【3期目】ニヴルヘイム銀河の侵攻作戦
第160話 【重要】ニヴルヘイム銀河の存在が知られてしまいました
「な……んですって?」
大統領候補のアドリア・ヴァッレ・ダオスタはのけぞって驚いた。
その様子と、”第二銀河共和国”の存在はハッキリと惑星ゼウスのメディアから報道されることになった。
驚く様子のアドリア、そして第二銀河共和国の存在。
これらは首都惑星であるゼウスのメディアに掲載されると、次々に共和国領の惑星で報道された。
『この件についての対策はおありですかな?』
立体映像の中のノートン元帥は淡々とアドリア候補に問いかけていた。
『対策……』
さすがのアドリアも情報が全くない中では対策など咄嗟には出てこない。
『我々はすでに軍と協力して対策に着手しています。相手は銀河を超えてやってくる技術を持った強大な相手ですぞ』
『くっ……検討する……』
焦るアドリア陣営の様子も報道され、惑星ゼウスの選挙人は獲得、他の惑星でも一気にノートン元帥有利に傾いた。
その様子を見ながら涼井、ノートン元帥、サミュエル元帥は、ノートン陣営のオフィスで祝杯をあげていた。
「いや、ありがとう涼井君。本当に助かったよ」
ノートン元帥はグラスから琥珀色の液体をぐぃっと喉に流し込んでいた。
「いえいえ……」
「しかし見事な切り札だったね」
サミュエル元帥も今日はにこにこ顔だ。
ジャパニーズサラリーマンである涼井は、こういう討論的な場では、事前の根回しや、相手が予想しない奇襲的な新事実を明かすことで勝ってきた。一緒に働く相手ととらえると、あまり良い手ではないが今回は後者を使った。
「アドリア陣営はニヴルヘイム銀河の情報を収集しているらしいが……この情報は実際には開拓宙域と、帝国と共和国の一部しか知らない。アドリアはなかなかこの情報を手に入れられないだろうね」
サミュエル元帥もブランデー的な酒を飲んでいる。
「ところで実際対策はあるのかね?」
ノートン元帥が不安をにじませた。
涼井はくぃっと眼鏡の位置を直す。
「まず最初に戦場になるのは、ニヴルヘイム銀河に向かって突出している星団である開拓宙域か、あちら方面に広がっているロストフ連邦です。まずはそのあたりに戦力を集中し迎え撃ちます」
「ほう……」
「相手は長大な距離を超えてやってきます。それは確かに凄い技術力ですが……一方で異常に長大な兵站線を抱えることになります」
「ふむ……」
「こういう敵は局地戦の戦術的な勝利で撃退し得ます」
「……なるほど、確かに恒星間戦争でもよくある話だ」
涼井の脳裏にあったのは、この世界の歴史ではなく、地球の歴史だった。
例えば長躯日本海にやってきたバルチック艦隊、日本海の荒波を超えてやってきた元寇、などなどだ。バルチック艦隊は距離そのものが、元寇の場合は距離というよりは準備された大船の数の限界と季節的な問題がネックになった。
この世界に来る時に持ち込むことができたノートパソコンと、本などが役に立った。
戦術的な勝利で戦略的劣勢を取り返すのは確かに難しいが、一方でいかに相手が巨大でも遠方に送る戦力には限界がある。そしてその戦力が局地戦で潰されたときに、再度送ることが難しい場合は勝ち得る。
もちろんこちらの攻撃が相手に通用する前提だが……
「こちらでもできる範囲で研究は進めています。艦艇の武装の見直しなども行う予定です、さすがにこちらから相手の銀河に乗り込むのは不可能そうですが……」
「ふむ」
「我々にも何かできることがあればいつでも言ってほしい」
サミュエル元帥はそう漏らした。
「もちろんです」
涼井は頭を下げた。
もしノートン元帥が大統領になれば、少なくとも政治的な後ろ盾は完璧だ。
理想的な状況でニヴルヘイム銀河と戦うことができるだろう。
そんな中、涼井は統合幕僚長として共和国軍の再編成と、開拓宙域の艦隊の再編成を進めていた。前大統領オスカルとロストフ連邦の侵攻で軍組織はかなりズタズタになっていたこと、開拓宙域に廃棄待ち艦艇を横流ししたのもああって、いったんは個別の艦隊ごとに編成するしかなさそうだった。
とりあえずは戦力が充実した
統合幕僚長:スズハル元帥(涼井)
統合幕僚本部統括官:バーク少将
第1艦隊 17000隻 ルアック大将(兼宇宙艦隊総司令官)ゼウスなど中枢部
第2艦隊 17000隻 ササキ中将(昇進)アルテミスなど辺境宙域
第3艦隊 17000隻 ロジャー中将(昇進)カイロス・アフロディーテ宙域
第4艦隊 17000隻 オーズワース中将(昇進)遊撃艦隊
沿岸警備隊、予備隊など 17000隻 ファヒーダ中将
開拓宙域 総督 リシャール公爵 直轄艦隊 22000隻
開拓宙域 艦隊総司令官 ロアルド大将 直轄艦隊 30000隻
前衛艦隊 アリソン中将 17000隻
後衛艦隊 リアン中将(昇進)17000隻
そして帝国との協力によって迎え撃つ布陣だった。
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