Re:Re:【敵対的買収】ロストフ連邦本土侵攻作戦
旧共和国の首都惑星ゼウスに置かれたロストフ連邦臨時総督府に、スズハル提督一味がロストフ連邦本土に侵攻し、逆に首都を囲んだという情報が入ってきたのはそれからしばらく後のことだった。
本土から遠く離れ、開拓宙域も失った現在、ロストフ連邦本国との連絡はか細く、確実な情報が入りづらくなっていた。
臨時総督のバルカル大将は驚愕のあまり、朝食時の椅子からずり落ち、半熟卵が床に落ちて潰れた。
「これはとんでもないことになった……」
彼はあわてて執務室に戻り閉じこもった。
うろうろと歩き回りながら爪を噛む。
精神的に頼りにしているヴォストーク元帥は国境線の守備に出ているので不在だ。
そんな折、とある人物から映像入りで重力子通信が入っていると秘書官が告げた。
「こんな時に誰だ!」
「
バルカルの眉がぴくりとあがった。
「よし、繋いでみろ」
どこか憔悴してはいるが、目だけは奇妙にギラギラした男の姿が目の前に浮かび上がった。確かに前大統領のオスカルだ。
オスカルは金髪をかきあげ、口を開いた。
「どうもー、お初ですね、臨時総督閣下」
「……何の用だ? 国民を見捨てて逃亡していたと聞いたがどこにいるのだ?」
「いやぁ、お困りと聞きましてねぇ」オスカルは質問を1つ無視した。
「誰から聞いたのだ?」
「もしもボクだったらうまく交渉できると思いますよお、そのかわりうまくいったら……」
オスカルはスズハル一味との交渉役を申し出てきたのだった。
そのかわり成功報酬としてロストフ連邦への亡命と市民権、生活の保障を求めていた。
「考えてみよう」
「どうもー」
オスカルの映像は消えた。
バルカルは目まぐるしく頭を働かせた。
確かに現在、打つ手はない。
ロストフ連邦本国は首都惑星を囲まれている。
手元にはヴォストーク元帥率いる14個艦隊がある。
これはかなりの戦力だ。
スズハルと停戦し、スズハルは開拓宙域を支配する。
ロストフ連邦は旧来の領土を守る。
そしてバルカルは共和国全域を手にいれる。
そういう未来もあってはいいのではないか。
バルカル共和国の建設。
それはバルカルの欲を刺激するには十分な未来図だった。
――一方、涼井は開拓宙域のヘルメス・トレーディングの組織化を精力的に進めていた。
惑星ランバリヨンの開発は一通り目途がたったため、次は開拓宙域の辺境部にあたるヴァイツェン宙域の開発も進めていた。銀河商事そのものを子会社にしたことにより、銀河商事の搾取ビジネスは解散させ、特別損失として計上させた。
それによって開拓民たちは無茶なローンからは解放され、適正な利率のローンへの借り換えが進み、銀河商事が独占してきた流通も自由競争によって、少しづつ適正価格での取引が進むようになってきていた。
もちろんヘルメス・トレーディングは共和国の莫大な工作費が原資だったのだが、足元の経済が活性化することによってヘルメス・トレーディングの収益も伸びていた。
傭兵艦隊ヤドヴィガもマトラーリャと同じく希望者をヘルメス・トレーディング社の正規艦隊に組み込み、事実上解散とした。
一方でヘルメス・トレーディングは国ではなくあくまで民間企業の体裁でもあるため、治安維持はこれまで通り海賊たちが担うことになった。
「うーむ臨時総督府にもぐりこんだロブ中佐からの情報では、思ったよりもバルカル大将が消極的らしいな」
涼井は社長室の椅子に深く沈みこんでつぶやいた。
「ロストフ連邦の本国がどうなってもいいんですかねぇ?」と副官のリリヤ。
「あわてて出てくると思っていたが、案外そうかもしれないな」
涼井はリシャール公の艦隊でロストフ連邦本国を脅かし、共和国領土に駐留するロストフ連邦の艦隊主力を釣りだすつもりだった。しかしバルカルが消極的で動かない。
「動かす必要があるな」
「あっ忘れてましたが、そういえば前の大統領のオスカルさんからロストフ連邦のことで話し合いたいって通信が来てましたよ」
「オスカルから?」
涼井はひたいにしわを寄せた。
オスカルは今、何も持っていない状態だ。
何を交渉材料にするつもりなのか。
しかし。
「もしかすると使えるかもしれないな」
涼井はオスカルとの会談を承諾するようリリヤに指示した。そして同時にバークにある指示をくだすのだった。
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