草原から屋敷へ

 周囲の音に耳をそばだてる。


 『退いてやる』なんてセリフ。油断させて後ろから刺すためのハッタリ以外の用途で使える気がしない。




ここはどちらにしろ分が悪い。


サッサと森を抜けて嬢ちゃんの家に行かねぇと面倒だ。


一番マズイパターンとして、アイツが向こうで寝ていた奴等を起こして追撃を加えて来るパターンがある。


 リスクはあるが、逃げねぇと………。


 「おぃ。嬢さん。」


 顔がブルーハワイみてーになった後ろのアリシア嬢ちゃんに声を掛ける。


 「嬢ちゃん。おい……アリシアお嬢さん聞いてますか!?!?」


 耳元で爆音をかます。


 「!はぃ!」


 取り敢えず意識はあるみたいだ。


 「お前さんの家はどっちだ?さっきのが来る前にそこまで逃げ込みたいんだが……俺は解らん。道案内頼めるか?」


 「はぃ。解りました…………」


 顔色は相変わらずブルーハワイ。しかし、彼女は割としっかりと俺を道案内してくれた………………………。


















 20~30分歩いた所で俺達は屋敷に無事、辿り着いた。


 ゲームやイラストや漫画に出て来そうな、日本にはそうそう無いタイプの、大きな洋館がそこにはあった。


 敷地に入って建物のドアを開けると、そこには燕尾服を着こなす髭の爺さんが居た。


  「お嬢様‼如何されました!?」


  開口一番走って来る。


「この時期に何故戻ってこられたのです?しかも馬車も無く!どうなされたのです?」


 俺の事を露骨に警戒しつつお嬢様を引き寄せる。


 俺が何かオイタしたとでも思ってるんだろうか?


 面倒だな…………逃げよかな?


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