ピーーヒョロロロロロローーー……。

 トンビの高鳴く声が地上にまで響く。

 白明はレルとシャンメイをつれて昼食を食べに出かけているところだった。

 白明はサンドウィッチとコーラを買った。レルはコーラが飲めないのでオレンジジュース、シャンメイはサンドウィッチが食べられないので具の多いトマトスープを買った。

 三人はテラス席に移動した。白明とレルは道路を背にして並んで座った。白明は正面にシャンメイの車いすを移動させた。シャンメイは早々にスープを食べはじめた。

 白明は自分の席に戻る。

「食べよー、はくめい」

 レルが白明の服の袖をくいくい引いて言う。うん、と答えて白明が手を合わせると、レルも手を合わせた。ふたりはいただきますと言い食事をはじめた。


 少しして二人の正面、シャンメイの奥の席にひとりの小太りのビジネスマンが座った。トレイにサンドウィッチ三つと、大きなコップに入ったコーヒー、それとフルーツ盛り合わせの小皿をのせていた。

「いっぱい食べるんだね」

 とレルが白明の耳に囁いた。

「そうだね」

 白明は答える。

「僕もスイカとか食べたいな」

「ごめんね、今はあまりお金がないから」

「そうか、でも大丈夫だよ。我慢できる」

「ありがとう」

 ふたりは食事を続けた。

 ピーーヒョロロロロロローーー……。

 トンビの鳴き声。

 ビジネスマンの彼がふたつめのサンドウィッチを手に取り食べようとしたそのとき、けたたましい羽音がバザバザと聞こえると同時に、ここまで下りてきたとんびは彼の手に持ったサンドウィッチ、ではなく彼の髪の毛をつかみ飛び去って行った。彼に残ったのは禿げた頭だけだった。

 レルは白明の方をきょとんとした顔で見つめ、そしてついには破顔した。目を細めて頬を膨らまして静かに笑った。彼を見守る白明も、それでほほ笑んだ。

「そもそもかつらというものは古代から存在しており」……シャンメイが突然声をあげて説明を始めた。「それが一般化したのはノミや虱から逃れるため……」

 白明もレルもいそいそとサンドウィッチを食べ進めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る