第8話
「な……!!!?
なんで!!!?知ってる??」
その顏のままで言う。
信じられない表情と心なしか、両の瞳が微かに
涙ぐむように潤んでいる。
鴉天狗面の師匠は、頭を、伏し目がちに下げ、
「知っとるも、なにも……
それら映像は薫リスト共の間で、流通しておる。
銭やら、取引材料としてな。
新規映像を、UPした瞬間薫リストとしての格
も上がるしのう」
と、さも当然といった風に言う。
含み笑いが、癪に障る。
止めの。
「マジか!?
それ!!??観たい!!!!」
「観たがるんぢゃねー!!」
と、噛みついた。
「言っておくが、小天丸よ。
今や、薫リストたちの面子は、かなり……
奥深いぞ?
官庁・政財界はもちろん、警察・医療関係の、
上の方まで拡がり、最初は廣島だけだったの
が、今や………ワールドワイドじゃからのうw
薫リスト同志の繋がりで、トントン拍子に出世
廣島から散った同志が、その地で有望で有能な
薫リストを勧誘するからのうw」
…………。
「おれの知らねーとこで、ドンドン話をでかく
してんじゃねーよ!!!!」
烏天狗面の師匠が、また、含み笑みつつ、
「新規薫リスト初回特典で、どの薫リストより
も、先に魅せてやろう。
これだ」
「ほーぅ……。
これは、いいな。これだけ映えれば……」
安齋の顔付きが一変、真剣なものへと変わる。
その思案顔には、風格があった。一方、小天丸の
表情に、疑問と不可解さが浮かんだ。
「其の方、顔つきが、
ぷろふえっしょなる
じゃの」
一拍空き、安齋が烏天狗面の師匠を見た。
よほど、何か深く思案していたようだ。
「あ…!?
何か言ったか?
それよりも、あんた?」
安齋が、烏天狗面の師匠を軽く流し、小天丸
を見た。
「写真集、出さないか?」
「…………」
.
小天丸が、コーヒーカップを震える手で、口許
まで持っていき、躊躇なく一気に流しこみ、一息
つくとカップを静かにソーサーの上へと置いた。
「断る!!」
小天丸が、真っ向から安齋の申し出を断った。
安齋は、なぜかあっさりと引き下がった。
今は、食い下がる気はないようだ。
今は。
「まあ……?もう、出回っておるしのう」
音もなく、テーブルの上にハートカバーの装丁
な一冊の本が置かれた。
小天丸の目が、限界まで、見開かれた(汗)
表紙は、お人形さんのような無垢の無表情をして
いる。
小天丸似の美女が、殺風景な部屋の真ん中で、
ただ椅子に膝をそろえ、座っているものだが。
綺麗で清楚な薄化粧はしているものの存在する
だけで、映えるのだ。
「ちなみに…………
閲覧だけでも、それなりのモノがいる」
表紙を見た途端、安齋の顏が一変した。
顏を近づけ、食い入るように表紙を見ている。
「これは、誰が撮った!?
アマチュアだろうが……
この構図じゃ……
業界のしきたりが怖くて、ゴーが出ない。
たしかに、プライべートでのみ存在するもの
だろう。
だがな?
これには、愛がある」
途端に、烏天狗面の師匠と小天丸が安齋を
見た。
小天丸のジト目が、やけに印象深い。
リサが、何を思ったか突然席を立った。
トイレをチラリと見た。
「ちょっと……」
そう言って座っていたソファを離れ、ソファ
の後ろをまわり込みトイレへ、向かおうとした
時、烏天狗面の師匠が、
「携帯は、おいて行け」
と、言った。
ぞくり……
とする、凄みが含まれる。
「…………。
置いていくわけない!!!?でしょ!?
バッカぢゃないの!?」
「…………」
天狗面の師匠が、少し俯き、コーヒーをすする。
《意外に……面って、表情……ってか、感情出る
もんだな(汗)
万感、込もってんなあ》
安齋も、コーヒーをすすりつつ、そう思った。
リサが、バスルームの対面にある、トイレへと入る。
ドアを完全に閉めてから、鍵も掛けた。
これで、みんなには完全に判ることはないだろうと、
リサは、思った。
カーディガンのポッケから、スマホを出すと、
おもむろにトイレのドアを水を流しながら、空の
写メを送る。
仲間のとこに。
GPS情報を添付して。
《かっちゃん……》
携帯を、おいていけ
あの得体の知れない天狗にそう凄まれた時、
まるで、これからすることを見透かされたような
気がした。
ほんとに、得体が知れない。
あの、かっちゃんが、どこかから集めてきた
人でなし共のメンバーを、たやすく殺してしまった。
空メールを送ったが、返信も、音沙汰もない。
リサは、途方に暮れ始めた。
これ以上は、ここに篭れない。
不信がられる。
リサが、溜め息をついた。
途端に!?何かが背後から、覆い被さるように
リサを抱きすくめた。
怖い!!!?
言いようのない恐怖と不可解さが、リサを襲い、
声なき叫びをあげるしかない。
ジタバタしても、しっか!!と抱きすくめられ、
身動き一つ出来ない。
「小娘………。
小賢しい真似は、イカン。
ここは、オノレらごとき死に腐れは、1匹たり
とも通せん鉄壁の城よ、残念じゃったのう。
呀呀呀呀呀wwww
さて…………
ちょうど、人目もはばかれる個室にいそいそと
しけこんだし……
治療とお楽しみ♪♪
と、洒落こもうかのwwww
楽には……イカさぬぞ??
腐れ華よ」
天狗面の、低くいやらしくも甘い、声音が、
リサの耳朶に響く。
トイレのドアを徹して、廊下へと微かな物音が
漏れる。
それは、
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