第8話 海神の怒り
やがて、あざやかな朝陽が海を染めた。ここから船をつかい、海峡を渡って対岸へ出る。
だが、荒ぶる海の神は建たち一行を容赦はしなかった。船を漕ぎ出だすと、晴れていた空にすぐに真黒な雨雲が一面に広がり、激しい風と、やがて強い雨にみまわれることになった。
船はまったく操ることができなくなり、前後左右に揺さぶられた。高い波が何度もたたきつけた。海は空を反映し、真黒くとどろきながら、まさに今、船をのみこまんとしている。
建は弟橘比売をしっかりと抱きしめ、守っていたが、不意に比売はありたけの力で身をよじり、その腕から逃れた。建が驚いて比売の腕を再びとろうとすると、それを激しく打ち払い、比売は叫んだ。
「私が王子の身代わりに、海の神を鎮めてまいります」
そして、次の歌を詠み、瞬く間に波間へと消えてしまった。
さねさし 相模の小野に
燃ゆる火の
火中に立ちて 問ひし君はも
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