第6話



 ビルの屋上から、躊躇なく飛び降り、地面へと

普通に着地した、小柄だが、すばしっこいそうな

若い男が、せせら笑いながら網を外した。




 生ゴミが、満タンに詰まっていた、ごみ入れの

ポリ容器が、粉々に砕けて中の生ゴミが、素敵な

臭いを放ち始めた。




「いっ!!

 いねー!!!?ja  」




 若い男は、全ていい終えることもなく……




 男の後ろから、にょっきりと、左手が伸びたか

と思うと、男の喉元が剥き出しになるよう、頭を

極められて、躊躇なく、喉が掻き切られた。




 排水口の詰まったような音とともに、黒い汁が

一瞬、前へと吹き出したあとに、湧き水のように

とめどもなく、黒い汁が切断面からあふれる。




「慎司!!!!


 くそ!!!!てめー!!!?」




 一斉に、通りから来た奴等が拳銃を乱射したが

慎司の身体が人の盾となりかなり痛々しい。

腕は肩口から、もげかかり、あばらは飛び出し、

腹からは、ちぎれた、はらわたの断片が、辺りに

撒かれていた。



 感情に任せ、闇蜘蛛に乱射するから、残弾が0

になったようだ。

三人とも。



 スライドが後退したままで、ホールドオープン

してしまい、発射不可の状態だ。

直ぐに、三人とも、マガジンをよどみなく、交換

する。訓練しているようだ。



 慎司の死体が、生々しい音をたて、地べたへと

崩れるように倒れたが、何故か遺体は形を保たず

黒い水溜まりに変わる。




「くそっ!!!!!!!!」



 どこからともなく……




    笑い声がする。




 反響しているような何かおかしい聞こえ方だ。

その笑い声にかすかな異音が交ざる。

二階のはね上げ窓が、黒く染まった。



 はね上がった窓の縁から、黒い汁が、したたり

落ちて、真下の地面や、壁に染みを残す。




「ああー!!ん!?

 くそ!!!?二階!!か!!!?」



 何かが二つ、上から落ちてきた。

屋上からだ。



ものすごく嫌な感じの音が、地面からした。

目を剥いた生首が二つ、降ってきたのだ。

皆が目にしたが早いか、生首は瞬く間に溶けて、

黒い水たまりに変わった。





「大輔……

 京摩…………


 うそだろ…………


 あの腐れ天狗野郎!!!?よくも!!」



 下にいる奴等が、しばしだが、黒い汁たまりに、

絶句したり、驚いたりしたが、すぐに屋上へと、

悔し紛れの威嚇発砲を開始。



上には、もう、誰も見えない。




「クソが!!!!!?

 近くの他の奴等も呼べ!!すぐだ!!!!


 リサ!?

 かっちゃんに、すぐメール入れろ」




 リサと呼ばれた、最初からいた女がバックから

スマホをホースハイドのカーコートを着た男へと

投げ渡した。

すでに、コールしていた。

スマホの画面には、





      かっちゃん





と、表示されている。



男の目が、ぎょ!!!?とし、すぐに耳に当てた。



[はい……]




 かっちゃんは、すぐに出た。




「か!!!?


 かっちゃん!!いきなり!?電話してわりぃ……

 兼田だけど。



 めんどくせーことに」



 電話していた男の口から、黒い汁が吹き出た。



 不動金縛りな状態の被害者っぽい男の顏へと、

黒い汁の飛沫が散ったが、どこからか、また顏を

撃たれた。




[おい……


 おい!!!?


 どうした!?兼田!!!!返事は!!]




スマホが耳から離れたからか、かっちゃんの少し

だけ、ガなる声がする。

兼田が、スマホを落とした。




「チクってんじゃねーよw

 かーねだくぅぅん!?

 あああーんん!!!?



 オメーはよ?はらわた、ぶちまけて、ね」



 兼田の、みぞおち辺りに、凄みのある白刃が、

分厚いホースハイドの革を突き破り、きっさきから一寸

くらい突き出ていた。

覗く刃と鋒が、ぐりぐりと動く。

内蔵を傷つけ、えぐり回している。


 兼田の、足元の地面に落ちたスマホが、突然、

破砕音ともに踏み砕かれた。



 一本足の高下駄だ。




 白刃が下を向き、一気に兼田の股下へ降りる。

鍔鳴りと共に、兼田の足元へ、湯気と、耐え難い

臭気を放つ内臓がぶちまけられた。




 高下駄が、今度は倒れ伏す被害者を壁まで蹴り

飛ばし、二発、撃ち込んだ。




 リサが、壁際でへたりこみ、水溜まりを作る。

湯気と、小便臭い臭気がが立ちのぼる。




『あやつ…………

 大丈夫かのう?


 そういえば…………(汗)

 すでにかなり!?撃ち込んだよなあ(汗)


 ワクチン?




 …………。

 ま、あの秘書が、何やらデータ?とやらを割と

切実に欲しがっておったようだし、良いか♪


         


 呀呀呀呀呀呀かかかかかか


 わしは、天狗じゃしの♪


 良い♪良い♪』




 散々、ワクチンなるモノを撃ち込んだ後で左様

に思う、鬼畜なる天狗面のモノだった(汗)




 内臓と血溜まりに倒れこむ男。

みぞおちから、股下へと、骨盤をも、斬り割られ

両足が間抜けな方向に曲がっている。




 倒れた拍子に、またしても被害者の男に、また

黒い汁が散った。


当然とばかり、バスバス♪また、撃ち込む天狗。




「痛てぇぞ!!!?おい!!!?

 大概にしろ!!


 この野郎!!!?」




 被害者の男が、ダメージ無視でよろよろと立ち

上がり、天狗面のモノへと食ってかかろうと歩み

寄る。




『意外に、根性あるのう。


 こやつ』


と、思い、面包の奥の眼が怪しく赤光を帯びると

被害者の男は、また動けなくなったようだ。

蹴ろうとしたらしく、左足が、半分上がっていた

が、途中で急に動きが固まり、反動で、あさって

の方へと飛び、盛大に転んだ。




 天狗面の左手が、




      つぃ……




と、横へ流すように微かと動かされたように見え

なくもなかったが。




「邪魔じゃ。

 そこで、すっこんでおれ。


 さて、残るは二つ」





 天狗面のモノと目を合わせた二人は、あまりの

不気味さに、怖じ気づいたか後退り、踵を返して

脱兎のごとく、表通りへと遁走し始めた。




 天狗面のモノが、二人に向けて、二回デコピン

を、空打ちした。

通り手前で、二人の首が、バネ仕掛けのように、

宙へと舞った。

首が飛んでも、走ろうとする二人の片足ずつに、

荒縄が絡まり、奥に引き戻され、天狗面のモノの

元へと、退きずり戻される。




天狗面のモノが、何やら面包の奥で、ブツブツ…と

呟き、



「喝!!!!」




と、一喝!!したが速いか、亡骸と黒い汁は全て

燃え尽きた。




「場所を移すか」




 天狗面のモノが、小さく呟いた。

天狗面のモノが、懐からスマホを出し、恐ろしい

ほどの速打ちで、メールを送信したようだ。



「おい、立て」




 天狗面のモノが、二人へと命じた。

被害者の男は、いたる所が痛そうに、リサは微妙

な所が気持ち悪そうに立ち上がる。



「場所を変える。

 もうじき、うぬの同胞も、ここを嗅ぎ付ける。

 が、その前に処理班が、ここを封鎖する」




 天狗面のモノが、二人の肩に手を置いた。




「多少、気持ち悪いだろうが、我慢しろ」



二人の視界が、突然、暗転し、



ぬるり……


と、筆舌に尽くし難い感覚の末に我に返ると……

どこかの室内へ、二人とも、一瞬で移っていた。




『どこ!?ここは』




 リサが、そう思った途端、目の前のドアが開き

全裸で、鴉の濡れ羽色の長いらしい、濡れ髪を、

バスタオルで、



ワシャワシャ♪



と拭きながら出てくる、うつむく見知らぬ男と、

出くわした。

まったく、隠す様子はないので、男性のシンボル

な、ジョイスティックはプラプラしていた(汗)



 胸も、男の発達した大胸筋だ。

 リサが、男の容姿に口元を押さえた。



 かなり、衝撃的であったようだ。




「ん?


 …………。


 ンが!!!!!?」




 男の顏に、朱が走る。


 途端に、ジョイスティックを隠す。




「よお♪小天丸。



 良い表情かおだのう♪

 三億点じゃ♪




 呀呀呀呀呀呀呀呀かかかかかかか♪」






ほんのしばらく後……




(当然のこと、とんでもなく師匠と弟子の間で、

 もめたのは内緒w)





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る