツラヌイには辛い空気だったが、幸い三鬼が新たな話題を提供してくれた。


『あ……、今回の作戦について詳しく話してなかった』

「全部『グングニル』で吹き飛ばしますし、なんでも良い気がしますけど」

『よくねーよ、もう。おそらく今回潰すのは仮拠点、前線基地。敵の目と鼻の先に本拠地を置くやつはいない。なら本拠地は別の場所にある訳で、それを潰さないといけないのよ』

「あー……仮拠点から本拠地の情報を収集しろってことですか?」

『そうそう。まぁ別にステルスゲームみたいに潜入しろって話じゃないから。全員ぶっ倒して、その後ガサゴソ探せばいーのよ』

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