第6話 東の道

 東の道は、西の道よりもなお険しいものだった。単に道の平坦さの問題ではない。いかなる蛮族が潜んでいるやも知れぬのだ。

 気丈な弟橘比売は、一行に遅れることもなくついて行くのだった。

 やがて、尾張のクニにさしかかった。そこの族長は、早々に倭への服従を誓い、その証として、娘の美夜受比売を献上すると申し出た。

 美夜受は、いまだあどけなさを残す少女であった。

 白い肌、紅い唇が好もしく思われた。

 建は帰途必ず立ち寄ることを約束し、族長の差し出すたくさんの兵糧をもらい受け、さらに東方へと向かった。

 初めの危機は、相模において起こった。土地の国造は、倭建に訴えた。

 「ここには荒ぶる神々がおり、民草は大変に苦しんでおります。王子よ、どうか退治をしてくださいませ」

 倭建の一行がその枯草の原に入りこむと、土地の者たちはいっせいに四方から火をつけた。

 倭建は、叔母の倭比売より授かった草薙の太刀と、小さな袋を思い出し、袋を開いた。中には火打石が入っていた。

 建は最愛の妻、弟橘比売を気遣いながら、太刀を大いに振るって草を薙ぎ、さらに火打石にて迎え火を燃え上がらせ、ついにはその火をで反乱の民たちを焼き尽くしてしまった。


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