第6話【要確認】別件ですが添付資料をご確認ください
涼井の率いる共和国軍第9艦隊はリシャール侯爵を撃退した後、アトラス泊地へ向かっていた。
後で知ったのだが、共和国軍は12個の艦隊を有しており、それぞれ現実世界でいうところのオリュンポス12神の名前がついた戦艦を旗艦としていた。神話に共通性があるのかそのあたりはいまいちわからない。
ともあれ戦艦はそれぞれ12の都市国家を象徴していて、その都市国家も同じ名称だった。
現在帝国に占領され失われているのが辺境のアルテミス宙域、ハデス宙域、ヘラ宙域だ。
アルテミス宙域は帝国の中心部と接していて、ブラックホールなど危険な領域に囲まれた回廊でありさらに共和国にとっても思い入れのある宙域で会戦が頻発している。
しかし涼井はここは重要ではなくむしろ帝国にとっても共和国にとっても辺境にあたるハデス、ヘラのほうが重要だと考えていた。
ただ前回の会戦でかなりの弾薬やエネルギーを使ってしまっていたようなので補給をするためにアトラス泊地へ向かっているのだ。
涼井は艦橋の司令席に座りコーヒーをすすった。
ようやくリリヤが現実世界でいうところのパソコンらしきものを教えてくれたのでそれを使って色々と情報をみている。SF世界では距離とかあまり関係なく(光速とも!)通信や検索などがいくらでもできるようだった。そのかわり妨害に弱くお互い妨害電波を発している時は通信が極端に弱くなるようだ。
「はぁ……はぁ……提督素敵ですぅ」
涼井の首筋に寒気が走った。
無言でふりむくとリリヤがコーヒーのおかわりを持ってくねくねしていた。
「……帝国のデータを見ていたのだが、リシャール侯爵は帝国の家宰という役職なんだな」
「はい、まぁほとんどの権力握ってるみたいですね」
「ふむ……」
リシャール侯爵は会戦のデータ上は向かうところ敵なしだった。
ほとんどの会戦で勝利し、そのたびに共和国軍を撃破している。
その戦果でとんとん拍子に出世し、地方の田舎貴族が今や帝国皇帝の家臣最高峰、家宰だ。
ただ共和国も意外に善戦し、劣勢の割にはアルテミス宙域からの侵入はあまり許していない。
もちろんスズハル提督の活躍もあるのだが……
「ところでハデス、ヘラは帝国も占領後しばらく放置されているみたいだがこれもリシャール侯爵が獲ったのか?」
「ええと……それはぁ……」
リリヤが目をそらす。
「知らないんだな?」
「はい!」
「妙にハキハキ言うんじゃない」
見ていたらしいバーク……初老の首席幕僚が割って入る。
「それは帝国のカルヴァドス伯爵ですよ」
「ほう?」
「はぁはぁ提督のその感じに最高に萌えますね」
「帝国の貴族は私兵を持っているんですがカルヴァドス伯爵は辺境の顔役みたいなものみたいです」
「……いま会話にひとつ変なのが混じっていたな?」
バークは無視して続けた。ほんのり冷や汗をかいているようだ。
「どうも帝国にはリシャール侯爵と皇帝など中央政府派と伝統的な貴族による分権制を望む派閥に分かれているようでして。ただまぁ正直ハデス宙域もヘラ宙域も都市そのものは豊かではなく、遠回りすれば輸送もできますからここ数年放置されいるのです」
「……なるほど」
涼井は思った。
経済的には重要な地域を自らの私兵で奪い取り居座っているような人物。リシャール侯よりよほど強敵なのではないだろうか?
その時艦橋にブザーが鳴り響いた。
「敵発見! 敵発見!」
リラックスムードだった艦橋に一気に緊張が走る。
「距離60から80、帝国軍です……こ、これは……」
「どうした?」
涼井がうながす。
「カルヴァドス伯爵の艦隊です! その数3000!」
どうやら興味を持った相手からやってきたようだった。
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