第7話 水もしたたるいい女?
■ ぺろっ。この味は塩か!? ■
水属性の天魔との戦闘を終え、全身水浸しのままばーさんたちの迎えが一向に来ないことを訝しみ待つこと1時間が経過。
俺の家が本島にあるのことはご存知だと思うが、ここは本島から2キロメートル近く離れた場所に位置する浮遊島マグナカルタの群島の一つ。
村の住民は天魔との戦闘の影響でこの島の避難警報が発生され、村で一番強固で魔法の結界の類いが施されている教会に避難している。
戦闘終了から1時間近く経ち、村の避難警報は解かれ個人個人で被害の大小はあるだろうが現在では滞りなく毎日の日常の輪に戻っていた。
問題なのはこの島から本島へと向かう連絡船が出ていないことにある。
緊急事態に陥ったのだから仕事より人命が優先されるのは当たり前だ。
しかし、その影響でばーさんの連行で目を覚ますと天魔とバトっている俺は小型飛行船も天使の翼も浮遊術もゴリラ並みの脚力も持ち合わせていないので、一人で帰宅することができない。
だから、毎度ばーさんかじーさんかゴリラのいずれかが迎えに来ることになっているのだが……今日に限って何故か一向に姿を見せない。
これはあれか、見捨てられたか?確かに水属性の天魔と戦ったが水難事故に襲われたわけじゃないぞ!?カルネアデスの板か!?俺は切り捨てられたのか!?
それとも自力で帰れとおっしゃるか?
無理だぞこの野郎。
俺はばーさんみたいに浮遊術を扱える仙人のわけでもじーさんみたいに脚力で空中を蹴ることができる達人でもゴリラみたく筋肉だけで2、3キロを跳躍で行き来できる珍獣でもないただの人間だなんだぞ!!いい加減俺を人間扱いしてください!!
不味いぞ……。
連絡船の船長に頼み込んで無理矢理動かしてもらうことも普段ならできなくはないだろうが、戦闘終了から1時間以上経過して時刻は既に深夜を廻っている。
前代未聞も事態に極度の危機感と緊張で疲労が溜まって既に村の住民のほとんどが寝床についているだろうし、起きていたとしても災難は連鎖するのかティアマトが現界してから天候は荒れに荒れて豪雨と暴風と轟雷の怒涛の三連ちゃんで連絡船を出そうにも出せない状況だ。
よって、島の人に頼ることも不可能。
ばーさんたちの連絡船(仮)も今だ来る気配を見せない。
豪雨と暴風と轟雷によって、全身水浸しにされ強風で身動きと視界もままならず何故か俺を狙って度々落ちて来る落雷でSOSを呼ぶ前にもう既に本人が死にかけている今の状態じゃ苦笑いしか浮かばない。
仕方ないので今日中に本島に帰還することは諦めて最低限の寝泊まりの確保に方針を変えようと決意。
俺は直ちに持ち物をチェックし始める。
取り出した持ち物の中にはアブソーブ鍵、クレストボックス、エリクサーと見せかけたただろう水(駄天魔の奴らの仕業だろう)尻型オナホ(私物だ)、キャンディーの銀紙(今朝食べ奴だ)、昨日食べ残ったソウセイジ(謎だ)、請求書(これは後で焼却だ)、グレイの下着(……不思議だな)。
そして、文字通り身包み剥いだ姿、森の中で一人の男が全裸でいるのは色々と犯罪臭漂うが結果はこの通り下着以外は役に立たないものばかり。
詰んだかな……?
焚火で寒さを凌ごうにもこの悪天候じゃ即座に消化されのが目に見えている。
ならばと迷惑をかけるが村の人達に寝床を借りようかと思案する。
自分で言うのはあれだがこの島の危機を成り行きだが救ったのだから、民家一泊ぐらい報酬としてもらっても非難はされない筈だ。
思い立ったが吉日。
すぐさま行動に移し、村へ向かう(もちろん服を着て)。
村の住宅を一軒一軒回った。
こんな深夜に迷惑承知で「一泊泊めてください」と頼んでみたらどうだろう。
訪問した住民全員から面白い返答が返ってきた。
『おばーさんが傷だらけの男を家に入れるなって。そいつは世界中の島を渡り歩くの幼女とオナホの求道者で世界に一人だけ存在する幻の合法ロリを探し求めるただのロリコンの変態で娘が危ないからお断りします。てか、今すぐ出てけこのクズ虫野郎が!』
こ の ク ソ B B Aぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!
やっぱりお前のせいじゃねぇか!?
どこまで俺を苦しめれば気がすむんだよ!?
何だよ『幼女とオナホの求道者』って完全に性癖がやべぇ奴だろ!
俺を性犯罪者に仕立て上げるのやめてくれるかな!?ただでさえ、本島でもやれ『幼馴染フェチ』やら『バブバブ赤ちゃんプレイ志望者』やら『パンツを下から見上げたいだけの男』やら『男の娘を好きになるのはホモに分類されるのか?俺はちんちんついていてもOK派だけどできるならバック攻めがいいな』とかもう小説のタイトル一本いけるぐらい長いものまである。
誰だよこんな不称号を与えたの!?最後のはお前の願望だろうが!?
血の涙を流すが豪雨でそれも綺麗に流れ落ち、俺の魂の叫びも雷の轟音でかき消される始末。
SOSの救難信号の狼煙も書いた文字も水浸し。
助けてくれる人物が一人も存在せず、この島から犯罪者のレッテルを貼られた俺は一晩中、一人雨の水かどうかも分からない水分を目から吐き出すのだった。
けれど、その水は塩水で味があったのを憶えている。
その後、肉体的披露と精神的疲労で正に泥のように豪雨の中気絶する俺を迎えに来てくれる人は一人も現れなかった。
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