Re:【MTG】銀河商事の提案
「ずいぶんと身勝手な提案ですわね」
リリザの発言にロンバルディアは黙り込んだ。
「……まさかここで皇帝本人を出してくるとはな、スズハルめ……」
ロンバルディアは怒りに満ちた表情で涼井を睨みつけた。
「交渉の流れ次第でしたがね」
涼井は指を組んで椅子に深く腰掛けた。ロンバルディアはしばし無言でリリザと涼井を交互に見る。額には青筋が立っていた。
「いずれにしても交渉は決裂ということだな」ロンバルディアはようやく言葉を絞り出した。
「帝国と共和国両方相手にするのは厳しいのではないかな?」
「……そう思っていられるのは今のうちだけだ、スズハル」
ロンバルディアは一方的に通信を打ち切った。
リリザと涼井だけが遠隔で繋がった状態となる。
「……まだ彼らにも隠し球がありそうね」リリザが遠い目をする。
「他の国にも声をかけていそうですね」
「共和国の苦境は聞いているわ。だけど……」
「大統領からの要請がないと動けない」
「そう、でないと侵略になってしまう」
「いずれにしても少し時間をください。我々もいまは開拓宙域で小規模な勢力を保ってるだけですから」
リリザはふっと笑った。
「
「もちろんです。ではまた」
——銀河商事の艦隊とロアルド艦隊がエール宙域で睨み合いになっている中、共和国ではさらに事態が動いていた。
先日のペルセポネ宙域ーポセイドン宙域間の会戦ではヴォストーク元帥がやや優勢のまま勝ち逃げをした形勢になっていた。
カン中将は行方不明のまま発見されておらず、ノートン元帥はサカイ艦隊とカン艦隊の生き残りを収容した。34000隻もいた艦隊は、カン艦隊の無理な後退によって損害が大きくなっており、かろうじて動かせる艦艇含めて21000隻にまで減っていた。
サカイ中将も敗戦後なだけにおとなしくノートン艦隊の指揮下に入ることに同意した。
これでノートン艦隊は完全編成の4個艦隊プラス21000隻となり、90000隻近い数に膨れ上がった。とはいえロストフ連邦は14個艦隊15万隻であり、集中されると難しい戦闘になるのは明らかだった。
ノートン元帥は引き続き帝国への救援の件や、廃棄待ちの艦艇の復帰を統合幕僚本部と大統領府両方に要請を送ったが、相変わらず返事はなかった。
連日会議、会議、会議で結論は全く出ていないらしい。
ただ治安組織として司法省の指揮下に入っていた沿岸警備隊を宇宙艦隊が使えるようになった。
それでもありがたいため、ノートン元帥は沿岸警備隊の船艇は共和国の偵察や警備のために各宙域に派遣した。
「こんな時にスズハル君がいればなぁ」これは彼の口癖になってしまっていた。
ノートン元帥は3個艦隊をペルセポネ宙域に残し、2.5個艦隊をアテナ宙域付近に配置した。念の為にロストフ連邦がさらなる増援を送ってきても対応できるようにしたためだ。
そして嫌な予感は的中するもので、ロストフ連邦に呼応する形でリマリ辺境伯が20000隻ほどの艦艇を国境に侵入させたのだった。
リマリ辺境伯はもともとはアルファ帝国の伯爵位にあった大貴族だが、いまは独立国家の1つとして数えられていた。リリザの戴冠式の際にも列席していたが、今回ロストフ連邦と何らかの密約をかわしたらしい。
ロストフ連邦とはかなり違う方面から侵入し、さっそくカイロス宙域の警備艇を蹴散らして居座りはじめた。
ノートン元帥は手当として、1個艦隊を信頼できるファヒーダ提督に任せて派遣した。いわゆる内線作戦としてまず全力で叩き潰す手もなくはないが、そうするとガラ空きの中枢部に攻め込まれる恐れもあったため、ほぼ牽制目的だった。
そして案の定ロストフ連邦も動いた。
ヴォストーク元帥を先頭に11個艦隊が同時にペルセポネ宙域に向かったらしい。
3個艦隊では焼け石に水にすぎないため、そちらを任せていたルアック大将には下がるように命令をした。
ノートン元帥としては、信頼できる提督が少なくなっており、肩を並べたことがあるのはルアック提督、ファヒーダ提督、新任のロジャー提督ぐらいになってしまっていた。
自ら残余の艦隊を率いて進撃し、ルアック提督と合流。
そこにロストフ連邦の艦隊が殺到した。
双方あわせて20万隻近い艦隊が激突するアレス宙域会戦の始まりであった。
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