考えに考えて、そして閃きがその先にあるんです。 これが人事さんです。
「すごぃ。これは凄い!凄いです秋野さん!ここは天国です!」
彼は興奮気味に辺りを見回していた。
あの後。私は皆斗君にとある場所を紹介して貰った。そこは彼が同僚の誕生日にお菓子を買いに行く場所。
『デパ地下』
皆斗君がこの前買ってくれたイチゴのお菓子を思い出して来てみたところ、大当たりだった。
目の前には数々のガラスケース。
中には赤、黄色、青、黒、緑、オレンジ、紫………………。目移りしそうな素敵なお菓子が一杯並んでいた。
「これはなんというのですか?ビー……ルビーチョコ。そうなんですか。美味しいです!えぇっと、こっちは……。マンジュウ?中に入っているこれは………甘い!凄い。美味しいです。これはおいくら……十円!十円は安すぎませんか!?」
ヤルダンマさん、凄く楽しそう。私も結構圧倒されているから彼はもっとなんだろうな。
「秋野さん秋野さん!凄いです。ここはこの宇宙の宝物庫なのですか?」
両手一杯紙袋を抱えて戻って来た。ラスク、カステラ、クッキー、饅頭、チョコレート、お煎餅。
「一杯買いましたね。」
手先が動きづらいので持ちづらそうだ。
「はい。こんな鮮やかな場所初めてです。有り難う御座いました。」
アレ?なんか目的忘れていない?
違う違う。ヤルダンマさんの仕事探し!忘れていない。
「ヤルダンマさん。ここでは働けそうですか?」
単刀直入に訊いてみる。
ここに来た理由は二つ。先ずは彼に色鮮やかな場所を見て貰う事。
そしてもう一つはお菓子の販売員という仕事を見て貰い、可能であれば職として勧める事だった。
ここのお菓子がスーパーのと違う所。
それは個数。
お菓子一個当たりの大きさが大きく、細かいレジ打ちが要らない。ってこと。
大体の人は贈答用に一個か二個。多い時でも3つでそれ以上は滅多に無い筈。
だからレジ打ちが速い必要は無い、不器用でも大きな箱なら陳列が出来るんじゃないかな?と思ったんだけど。どうだろう?
「うーん………ダメかな?」
意外。どうして?
「さっき、お店の人に『贈り物ですか?』って訊かれたんだ。僕が『はい』って答えると、お店の人がお菓子を紙に包んであっという間に包装しちゃったんだ。僕の手じゃアレは出来ない。」
少し残念そう。そうだった!ここのお菓子は大きいけどプレゼント用のラッピングとかもしなくっちゃいけなかった!
盲点だった。
「ごめんなさい。僕もやってみたいとは思ったんだけど……この手袋がある限り、難しいのかな?」
顔に出てたのか、気まで使わせちゃった。
「いえ!こちらこそごめんなさい。」
気持ちを切り替えなくっちゃ!泣いてられない!
考えて!ヤルダンマさんの手でも出来る仕事を!
観光ガイドさん?手先は必要なさそう。
ダメ。だってヤルダンマさん。地球知らないじゃん!
ドライバーさん?手先は必要ないかな?
ダメ。いざというときカバーが外れたりしたら大事故になっちゃう!
テレフォンオペレーター?……………。
良いかな?手先は必要なさそうだし、ヤルダンマさん。人当たりとか良いし。
じゃぁ、テレフォンオペレーター、かな!?
「ヤルダンマさん。電話の応対は如何ですか?それなら手袋をしていても大丈夫だと思うんですが。」
「電話の応対……。悪くないね。僕話すのは好きだし。やってみよう。」
OK!良かった!早速オペレーターの仕事を紹介して貰って………。
端末に連絡をしようとして、身体が固まった。
なんでだろう?ヤルダンマさんは良いと言っている。手袋が有っても仕事は出来そう。
問題は無い。筈。なんでだろう。
『ごめんなさい。僕もやってみたいとは思ったんだけど……この手袋がある限り、難しいのかな?』
手袋がある限り難しい。これって、手袋が重荷になっているって事だよね?
じゃぁ、その重荷を背負わせたまま、出来ない訳じゃないからという理由で紹介して、結局彼は彼の性質を押し殺してこの地球で生きて行くんだろうか?
でも、この手じゃ難しいんでしょうねぇ。
手が簡単には動かせないんです。だから手を使った職業は難しいかな?と思ってるんです。
僕の手じゃアレは出来ない。
この手袋がある限り、難しいのかな?
そんなのイヤ。ヤルダンマさんにはそんな思いして欲しくない。
これはなんというのですか?ビー……ルビーチョコ。そうなんですか。美味しいです!
色んな色が有って、それぞれが個性的で、それで皆違ってだ。
秋野さん秋野さん!凄いです。ここはこの宇宙の宝物庫なのですか?
この時の笑顔。こんな風に何時でも過ごして貰いたい。
その為には、私はどうしたら、どうしよう?
この手じゃ難しい 秋野さん秋野さん 難しいのかな? 手を使った職業は難しい 宝物庫 出来ない この手袋がある限り ルビーチョコ 僕の手じゃ 色んな色が有って 綺麗……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。
!
「ヤルダンマさん、最後に、一か所だけ。お付き合いして貰って宜しいでしょうか?」
端末を操作して私はある人を呼んだ。
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