Re:【敵対的買収】ロストフ連邦本土侵攻作戦

 イザベラ艦隊9000隻ほどと、ロストフ連邦の治安維持部隊である沿岸警備隊6000が合流し隊形を組みなおしていたちょうどその時、リシャール艦隊24000隻が猛然と襲い掛かってきた。


 もともとリシャール公は涼井が転移してくる前までは帝国の大部分をまとめあげ、共和国の脅威となっていた軍政両面に秀でた英雄的人物だ。その艦隊指揮能力は確かに優れていた。


 リシャール艦隊はまず巧妙な機動で8000隻と16000隻にわかれた。

 前衛となった8000隻はイザベラ艦隊とロストフ連邦沿岸警備隊の継ぎ目に踊り込んだ。当たるを幸い砲撃を開始し撃ちまくった。


 合流しつつあったところを分断されたため両部隊は混乱したようだった。

 すかさずリシャール公の指示で12000隻と4000隻に分離する。

 

 右翼となった4000隻はロストフ連邦沿岸警備隊に猛射を浴びせかけた。

 ロストフ連邦の沿岸警備隊は巡視船専用として建造された船ではなく旧式の軍艦で構成されていた。それなりの応戦を開始する。


 一方、リシャール艦隊の本隊12000隻が今度はイザベラ艦隊の右翼側に機動、攻撃を開始した。


「うむ! 事前の訓練が役に立った。細かい分割はどうかと思っていたがなかなか効果的だな」

「あ、ありがとうございます……」

 リシャールの傍でかしこまったのは作戦幕僚のマイルズだった。


 誇大妄想癖は入院中に改善したようだった。涼井からは色々な指導を受けたが細かな作戦やテクニックに偏ってはいるが、リシャールにないものを持っているようで、涼井は2人を組ませることにしたのだった。


 4000隻ほどのリシャール右翼艦隊が沿岸警備隊をけん制している間に、リシャール艦隊の本隊と継ぎ目に占位した前衛艦隊がうまくイザベラ艦隊を叩きのめした。


「こ、これではもうどうしようも……」

 イザベラ提督が指示に追われていた時、敵からの火力の密度が上昇していたために複数の質量弾がイザベラの旗艦をとらえた。機関部と艦橋に質量弾が直撃した旗艦は瞬間、ねじれ、そして爆散した。


 イザベラ提督を失った艦隊は指揮系統を回復する前にリシャールが変幻自在な機動を見せ混乱させ、見事にロストフ連邦の艦隊を撃滅した。主力を失ったロストフ連邦の艦艇は個別に降伏の合図を送り始めるのだった。


「よし、まずは一勝。次と交代するとしようか」

 リシャール艦隊は功にはやることなく、ヘルソン宙域の地上部隊の武装解除と降伏した敵艦艇の後始末をはじめた。


 ロストフ連邦の本土に残された機動部隊はわずか2個艦隊と沿岸警備隊であるとはいえ、惑星ごとの地上部隊や警備部隊にも注意を払う必要があった。制圧した宙域は武装解除を行い、開拓宙域からの兵站線を確立することはリシャール公、ロアルド提督、ニールセン提督それぞれの至上命令となっていたのだった。


 そうこうしているうちに1部を辺境に残したロアルド艦隊がのっそりと現れる。

 ロアルド艦隊はリシャール公の艦隊に対して「戦果に敬意を表する」と通信を送り、そのまま進撃を再開。


 ヘルソン宙域からさらに奥にあるルテニア宙域を難なく制圧し、ロストフ連邦首都惑星ロストフに駒を進めた。


 ロストフ連邦も12個ほどの惑星を持つそれなりに大きな中堅国家だ。

 それを全て制圧するには時間がかかる。

 涼井は方針として開拓宙域から最短のルートで兵站線を確保しながらロストフ連邦の首都を脅かすことを指示していた。


 もちろん機動艦隊が無ければ各惑星は単に孤立した存在になる。

 そのため大部分の惑星は無視することができるのだった。


 首都惑星ロストフに進んだロアルド艦隊の前に現れたのはドニプロ提督のヨー艦隊11000隻だった。

 ロストフ連邦の首都惑星は多数の攻撃型の軍事衛星が公転している要塞都市だ。

 ロストフ連邦自慢の歩兵部隊が軍事衛星、首都惑星の要塞に籠り、そちらに右翼側を預けるような形でドニプロ提督は堅実に布陣していた。


 一部の艦隊を兵站線の確保や惑星の制圧に残していたためロアルド提督の艦隊は24000隻。ロアルド提督は無理に攻撃をすることなく首都惑星ロストフに布陣して睨みをきかせるのだった。

 




 

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