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 目が覚めた。また周りを見回すと普通の自分の部屋だった。ん?俺は一瞬おかしいと思い始めた。さっきの空間はなんだったのか。改めて時計を見てみると、まだアラームが鳴る30分前だった。そうか、あれは夢だったのか。しかしなぜあんな夢を見たのだろうか。自分に聞いても当然だが何も出てこない。昔の事でも思い出してしまったのかなと考えて、忘れようとしていた。その時に俺ははたと気が付いた。やけに今日は部屋が静かだなと思った。携帯で何があったか少し見直して小声で、

「そうか、昨日に紬が友達の家に泊まるって言っていたか。」

 と思い出して俺は冷蔵庫の中を確認しながら自分の朝食の準備を始めた。部屋の向こうの窓にふと振り返ってみると今日は曇っているなと外の天気を確認した。

「今日の天気は低気圧が上空にいるため終日曇りまたは所により雨になる場所もおおくなると思います。」

 テレビの天気予報でも曇りまたは雨ということだったので傘を持っていこうと考えていた。しかし次の瞬間に目玉焼きをフライパンからお皿に移そうとしたが、左手に持っていたお皿が滑ってしまい、バリンと大きな音を立ててお皿を落として割ってしまった。

「あー、やっちまった。」

 と急いで割ったお皿を処理する作業に入った。幸先悪いなと考えながらすぐに片づけて朝食を食べて、いつもより早めに事を済ませてから出勤した。外はもう雨が降っていた。



 会社の最寄りから歩いていた俺は、最寄りまでと同じように傘をさしていた。先ほどより雨足がひどくなったからだ。大通りの歩道を歩いていると雨だとわかった人たちが送迎、もしくは自分たちの職場まで車で行こうという人たちで道が渋滞していた。俺はこんな日でも車で行くのも良いとは思っているが歩いて傘をさすものも悪くないと個人的には思っていた。


 会社も後少しで到着という所で俺は何か異変に気付いた。急いでこちらに向かってくる人がいた。しかも何人という小規模でなく、数百人という単位でこちらに向かってきた。車に乗っていた人たちも車を降りて、人の事など関係なしに自分の命を最優先にして駅に向かって走っている。何があったのかわからないすぐるは向かってくる人たちの流れに逆らって会社の方へと向かった。そこで見たものは想像を絶するものだった。簡単に言うと辺りは一面炎と硝煙に包まれていた。ある車は考えられない方向に押し潰されている。また違う車はあるビルに突き刺さっている。またあるところでは人がたくさん倒れている。爆風かもしくは砲撃か何かに巻き込まれたと思われる。近くに行き救助をしたいが炎の勢いが激しく断念した。

「もう俺の知っているこの街ではないな・・・誰がこんなことを・・・」

 流石に俺も憤りを感じた。なぜこのような朝から炎や舞い上がる何かの欠片と煙を見なければならないのか。その瞬間に俺と反対方向から数百人はいるであろう緑の迷彩柄を身にまとい、手にはサブマシンガンからアサルトライフル、スナイパーライフルなどを様々な銃を装備している軍隊らしきものが歩いてきた。

「こちらセンター、A班、状況はどうだ、どうぞ。」

「こちらA、現在順調に進めております、どうぞ。」

「了解、引き続き進行してくれ。オーバー。」

 俺は見てはいけないものを見てしまったと一瞬にして思った。急いで自分の存在を消そうとしたが、すぐに軍隊の方に俺の存在が気付かれてしまった。右側の後方にいたアサルトライフルを持ったある青年が俺に向かって銃口を向けた。俺はとっさの判断で持っていたカバンで頭を防ぐとともに、ビル側に身を隠すように走って移動した。その瞬間に・・・戦車のようなもので砲撃されてボロボロになっていたビルの壁が一斉に崩れ始めてしまい、俺の頭から足のつま先まで全身にビルの壁に使用されていたコンクリートやガラスの破片などが落ちてきた。そして俺は生き埋め状態になってしまった。

「あいつ、生きていますかね?もし生きていたら今のうちにやっておかないと。」

「いいよ、そんなことしたって俺たちの名誉回復にはならない。今回の目的はこの任務を遂行することに意味があるからな。」

 何を・・・話しているんだ・・・。先ほどの青年とその上司らしき人が話していることだけはわかった。が、激痛が全身に襲い掛かり、立ち上がることもできない状態になった。そして意識が朦朧としている時にどこかから声が聞こえた。

「・・・だね。・・・くん。」

「お前は・・・だれ・・・だ・・・。」

「久しぶり、すぐるくん。僕だよ。・・・・3年ぶりだね。あ、もしかしてこうしてまたしっかりと話すのは15年ぶりかな?」

「わから、ない。なぜ、おれ・・を・・・。」

「それは、君が僕を必要としているからでしょ?今更言われてもねえ・・・。」

 この後すぐるは喋ることもできないまま意識を失ってしまった。


 1章:別れと再会 ―完―

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