デミウルゴスと幼女と馬車
セバスはツアレの肩に手を置いて話す。
「実は、デミウルゴスがツアレの力をお借りしたいそうです」
それを聞いたツアレは事情がうまく呑み込めず、ただ驚くばかりだった。
「え?ええええ!あ、あのデミウルゴス様がですか!?ただの人間である私の力を借りたいと?・・・え?・・セバス様、私は一体何をお手伝いすればよろしいのでしょうか???」
ツアレはとても驚いた後に、デミウルゴスが悪魔だと思い出して怖くなった。
___また昔のようなひどい事を手伝わされるのか?
いや、セバス様がいる限りそれは無いはずだし・・・
それとも実験体にされる??
でもアインズ様が保護するって言ってたし・・・
悪魔が人間の力を借りたいって・・・どうして???
ツアレは一瞬のうちにあれやこれやと考えてしまったが、その事態もセバスは予測していたらしく、すぐに説明を始めてくれた。
「ツアレ、今回のデミウルゴスからのお願いは、ある人間と街でお話をしてほしいそうです。もちろん私も付いていきますので安心してください」
とりあえずセバスが付いてきてくれるならと、戸惑いつつもツアレは了承した。
「人間と話す仕事ですか?うまく出来るでしょうか・・しばらく人間とは話していないですが、セバス様がいるのであれば・・・頑張ります!」
頑張るツアレを見たセバスは、ペストーニャに伝言を頼む。
「ペストーニャ大変申し訳ありませんが料理長に、急用の為ツアレを借りていきます。とお伝えして頂けませんか?」
「承知しましたワン!料理長も今回は急用の会議でいなくなってしまったから、大丈夫だと思うワン!」
ペストーニャはセバスとツアレを見て話す。
_____セバスとツアレは馬車に揺られながら、馬車内でこれからの仕事の打ち合わせをしていた。
何故二人は、馬車での移動かというと・・・・
当初セバスは、ゲートを使用して移動することも考えたのだが、ツアレの心の準備も必要だと考え、ゆっくり移動できる馬車を選んだのだ。
セバスは直属の上司として、凛とした姿勢でツアレに尋ねる。
「ツアレ、今回話す相手はどういう人間かというと、まだ幼い女の子です。迷子である為、その子のお母さんを探すための情報が欲しいそうです。出来ますか?」
「小さい子と話すのは久しぶりですが、昔、妹とよく遊んでいたので出来るかもしれません。懐かしいですね・・・」
ふと昔を思い出したツアレは寂しそうな表情を浮かべた。
____馬車でガタガタと揺られ、二人はやっと街に着いた。
「ツアレ、街に着きましたよ。起きてください」
ツアレは昔を思い出していたら、いつの間にか眠ってしまったようだ。
「すみません!!!セバス様!!仕事中なのに眠ってしまい大変申し訳ありません!!!」
がばっと起きたツアレは、それはもう必死で謝罪した。
ペコペコと何度も謝るツアレを見て、微笑むセバスは話す。
「いえいえ、大丈夫ですよ。打ち合わせも済ませた後でしたし、ツアレがとても幸せそうに眠っていたのでそのままにしていました」
「えっと・・・」ツアレはてっきり叱られると思っていたのだが、夜以外にゆっくり眠ることを許してもらうのは初めてで、何故かお礼を述べてしまった。
「あの・・セバス様ありがとうございます。おかげ様で久しぶりに幸せな夢を見ることが出来ました」
ツアレは、あれからずいぶん体調は良くなったのだが、ずっと不眠が続いていて、嫌な夢を見る事が多かった。
(本当にセバス様は寛大な方だ。私の幸せを考えてくださる・・・)
また優しさに嬉し泣きそうになったが、これから仕事だ!とツアレは幸せな気持ちをギュッと噛みしめ、自分の頬を叩いて気合を入れた。
______そして、デミウルゴスが指示した場所に馬車は到着した。
「では、デミウルゴスの元へお手伝いに行きましょうか」
セバスは先に馬車から降りる。
「はい!セバス様。よろしくお願いします」
ツアレは久しぶりの街だったので、もじもじしていた。
そして、そこにはイライラしている悪魔と可愛い幼女が待っていた。
「では人間、早く馬車から出てきてもらえないかね?この小さな人間と早く離れたいのだが」
ツアレの事情なんかまったく興味のないデミウルゴスは急かした。
ツアレのうじうじが、焦りの為におどおどに変わると・・・
「デミウルゴス、そんなに急かしたらツアレが緊張して、女の子と話せなくなってしまいます。もう少し待ってください」
セバスはデミウルゴスを制した。
「はあ、本当にセバスはあのペットに対して甘いですね。あの人間のどこが良いのでしょうか?こんな人間の為より、早くアインズ様の為に動きたいのだが?」
溜息を吐いたデミウルゴスは、いつものようにセバスにつっかかった。
セバスとデミウルゴスが口喧嘩を始めそうになったのを見て、ツアレは謝罪した。
「・・・・申し訳ありません、デミウルゴス様。只今、降ります」
ぐっと息を飲んで、おびえながら馬車から出ようとするツアレ。
そこですかさずセバスは、優しい言葉を掛けた。
「ツアレ、大丈夫ですよ。あなたにどのような危険が迫ろうとも守りますから、安心してください。ゆっくり馬車から降りて大丈夫ですよ」
それを聞いたツアレは顔を赤らめながら、馬車から降りた。
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