第15話 山の神

 建は、伊服岐(いぶき)の山(今の滋賀、岐阜県境にある伊吹山)の神を平定することになった。

 ふと、倭比売の顔が浮かんだ。建の身を案じ、草薙の太刀を授けてくれた叔母。一抹の不安が、建の心中にわいた。だが、それをかき消すように、建は声に出していった。

 「山の神など、素手でも倒してみせよう」

 だが、建たちが山頂付近にさしかかると、急に黒雲がわき上がり、雹が降りはじめた。雹は心なしか、建をめがけて落ちてくるように思われた。意志的であった。

 雹の嵐からやっと逃れたとき、建はすっかり力を失ってしまっていた。供の者たちは建を気遣い、床をつくり、建を休ませることにした。


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