デミウルゴスと幼女と提案

「いやあ、まさか人間とこんなに楽しくお話が出来るとは思いませんでした」

デミウルゴスは喜んでいた。

「いえいえ、こちらこそデミウルゴス様とこんなに楽しいお話をさせて頂けるなんて、とても光栄です」

ツアレは心から出た言葉を伝え、照れていた。


それからもずっと悪魔と人間は、アインズ様の話で盛り上がっていた。


その頃セバスは、女の子を見ていて考え事をしていた。

(この女の子の親はどのような存在なのでしょうか?デミウルゴスが探して見つからないなんて・・・・もしかしたらこの街にはもうお母様はいないのでしょうか?いなかったら、私たちで引き取るべきでしょうか・・・)

___子供を引き取ることを考えていたら、ツアレの教育について考えが進む。

(・・・ツアレは人間だから、同じ人間がいた方がより安心でしょうし、これから人間と接する機会が増えたり、デミウルゴスが孤児などを実験で攫ってくるとすると、人間の育児も勉強させたいですね・・)


セバスはツアレの事となると、どんどん考えが膨らんで収拾がつかなくなった。


「なんだか楽しそうですね、セバス」とにやりとするデミウルゴス。

彼はアインズ様について人間と楽しく話していても、セバスをからかうタイミングは見逃さなかった。

「いや、楽しい話ではないのですよ。この女の子の親は一体誰なんだろうか?と考えてしまって・・・」

セバスにしては珍しくデミウルゴスにそのままの気持ちを伝えた。

そして、ツアレも心配そうな声でつぶやく。

「そうですよね。この子のこと心配ですよね・・・」



「そんなに二人共、この人間が心配なら、二人の子供として攫ってしまえば良いのでは?」

ごく普通に怖い提案をするデミウルゴス。


「いやいや!それは無理な提案です!この子は迷子です!」

ツアレはあまりにもおかしい提案だったので、デミウルゴスとはまるで対等な立場かのように語気を強めて反対をした。

セバスは無言でうんうんと頷いて、ツアレの考えに賛同したようだった。


「この女の子のお母さんを探すために、今!皆でご飯を食べているのではないのですか?そうですよね?セバス様?」

ツアレはこの提案に腹が立ったので、上司であるセバスに対しても、まるで対等な立場のように話す。

「ええそうですよ。この子の親を探すことが今のあなたに課せられた任務であることは間違いないですよ。ツアレ」

セバスは、ツアレから見た感じは怒っている様子には見えないが、落ち着いて答えた。


「そうですよね!デミウルゴス様の話と言えども許せません!」

と言うと、ツアレは目の前にあるお茶をグイっと飲み干した。

「私は絶対この女の子のお母さんを探し出します!!誰に何と言われようとも!!」

ツアレの目はまるで燃えているかのように気合で満ちていた。

このツアレの強気な対応をデミウルゴスの部下が見たら、きっと恐れおののくだろう。

デミウルゴスに反抗して殺される生物が沢山いる。

そういう点では、ツアレは幸運な人間であると言える。


ツアレがナザリックで働く仮メイドで本当に良かった。

そうじゃないと殺されていた可能性が高かった(セバスの後日談)



「さすが、ツアレですね。物事に一生懸命なことは良い事ですよ。素晴らしい心構えです」

セバスはツアレを自分の子供のように褒めた。




___とてもやる気の満ち溢れるツアレをよそにデミウルゴスは、怒ったり、気分を害するどころか、笑う事を我慢しているようだった。

「くくく、これだから人間を騙す事は面白いですね。まんまと私の話に引っかかるなんて・・・ああ愉快、愉快。笑いが止まりませんね」

手を自分の顔の前にかざして笑うデミウルゴス。


「・・え?デミウルゴス様??な、何が面白いのでしょうか?私は何か面白い事を申しましたでしょうか?」

笑うデミウルゴスを見て、きょとんとするツアレ。


「分からないのですか?貴方は?まあ下等生物の貴方には分からないでしょうから教えて差し上げましょう」

眼鏡をクイっと上げて自慢げに語るデミウルゴス。

「お願いします。」

ツアレはぺこっとお辞儀をした。


「先ほどの話は、嘘ですよ。ただ貴方を騙したらどのような反応をするか見たかったというのと、セバスも一緒にからかいたかったのです。さすがにセバスは引っかかりませんでしたが・・・」

ちらっとセバスを一瞥すると、溜息をついた。


「ええええええ!そうだったんですか・・私はてっきりデミウルゴス様は女の子を誘拐する事を勧めてきたのかと思いました・・・・」

騙されたのかとやっと気づき、ガクッと肩を落としうなだれるツアレ。

「セバス様は最初からご存じだったのですか・・・?」

下から視線をセバスに向けて、ツアレが残念そうに尋ねた。

「もちろんこの事には気づいていましたが、ツアレのやる気に満ちている様子を見ているのが楽しいあまり黙っていました。ごめんなさいツアレ。素敵でしたよ」

いつもの素敵な微笑みでツアレのハートを瞬殺したセバス。


「うっ、その微笑みは止めてくださいっっっ!照」

顔が少し赤くなるツアレ。

(セバス様ときたら、ここぞというお願いごとの時はいつもあの笑顔だ!次はあの笑顔に負けないようにしなきゃ!)



何だか平和な悪魔と人間達なのでした。

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