第74話 【敵対的M&A】ロストフ連邦の侵攻

 ロストフ連邦の艦艇33000隻は悠々と隊形を組み換えながら侵攻をしていた。

 悠々と開拓宙域から辺境宙域に至り共和国の領域付近に到達。

 その前衛の中心部には無骨な形状の戦艦がいた。


 黒々とした装甲は反射材でコーティングされ星の光をわずかに照り返していた。

 甲虫のように見事な曲線で構成されたその艦体の形状は帝国や共和国の艦艇とも大きく異なっていた。


「フハハハハ! このまま進撃して惑星の1つや2つ取ってしまおうではないか!」

 この艦隊の指揮官であるヴォストーク元帥が哄笑する。でっぷりと太り恰幅の良い彼は黒を基調として白いデジタル迷彩の入った軍服に身を包んでいた。

 側には青白い顔の将官が控えている。

 ヴォストーク元帥は元アルファ帝国において私兵を持ったそれなりの貴族だった。権力闘争に敗れ開拓地に向かいそこでロストフ連邦の市民となったのだった。


 ロストフ連邦のヴォストーク艦隊……第2宇宙艦艇師団は共和国の領域付近で小規模な哨戒隊と遭遇し小競り合いを演じたが順調に進撃しハデス宙域付近に到達した。


 ハデス宙域は白色矮星が中心となっている。青白い光が空間を見たし薄く淡く広がっていた。

 オペレーターが声をあげる。

「重力感知! 敵艦隊です。その数……およそ2500!」

 ヴォストーク元帥が声を荒げる。

「このまま一気にあの艦隊を撃破して宙域を抑えてくれよう!」

「閣下、ご油断なさらぬよう」

「なんじゃい! ラッソール中将!」

 口を出したのは中将の階級をつけた青白い顔の男だった。彼はヴォストーク艦隊の参謀長だった。

「まぁいい! とりあえず進撃じゃ! 共和国も帝国も戦争が終わった直後で油断しとるはずなんじゃい」

 

 ヴォストーク艦隊は正面から突進した。

 重厚な艦艇群は次々に質量弾を投射する。

 ハデス宙域に薄く展開していたのはシュナイダー中将の第12艦隊、すなわち沿岸警備隊に所属する艦艇群だった。軽快で監視能力や逮捕の能力に優れ、軍用艦艇を改装したものも多数擁しているが全体的には装甲や砲撃能力には劣り、ロストフ連邦の質量弾に次々と撃破された。


 第12艦隊に所属する艦艇群はあわてたように散開し三方向に別れて逃走をはじめた。リアクト機関の青く光る光跡が宙域を満たした。


「よぉーし! どんどん行こう!」

 ヴォストーク元帥が叫ぶ。

「お待ちください閣下!」

「なんじゃい」

「これは罠かもしれませぬ」

「罠……?」

 元帥が眉をひそめる。

「血気にはやり追撃をするのは危険です。まずは体勢を整えるべきではありませんか」ラッソール中将が諌めた。

「ふむ……聞かないでもないがこう言う時は一気に追撃したほうが良いのじゃ」

「閣下!」

「我が方には幸い十分は兵站はあるしまだ辺境宙域に到達したばかりだ、戦はまだまだこれからではないか」

 元帥は笑って指揮を取り続けた。

 ラッソールはそっと艦橋を離れ内火艇の格納庫に向かった。

 彼はぶつぶつとつぶやく。「このままでは艦隊は全滅する……せめて我々だけでも後から閣下を救援できるようにしなければ」


 ヴォストーク元帥の艦隊の後衛をつとめていた8000隻ほどの艦艇がそっと陣形を組みながら本隊と距離をとりはじめたのはその数時間後だった。

 

 ヴォストーク元帥は当然それに気づいたが、勢いを殺さぬことを優先すべくハデス宙域を掃討し、次の目標となるヘラ宙域に向かった。

 

 後衛を指揮していたのはラッソール中将だった。

 本隊から離れそっとハデス宙域を確保するべく居住惑星に展開した。

 

 居住惑星にはロストフ連邦の空挺師団が降下し居住惑星を確保した。

 住民はあまりおらず抵抗はほとんどなくロストフ連邦の占領下となった。


 それから数日。

 ヴォストーク元帥とラッソール中将の艦隊に割り込むようにして共和国の52000隻の大艦隊が出現したのだった。

 

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