ヘブンフラワーガーデンの花1

 牙を抜かれたヒュドラが人界から逃げかえった後、暴れた後始末をしていた賢者に届くものがあった。


 それは匂い。


 甘い、芳しい、美しい、艶かしい、魅了される匂い。


 『断絶の障壁』


 届いた瞬間、彼女は反射的に障壁を張った。


解毒キュアポイズン


 解毒魔法迄併用した。








 彼女はその匂いの正体を知っていた。


 その匂いはどんな傾国の美女よりも妖しく、艶かしく、美しく、愛らしいものからの誘いである。


 しかし、その誘いに乗ってはいけない。


 何故なら、その誘いの先にあるのは絶対の『死』なのだから。






 「…………丁度良いわ。材料にしましょう。」


 敢えて彼女はその誘いに飛び込んでいった。


















 彼女が辿り着いたのは禁忌領域の一つ。『彼岸のヘブンフラワー花畑ガーデン』と呼ばれる場所だった。


 一面の花畑。


 色鮮やかで様々な花が咲き乱れる様は正に『天国ヘブン』と称するに相応しかった。


 しかし、彼女は先程から浮かれる様子が無い。


 障壁を常に展開し、解毒魔法も連続使用していた。






 何故なら、








 何故なら、劇毒龍よりも、ローズヒュドラよりもこの花畑は危険だと彼女は考えていたのだから。






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